水稲「ゆめひたち」

生物工学研究所普通作育種研究室

研究の背景とねらい

「ゆめひたち」が育成された平成9年当時の茨城県の中生品種は、良食味米の「コシヒカリ」と「キヌヒカリ」が主力でした。しかし、「コシヒカリ」は倒伏しやすい、「キヌヒカリ」は穂発芽しやすい等の欠点があり、それらの改良が求められていました。そこで、倒伏しにくく栽培しやすい良質・良食味品種の育成をねらいにして育種を進めました。

品種の特徴

写真:出穂10日後の「コシヒカリ」と「ゆめひたち」

(写真1:出穂10日後の「コシヒカリ」と「ゆめひたち」)

「ゆめひたち」は「コシヒカリ」と同じ中生品種です。止葉が良く立ち、短稈で倒伏しにくく、穂発芽しにくいなどの、栽培しやすい特徴があります。稔実が良いため、玄米は、乳白米や心白粒などの発生が少なく、透明感や光沢があります。
炊き立てのご飯はもちろん、冷めても「ツヤ」と「粘り」と「柔らかさ」を保ち、お弁当やおにぎりにしても格別のおいしさです。

写真:出穂40日後の「コシヒカリ」と「ゆめひたち」

(写真2:出穂40日後の「コシヒカリ」と「ゆめひたち」)

育成の経緯

写真:育成圃場の田植え1株1本ずつ手植えしていきます

(写真3:育成圃場の田植え1株1本ずつ手植えしていきます)

「ゆめひたち」は中生の良質・良食味品種の育成を目標として、栽培特性の優れた「チヨニシキ」を母、良食味の「北陸122号(後のキヌヒカリ)」を父として人工交配を行い、その後代から育成された品種です。
昭和62年に交配し、25粒の種子を得ました。2年間無選抜で種子を増殖した後、平成2年から、水田での稲のかたち、収穫後の玄米の品質等を基準に選抜を進めました。
写真:育成圃場の田植え平成5年から収量性や食味の調査も行い、平成7年から「ひたち10号」として、農業研究所でも試験を行い、奨励品種として採用できるかどうかを調査しました。
平成9年に奨励品種に採用されて普及に移され、平成28年の栽培面積は約2500ヘクタールです。

育成の裏話

写真:「ゆめひたち」の玄米

(写真4:「ゆめひたち」の玄米)

「ゆめひたち」が育成された当初は、流通業者や販売業者等の一部から(「ゆめひたち」の白米は「コシヒカリ」や「キヌヒカリ」に比べて黒いんじゃないか)」という評判がたちました。
そこで、研究室では、その原因を調べるため、玄米、白米、ごはんについて調査しました。その結果、「ゆめひたち」は、不完全米の発生が少なく、胚乳の充実が良く、白米の透明度が明らかに高いことがわかりました。このため、乱反射光が少ないことにより白度はやや低くなり、黒く見えたようです。しかし、炊飯米の白さには影響がなく、「ゆめひたち」の米は一粒、一粒が充実している証となりました。