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令和2年度 第1回霞ヶ浦の自然観察 「霞ヶ浦の魚を観察してみよう!」

「霞ヶ浦の魚を観察してみよう!」

「霞ヶ浦には魚がいるの?」と思っている人もいるようですが,霞ヶ浦には50種類くらいの魚が生息しています。
 霞ヶ浦の湖岸や堤防沿いの堤脚水路にもたくさんの小魚やエビなどが生息していて,実際に捕まえて観察することで,霞ヶ浦の豊かさを感じることができます。

そこで,令和2年度第1回霞ヶ浦の自然観察「霞ヶ浦の魚を観察してみよう!」と題して,観察の方法や実際にセンター職員が観察を行った状況などを紹介しますので,皆さんの学習に御活用ください。

「たも網」を使った観察の方法

魚を捕る道具には,投網,たも網,四手網などがありますが,どなたでも手に入れやすい「たも網」を使った観察方法を紹介します。

 

【用意するもの】

【観察の方法】

センターの職員が,実際に観察をした様子を紹介します。

  1. 服装の準備
    観察するときの状況に合わせて,安全対策をしましょう。


  2. 場所
    水深が深くない,波の穏やかな安全な場所を選びましょう。
    今回は,かすみがうら市戸崎の湖岸にある「自然再生地区 I区間」と,堤防を挟んで反対側にある「堤脚水路」で魚を捕って観察しました。

    [自然再生地区I区間]
    地図(地理院地図を利用して作成)
    自然再生地区I区間の様子
    [堤脚水路]
    地図(地理院地図を利用して作成)
    堤脚水路の様子

  3. 魚の捕り方
    ・水路の近くや水の中はそっと歩きましょう。バシャバシャすると音などで魚が逃げてしまいます。

    ・堤脚水路では,たも網をそっと水の中に入れて,手前から奥に向かって動かしてすくい上げます。
    ↓ ↓ ↓

    ・湖岸の自然再生地区I地区では草が生えている場所を狙ってください。小魚やエビがいるはずです。何ででしょうか?(答えは後にあります。)

    ・浅い湖岸や水路では,網は動かさず構えて,足で追い込むようにします。
    ↓ ↓ ↓

    ・捕った魚はバケツや水槽に入れます。こんなに捕まえることができました。
    堤脚水路
    自然再生地区I区間
    捕まえた魚

    ★霞ヶ浦で魚を捕るときの注意点★
    ・霞ヶ浦には魚を捕ってはいけない場所(禁止区域と保護区域)があります。また,魚によっては捕ってはいけない時期が決まっています。ルールを守って楽しく安全に観察をしましょう。

    [パンフレット:霞ヶ浦北浦で楽しい釣りを(令和2年10月3日時点)](出典:霞ヶ浦北浦水産振興協議会)

    ※画像クリックで拡大します。

    [パンフレット:霞ヶ浦北浦の釣りMAP(令和2年10月3日時点)](出典:霞ヶ浦北浦水産振興協議会)

    ※画像クリックで拡大します。

    ・湖岸は急に深くなる所があります。また,足元に大きな石があるところもあります。たも網の柄(え)などの棒を使い,深さや足元の状況を確認しながら歩きましょう。

    ・堤防沿いの水路は,深さが90cmくらいありますので,落ちないように注意しましょう。

    ・サンダルやゴム草履で水の中に入ると,ガラスなどでケガをする可能性があります。胴長や長靴,汚れてもよいスニーカーなどの足全体を包むことができる履物で水の中に入りましょう。

    ・子どもはかならず大人の人と一緒に行きましょう。

  4. 魚の観察
    捕まえた魚を観察してみましょう。その前にまずは魚の見方を覚えてみましょう。

    [魚の体の名称]
    魚の体には,うろこやひれなど,各部に名前がついています。

    魚の体の名称 図

    背びれは2つに分かれることもあります。その場合,頭に近い方が第1背びれ,尾に近い方が第2背びれになります。
    背びれと尾びれの間に小さいひれ(あぶらびれ)をもつ魚もいます。

    魚の体の名称(あぶらびれ) 図



    [魚の帯(縞)]
    魚の帯(縞)は2種類あります。
    魚は立てた状態で,帯(縞)の方向を見ますので,見た目と90度違っています。
    (横縞)
    魚の横縞 図
    (縦帯)
    魚の縦帯 図


    [魚の大きさの測り方]
    魚の大きさを測る方法は,ひれを含めた「全長」とひれを含めない「体長」の2種類があります。
    これ以外にも,体高,頭長,眼径などの,各部の大きさを表す名前があります。
    魚の大きさの測り方 図



