サツマイモ「ベニアズマフリー系88」

生物工学研究所普通作育種研究室

研究の背景とねらい

茨城県のサツマイモ生産は、栽培面積、収穫量が鹿児島県についで全国2位、産出額が全国1位と、全国有数の産地となっており、茨城県では重要な畑作物です。
生食用のサツマイモは、主に東北や京浜市場に出荷されていますが、色、形状等のばらつきが大きく、市場評価は必ずしも高くはありませんでした。そのため、品質、収量に優れるウイルスフリー系統の育成が望まれていました。
生物工学研究所では平成10年にベニアズマのウイルスフリー系統「B-27」を育成し、普及に移していますが、いもの肥大が緩やかであるため、早掘りには向かないとされていました。また食味では粉質性が高いため、それらの点を改良した新系統が要望されていました。

系統の特徴

図1:ウイルスフリー系統の上いも重・A品率

(図:ウイルスフリー系統の上いも重・A品率)

「ベニアズマフリー系88」は「B-27」と比較して、在圃期間90日程度の早掘りでは上いも(50グラム以上のいも)数は同等で、上いも重は重く、多収です。また、A品(形の良いもの)率はやや高い系統です(図1)。
在圃期間140日程度の普通掘りでは「ベニアズマフリー系88」は「B-27」と比較して上いも数は同等で、上いも重、M・L重は重く多収です。A品率は高い系統です(図1)。
ベニアズマフリー系88、B-27、K社系統の上いも重・A品率を示しています。いずれの掘り取り区でもフリー系88が最も優れています。
食味は、早掘りでは「B-27」に比較してやや粘質で総合評価では同等です。また、普通掘りではやや紛質で総合評価では同等です。

育成の経緯

写真:茎頂培養後の再生個体(成長点を切りだして試験管内の寒天培地に着床させた後の生育状況

(写真1:茎頂培養後の再生個体(成長点を切りだして試験管内の寒天培地に着床させた後の生育状況)

平成12年に圃場で早期肥大性に優れる22株の優良個体を選抜しました。冬季にそれらの優良個体を種いもとして伏せ込み、茎頂培養を実施しました(写真1)。再生個体は248個体得られ、翌年から圃場で栽培し、収量、品質等に優れた系統の選抜を開始しました。

写真:生産力検定の掘り取り作業

(写真2:生産力検定の掘り取り作業)

生産力検定試験は1株ごとに収穫し、合計10株のいもについて肥大性や収量性、色、形、被害等について調査します。(写真2)

写真:いもの形状

(写真3:いもの形状)

平成14年には収量、品質に優れた38個体を選抜し系統名を付けました。その中の一つが「ベニアズマフリー系88」です(写真3)。
平成15年より茨城県内普及センターの現地実証圃に供試され、地域適応性を検討しました。また、農業研究所における奨励品種決定調査でも、本系統の優良性が確認されました。生産者からは、本系統はひげ根が少なく品質も優れるので作付けしてみたいとの意見がありました。それらのことより平成19年度に普及に移されました。

育成の裏話

種いもがウイルスに感染していると、苗にも伝染し、その苗から収穫されたいもは品質が悪く収量も少なくなってしまいます。そのために、ウイルスに汚染されていない茎頂部分を切りだし、その再生個体を系統栽培して選抜しています。選抜を行う際に、収量や品質が良いことはもちろんですが、おいしいかどうかも重要です。畑から収穫し、収量や品質を調査した後は、ひたすら食べ比べをして、どの系統がおいしいか調べます。この試験が終わる頃には、100メートル先からでも「蒸しいも」の匂いを判別できるようになっています。