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令和2年年度 第4回霞ヶ浦自然観察会 「春の植物を観察しよう!」

令和2年度第4回霞ヶ浦の自然観察「春の植物を観察しよう!」と題して、植物の観察方法、霞ケ浦湖岸や霞ケ浦環境科学センターの庭で観察できる植物などを紹介しますので、皆さんの学習に御活用ください。

 

植物の観察方法

春になり、暖かくなるといろいろな花が咲き始めます。どんな花が咲いているか、野外に出て観察を始めましょう。

 

自然観察の姿勢は

「私たちも自然の一員です。自然を壊さないようにそっと覗いてみましょう。」

 

植物観察には五感を使いましょう

皆さんは植物を観察するときに、目だけで観察しますか? 植物観察をするには、見るだけでなく、触る、嗅ぐ、味わうの五感を使うと、より良い観察ができます。五感を使うことにより、その植物の特徴や、似ている植物との見分け方がよくわかります。

 

1 目で見る

これは誰でもが行っていることです。形、色、大きさなどを知ることができます。

 

2 手で触る

植物を触ることにより、茎の断面がどんな形をしているのか、ザラザラしている、細かい毛がある、細かい刺がある、などがわかります。ただし、鋭い刺がある植物や、イネ科植物の葉では手を切ることもあるので、注意しましょう。

 

3 鼻で嗅ぐ

植物の葉などをつぶしたりして、鼻で嗅ぐことにより、その植物が持っている、独特の匂いが感じられます。

 

4 口で味わう

 有毒な植物もありますので、この方法はベテランの指導者がいる時に、その指示で行わなければいけません。葉や茎をかじったり、実を食べたりすることで、苦い、酸っぱい、甘いなどその植物の特徴を知ることができます。

 

植物観察をするときの注意事項

1 道路で観察するときは自動車や自転車などに注意しましょう。この時は耳の感覚を使ってください。

2 植物には有毒植物や棘のある植物、かぶれることがある植物があるので、注意しましょう。

3 家の敷地、農地(水田や畑)には勝手に入らないようにしましょう。

4 道路に飛び出ている枝や果実も採らないようにしましょう。

5 大勢で観察する時は、ゆずりあって交代して見ましょう。また、後から見る人の為、花や実をむやみに採らないようにしましょう。

6 花や実を採取して観察する時は、必要以上に採らないようにしましょう。大勢で観察する時は、採ったものを、みんなで回して観察しましょう。

 

霞ヶ浦の植物

霞ケ浦湖岸や霞ケ浦環境科学センターの庭で、春(3月から4月)に観察できる植物を紹介します。なお、高さは自然高で、目安です。

 

湖岸で見られる植物

高さは50p〜65p位です。湖岸には大きな群落であることが多いです。スゲ(カヤツリグサ科)の仲間であるので、茎を触ると、断面が三角なのがわかります。葉の断面はW型をしていますが、注意しないと、葉のギザギザで指を切ります。花は雄花と雌花が分かれてついています。昔、この葉を刈り、干して、菅笠や蓑傘を造りました。

 

湖岸の湿地で見られます。高さは40p〜50p位です。名前にウルシとあるように、切ると白い汁が出て、かぶれます。花は幾何学的な分岐をして、個々の花も複雑な形をしています。めしべの根元(子房)にはイボイボの突起があります。

 

セリは春の七草の一つであり、鍋などに使われる野菜でもあります。葉をもむと独特の匂いがします。5月になると茎が延び、小さな花のかたまりが咲きます。高さは10p〜30p位です。この頃になると、葉も硬くなり、えぐみも出てくるので、食べるには適しません。

 

【霞ヶ浦とセリ】

昔の北浦町(行方市)で、冬に霞ヶ浦の湖岸を歩くと、この時期に田には何もないはずが、緑色の田が見られます。セリ田です。実は茨城県のセリの生産量は日本で2位になります。昔は1位で、全国生産量の半分を占めていましたが、生産者の高齢化で生産量は減少し、今は20年前に比べ1/10位になっています。夏場には出荷できませんが、10月から5月までの長い期間出荷しています。需要が多いのはやはり鍋の季節、冬です。

 

湖岸堤防や霞ケ浦環境科学センターで見られる植物

シダ植物です。正式な名前はスギナで、ツクシはスギナの胞子茎と言い、胞子を飛ばすための茎です。掘り上げると、必ず近くのスギナとつながっています。

 食べられますが、苦みがあります。延びたツクシを指ではじくと、緑色をした胞子が舞います。胞子が出たツクシは美味しくないです。

 