    [センターの職員による観察結果]
    今回センター職員が捕まえた魚は6種類でした。
    ギンブナ モツゴ
    全長 約4p 全長 約5p
    テナガエビ アメリカザリガニ
    全長 約4p 全長 約4p
    ヌマチチブ スジエビ
    全長 約3~4p 全長 約3p

    ★霞ヶ浦には他にもたくさんの魚がいます。観察の参考にしてください。★
    (写真提供:茨城県水産試験場内水面支場(一部,センター写真))

    • 全長60p位(まれに1mを超える物もいる)。
    • 頭や目が体に対して小さく,口に2対のひげがあるが,1対は短い。
    • 雑食性で,主に底生動物や貝を好む。
    コイ
    • 全長15p位。
    • 腹びれや尻びれが濃黄色を帯びる。
    • 背びれの条の数が16以下。
    • 雑食性。霞ヶ浦では少なくなっている。
    キンブナ
    • 全長25p位。
    • 背びれの条数が16以上。
    • 雑食性。ほとんどがメスである。
    ギンブナ
    • 全長40p位。
    • 他のフナに比べ体高が高く,頭から胴にかけて盛り上がっている様。
    • 植物プランクトンを食べる。
    • 本来は琵琶湖の固有種であるが,食用として霞ヶ浦に導入された。
    ゲンゴロウブナ
    • 全長14p位。
    • 細長く,銀色の小さな鱗をもつ。
    • 背びれの後ろに小さな「あぶらびれ」がある。
    • 動物プランクトン,ユスリカの幼虫を食べる。
    • 寿命は1年。(年魚といいます。)
    ワカサギ
    • 全長8p位。
    • 細長く,体は白色透明で死ぬと白くなる。
    • 背びれの後ろに小さなあぶらびれがある。
    • プランクトン食。寿命は1年。
    シラウオ
    • 全長15p位。
    • 大きくなると胸びれの元が黄色くなる。
    • 左右の腹びれが合わさって吸盤になっている。
    • 雑食性。縄張りをつくる。
    • 飼育の場合は長さ60cm程度の水槽では1匹対でないと無理。産卵後オスが卵を保護する。
    ヌマチチブ

    • 全長5〜10p位。
    • 目が上につき,背びれは2つある。頭に近い背びれが,オスは三角形で,メスは丸みを帯びる。
    • 湖内の稚魚は6月頃湖岸で群れをなし流入河川に遡上する。
    ヨシノボリ
    • 全長5〜10p位。
    • 頭部が平たく,新幹線の先頭の様。
    • 背びれは2つあり,第1背びれの後ろ端に黒い点がある。
    • 胸鰭から尾びれにかけて,黒い横紋がある。尾ひれに複数の黒い帯が同心円状にある。
    • 肉食性で水生昆虫や稚魚,エビなどを食べる。
    ウキゴリ
    • 体長9p位。
    • 2番目のはさみ脚が長い(特に、成長したオスでは自分の体長ぐらいある)。
    テナガエビ

    • 体長4p位。
    • 体に何本かの横線が入っている。
    スジエビ
    • 全長は50p位。
    • 体は細長く,体高が低い。口はとがり気味。口は下に開き,ひげが1対ある。
    • 20p位までの幼魚は体側面に黒い斑紋が並ぶ。
    • 雑食性で水生昆虫や付着藻類を食べる。
    • 対塩性が強く汽水域まで生息する。
    ニゴイ
    • 全長15〜20p位。
    • 体は筒形で細長く,淡褐色で,黒斑が点在する。
    • 口は長く先がとがり,長いひげが1対ある。背びれを広げるとその上縁が直線状。
    • 砂地を好み,底生の水生昆虫や有機物を砂ごと吸い込んで食べる。
    カマツカ
    • 全長15〜20p位。
    • 体は筒形で細長く,褐色で,黒斑が点在する。目は高い位置にある。
    • 口はとがるが,カマツカより短い。背びれを広げるとその上縁が丸い。口は下方に開き,短いひげが1対ある。目から口にかけて黒い帯がある。
    • 底が泥の多い所を好み,雑食性で底にいる水生昆虫や有機物などを食べる。
    ツチフキ
    • 全長30p位。
    • 体は細長い。体に淡い黄緑色の縦帯がある。
    • 産卵期になると,腹に赤い縦帯が目立つ。
    • 雑食性で水生昆虫,コケ,魚卵などを食べる。
    ウグイ
    • 全長15p位。
    • オスの尻びれは長く,特に産卵期特に大きく目立つ。
    • 不明瞭だが,10本位の横縞がある。
    • 産卵期になるとオスの横縞は赤や緑で鮮やかになる。
    • 草食性の強い雑食性で付着藻類や水草,水生昆虫などを食べる。
    オイカワ
    • 全長30〜50p位。
    • 口が大きく,上あごの後端は目の前縁より後ろに有る。
    • 体に黒い太い縦帯が目立つ。
    • 肉食性で水生昆虫,魚類,エビなどを食べる。
    オオクチバス
    • 全長20p位。
    • えらぶたにブルーに目立つ部分がある。体に横縞がある。
    • 雑食性であるが,水生昆虫などの動物を好む。
    ブルーギル
    • 全長50pにも成長する。
    • 体は細長い。口ひげは長く,4対ある。若い魚には不規則な黒斑がある。
    • 背びれと胸びれの前縁に強い棘があるので注意。
    • 雑食性で何でも食べる。
    チャネルキャットフィッシュ
    • 全長7p位。
    • 体高が高く,平べったく,ひし形に見える。
    • 幼魚の背びれの前の方に黒い斑点がある。この黒斑はオスでは成長すると目立たなくなる。
    • 雄の婚姻色はきれいな鮮紅色。ドブガイやイシガイなどの二枚貝に産卵をする。
    • 動物プランクトンや付着藻類を主とする雑食性。
    タイリクバラタナゴ

