コギク「常陸サマーレモン」

生物工学研究所果樹・花き育種研究室

写真:常陸サマーレモンの花

(写真:常陸サマーレモン)

品種の特徴

常陸サマーレモンは花色がレモンイエロー系で、日本園芸植物標準色票では明黄~明緑黄の色合いを呈します。季咲きの開花時期は7月中旬で、草姿は生産者や市場・花束加工業者が要望する、まとまりのよい頂点咲きです。

栽培

7月出荷の作型で行います。定植は3月下旬で、晩霜の心配がなくなるまで小トンネルで被覆しておきます。開花時期は7月中旬で東京盆中~後となります。

育成の経緯

平成14年に夏系コギク同士の交配を行い、得られた71の種子を播種して草姿などに優れる系統を選抜しました。選抜については、花き専門技術指導員、園芸研究所花き研究室、農業改良普及センター、全農いばらき・農協担当者等と連携し、実需者や消費者に求められるコギクを追求してきました。

その過程の中で、花色がレモン色から黄色を呈し、頂点咲きの草姿を示す1系統を見いだしました。平成18年には「ひたち2号」の系統名を付与して試験を実施し、平成17年と18年の特性調査により品種登録の要件である区別性、均一性および安定性を確認しました。また、園芸研究所花き研究室が実施した現地適応性試験と市場評価で優良性が認められたことから、平成19年5月に「常陸サマーレモン」の名称で品種登録を出願し、平成22年3月に登録されました(登録番号第19095号)。

交配して得られた種子を播き、初めて咲いた花をバージンフラワーといいます。その中から頂点咲きの整った草姿に目が止まり、のちの「常陸サマーレモン」の育成が開始されました。

育成の裏話

茨城県の花の品種育成は、グラジオラス、シバの実績がありますが、コギクの交配育種を開始したのは平成14年からで、当時はコギクのノウハウはありませんでした。そこで担当者は文献などで生殖様式を調べ、コギクは自分の花粉では種子ができにくい自家不和合性植物であることが分かりました。自家不和合性植物の場合、通常、雄しべを除去する除雄作業は必要としません。しかしながら、コギクの交配は初めてであったこともあり、担当者は熱心にカミソリなどを使って小さな雄しべを取り除いて交配しました。現在は、除雄作業なしに交配をしていますが、そんな地道な作業を通して茨城県第1号のコギク「常陸サマーレモン」が誕生したのです。