若松産地の課題解決に向けた新技術導入と生産者間連携(2021年6月)

                                            鹿嶋市・神栖市
鹿島松生産組合、波崎千両出荷組合、JAなめがたしおさい波崎千両部会


 

写真1:神栖市では若松、千両、輪ギクと正月向け花材の生産が盛ん

 

鹿嶋市、神栖市は、正月の花材として扱われる若松の国内有数の産地です。
鹿嶋市の若松は葉色が良く、神栖市の若松は葉が長すぎず、形が良いと定評があります。

若松生産者の多くは、同じ正月の花材であるセンリョウ生産を組み合わせた複合経営を行っています。

地域の生産者で構成される主な組織としては、鹿島松生産組合、波崎千両出荷組合、JAなめがたしおさい波崎千両部会があります。




(写真1:神栖市では若松、千両、輪ギクと正月向け花材の生産が盛ん)



 

写真2:若松畑のようす

省力化のため新技術を導入



若松は植付けから栽培管理、収穫、出荷までに多くの人の手を要します。
特に、出荷の最盛期には人手が多くかかります。
しかし近年、作業者の高齢化などの理由で人材の確保が困難になっています。
そこで、生産者は栽培管理や出荷作業の省力化を図るため、新技術の導入に取り組んでいます。

(写真2:若松畑のようす)



 

 

ドローンの活用

若松は、植付けから二年半ほど栽培管理をしてから収穫を迎えますが、品質の良い若松を生産するためには、この間に肥培管理が必要となります。
そのため、松畑に入り、追肥作業を行いますが、松畑は歩きにくく、収穫する年の松は樹高も高いため、作業性が悪く、重労働になっています。

そこで一部の生産者は、作業の省力化、軽労化を目的にドローンによる肥料散布に取り組み始めています。

ドローンの活用により、散布に掛かる時間が大幅に短縮されて、一日に処理できる面積が大きく増加するとともに、作業が楽になる効果が得られています。
異なる組織に属する若松生産者間でドローンの活用について、広く情報交換が行われています。


(写真3:ドローンを操作しているようす)


 

 


写真4:ポストパレットは、柱のついた鉄製のパレット

ポストパレットの活用


通常、若松を出荷する際には、トラックへ一束ごとに人の手で積込みます。
これは多くの人の手を要し、時間のかかる作業です。
この作業を効率的に行うために、三年ほど前から新たにポストパレットという荷台が使われ始めています。
これによって、たくさんの若松をまとめて、人力ではなく、フォークリフトでトラックに積込めるようになります。

トラックが市場に到着し、荷下ろしをする際にも人手が掛からないため、流通関係者からもポストパレットに対する好意的な声が聞かれます。

(写真4:ポストパレットは、柱のついた鉄製のパレット。)




写真5:出荷までのようす

 

また、作業者が直接、若松に触れる機会が減るため、傷みが少なく、より良質な若松を出荷することができるようになっています。

積込みの時間を削減できるとともに、若松の品質の向上にもつながるポストパレットを活用する生産者が増えつつありますが、受入れに対応していない市場があるなど問題が残されています。


(写真5:出荷までのようす 
     ①従来の方法での若松の輸送。トラックに直接若松を積込んでいます。 
     ②従来の方法よりトラックへの積載効率が向上しました。 
     ③トラックも汚れません。 
     ④使用しない時は、柱を外し、積み重ねられるため省スペース。)




 


そこで、三組織の若松生産者が一体となって課題解決をするために、利用拡大に向けた検討会の開催や、共同で市場と交渉するなどの取り組みを実施しています。
今後も、産地では新技術の活用や生産者間の連携により、産地課題の解決に取り組んでいきます。

 

 

(写真6:産地でポストパレット利用促進に向けた課題を話し合いのようす)

 

 

 


鹿行農林 経営・普及部門


2021年05月10日