  5. 捕まえた魚の放流
    観察のために捕まえた魚は,元いた場所に逃がしてあげましょう。

    以上が観察の方法です。皆さんもぜひ魚の観察にチャレンジしてみてください。

魚は何を食べているの?

魚には植物プランクトンや水草などの植物を食べる植物食の魚と,主に動物プランクトンや水生昆虫,他の小魚を食べる動物食の魚,なんでも食べる雑食性の魚に分けられます。 また,卵から孵ってすぐの,小さい魚はプランクトンや小さな水生昆虫を食べています。

霞ヶ浦では植物食性の魚は少なく,多くが雑食性の魚です。

植物食性の魚はゲンゴロウブナ,肉食性の魚はハス,雑食性の魚にはチャネルキャットフィッシュ,湖の中では大きな魚が小さい魚を食べ,小さい魚は水生昆虫や動物プランクトンを食べ,水生昆虫は動物プランクトンを食べ,動物プランクトンは植物プランクトンを食べる流れがあり,これを食物連鎖といいます。

そして,魚も小魚はカイツブリ,カンムリカイツブリ,カワセミ,大きい魚はミサゴ,トビといった鳥に食べられてしまいます。水深が浅い場所ではサギが小魚を食べています。

このように,湖の中で一つの生態系が成り立っています。


なぜ魚を捕る時に草むらを狙うと良いの? 

魚にとって草むらはどんな所か考えてみよう。

湖の中の草むらとして「ヨシ原」があります。ヨシ原で植物が水につかっている部分を見ると藻類が付着しています。この藻類は小魚やエビのエサとなります。ヨシ原は魚にとって食堂です。

また,食物連鎖の中で小魚は大きな魚に狙われますが,小魚は小さいのでヨシ原の中にまで入り込めるので,狙われた時にヨシ原に逃げ込みます。ヨシ原は避難所や隠れ家です。

さらに,狙われることがないので安心して休息できる場所です。ヨシ原は休息所です。

コイ科の魚はヨシ原などの水の中の草むらに産卵します。そうすると卵が大きい魚に食べられにくいからです。ヨシ原は産卵や子育ての場です。

 

このように,ヨシ原,水の中の草むらにはエビや小魚がたくさん集まっています。そこを狙うとたくさん捕まえることができるのです。

 

魚にとってヨシ原等の草むらは必要なもので,ヨシ原が少なくなれば魚も少なくなってしまいます。

ヨシ原を守ることは魚を守ることになりますので,湖岸を使うときにはヨシ原を痛めないように気を付け,みんなで大切にしていきましょう。

 

霞ケ浦環境科学センターの魚類定点調査

霞ケ浦環境科学センターでは,投網を使った「魚類定点調査」を行っていて,湖岸で魚を捕獲してどんな魚がいるのか調査すると,これまでに30種類くらいの魚類が確認できました。

 

[魚類定点調査で確認できた魚類]

タイリクバラタナゴ ツチフキ ボラ
シラウオ ヌマチチブ ウキゴリ
ワカサギ モツゴ(クチボソ) ハス
ギンブナ(マブナ) タモロコ オオクチバス(ブラックバス)
ブルーギル アシシロハゼ ゲンゴロウブナ(ヘラブナ)
オイカワ 二ゴイ ヨシノボリ
ハクレン コイ チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)
ジュズカケハゼ カマツカ キンブナ
カムルチー(ライギョ) クルメサヨリ スゴモロコ
テナガエビ スジエビ  
ドジョウ タウナギ アメリカザリガニ

お問い合わせ先

茨城県霞ケ浦環境科学センター 環境活動推進課
〒300-0023 茨城県土浦市沖宿町1853番地
電話 029-828-0961 FAX 029-828-0967