緑肉メロン「イバラキング」

イバラキング20年ものがたり(PDF:2.9MB)

生物工学研究所野菜育種研究室

写真:「イバラキング」の果実

(写真1:「イバラキング」の果実)

研究の背景とねらい

茨城県でのメロンの生産は、4月下旬から6月に出荷される半促成栽培が主体で、ビニルハウス内で無加温栽培されます。内張りカーテンやトンネルの多重被覆により保温していますが、無加温であるため、寒さや天候不順の影響を受けやすく、4月下旬から5月収穫の作型では、小玉果や糖度不足による品質低下が課題となっています。

そこで、4月下旬から5月収穫の作型でも果実肥大性に優れ、糖度、品質が安定していることを育種目標に品種開発を進め、茨城県オリジナル品種「イバラキング」を育成しました。

品種の特徴

茨城県の高い育種技術を結集し、10年以上の歳月をかけ、400通り以上の掛け合わせを経て、たった一つ選ばれた茨城のオリジナル品種です。

「オトメ」に続き4月下旬ごろから出荷が始まります。上品な甘さ、なめらかな舌触り、きめ細かくジューシーな果肉が特徴です。

栽培特性

「イバラキング」の大きな特徴は、果実の肥大性です。5月中旬以降の品種として普及している主力品種よりも1割以上果実が大きく、4月下旬から5月上旬の早期出荷で肥大性の良い早生品種と比べても、同等以上に大きくなります。

糖度は主力品種と同等に高く、上品な甘さと滑らかな肉質が特徴です。日持ち性は早生品種より優れていますので、十分に追熟してから食べることをおすすめします。

ネットの形成が、普及品種と比べるとやや遅く、また条件によっては、太く粗いネットが発生しやすいので、ネット発生時期の温度管理や潅水には注意を要します。

育成の経緯

写真:箱詰めされた「イバラキング」

(写真2:箱詰めされた「イバラキング」)

育種方法としては、交配を繰り返し育成した系統の中から、肥大性が良く、F1組合せ能力の高い系統を選抜して母本としました。育成した母本を交配してF1系統を作出し、立体栽培で1次選抜、地這い栽培で特性検定を行ない、優良なF1系統の選抜を進めました。

果実品質とともに栽培特性にも着目して、育成を進めたところ、低温肥大性に優れる「ネット系メロン培養系統」と食味に優れる「アールス型メロン系統」の交配F1が、果実肥大性、食味、ネット形成に優れていたことから、「生研交14号」として選抜しました。園芸研究所での適応性検定で有望と認められ、平成18年から平成19年にかけて、「ひたち交3号」として現地試験を実施しました。現地においても果実肥大性や食味の優れることが認められたことから、平成20年に品種登録申請し、平成22年9月17日に登録(登録番号第19804号)されました。

名称は、全国一のメロン生産量を誇る茨城県の「メロンの王様(キング)として茨城の顔になってほしい」との願いを込めて命名されました。

育成の裏話

写真:「イバラキング」の現地試験の様子

(写真3:「イバラキング」の現地試験の様子)

生工研では、これまでにメロン品種「メイスター」(2002年登録)を育成しました。果実肥大性や食味の大変良い品種でしたが、ネット形成が不安定でネットが粗くなりやすく栽培条件によっては坊主玉が発生することもありました。また高温管理をすると雌花着生が不安定になるなど栽培が難しいことから、普及までには至りませんでした。

「メイスター」の片親がアールス純系の血が濃い系統だったので、食味が優れる反面、ネット形成や雌花着生の不安定さなど、栽培しにくさを受け継いでいたようです。そこで、品質や肥大性とともに栽培しやすさも考慮に入れて、親の育成や交配F1の選抜を行ないました。「親系統の育成」→「親系統を交配しF1を作出」→「交配F1の選抜」を繰り返す中で、アールス系で食味、肉質が優れるとともに、栽培特性が優れる系統と、果実肥大性に優れるネット系メロンを育成し、親として交配したF1が「イバラキング」です。