高さ10p〜15p位で、葉の淵に白い長い毛があり、白っぽく見えます。たくさんの花が集まって、1p位の球状になっています。花が大名行列の毛槍に似ているので、この名前がつきました。

高さは20p位で、2o位の花をたくさんつけます。花が見られる期間は非常に短いです。帰化植物で、外国では葉をサラダとして食べられ、栽培もされています。堤防で見られます。

高さは5p位で、花は小さく7o位の大きさです。地面をはっている植物なので、コケと名前についていますが、コケでなく、顕花植物です。また、花の形が、鳥のサギが飛んでいるように見えるので、サギとついています。

 

高さは5p〜10p位で、花の大きさは1p位です。春、他の花に先駆けて咲きます。夕方になると花を閉じて、1日しか開花しません。三角形の面白い形をした実を付けます。

高さは20p位で、根元からたくさんの茎が分岐しています。花の長さは1.5p〜2p位で、葉は丸い面白い形をしています。この葉が、仏さまが座っている蓮華座に似ているので、ホトケノザと呼んでいます。茎を触ると断面が四角であることがわかります。

 

高さは20p位です。花は長さが1p位で、輪の様についていて、踊り子が輪になっている様に見えるので、この名前がつきました。

一見、ホトケノザと見間違える植物です。葉が三角形で、毛が多く、上部の葉は紫色しています。帰化植物です。茎の断面は四角です。

 

【ホトケノザとヒメオドリコソウ】

写真には両方が写っています。区別つきますか?

高さは20p〜30p位で、一つの花は3o位の大きさです。別名、ぺんぺん草と言います。実の形が三味線のばちの形をしているのでこの名前があります。花は下から順に開き、順次、実になっていきます。

 春の七草のひとつで、芽吹いた若い葉を食べます。

 

高さは20p位で、ナズナに似ています。花の形や大きさはナズナと同じ位ですが、タネツケバナの実は棒状です。葉は丸っぽく、ナズナより柔らかい感じがします。

 

地面を這うように伸びて、高さは10p位で、5o位の非常に小さな花です。葉をもむとキュウリの匂いがするので、この名前になりましたが、匂いますか。

 

高さは10p位で、地面をはっています。花の大きさは8o位です。ハート形の葉が3枚あり、夕方になると閉じてしまいます。葉にはシュウ酸を含むため、噛むと酸っぱいです。円柱形の実をつけ、熟している実を触ると、種が飛び散ります。蝶のヤマトシジミの食草です。

 

 

高さは10p〜20pで、茎は中空です。茎も柔らかい植物なので、食べられます。昔は飼い鳥の餌として使われました。体全体が緑色をしているのを、ミドリハコベとして区別することもあります。

 

【ここで問題です】

ハコベの花をよく見て下さい。花弁の数は何枚ですか?

→答えは最後に

ハコベに似ていますが、花をよく見ると違いがわかります。帰化植物で、高さは10p〜15p位です。

 

つる植物で、花や茎はエンドウに似ていますが、大きさはずっと小さいです。花は1p位の大きさです。さやえんどうを小さくした実ができます。葉の先に小葉が変化したツルがあり、ツルの先が近くにあるものに絡みつきます。他の物に絡みついて、上へ伸びて行くので、茎は細く自立しません。熟した実は触ると、さやが裂けて丸まり、種を飛ばします。若い芽は食べられますが、少し大きくなると筋っぽくなります。大きくなると、先端の部分に、緑色のアブラムシが、かたまってついています。

 

カラスノエンドウをさらに小さくしたつる植物で、花は5o以下です。大きさがカラスに対して小さいので、名前にスズメとついています。花は柄に4つ並んで咲きます。実のさやには2つの種が入っています。

 カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間的な存在として、カスマグサがあります。ラスとズメの間()で名付けられました。花はカラスノエンドウとスズメノエンドウの中間の大きさで、柄に1〜3つ並んで咲きます。堤防で探してみると、3種とも見ることができます。

 

高さ50p位です。茎を噛むと酸っぱい味がするので、スイバ(酸っぱい葉)と言います。似た植物にギシギシがありますが、葉の元がスイバはとがっていて、ギシギシは丸くなっています。ギシギシは酸っぱくありません。

 

高さは20p位で、花の直径は3p位です。葉は地面から生えて、へら状です。実はタンポポの実を小さくした、可愛いのができます。茎が地面をはっているところから、「地面を縛っている」で、ジシバリの名があります。

 

別名ノゲシ。高さは50p位で、もっと高くなるものもあります。ケシとは関係ありませんが、茎を折ると中空で、ケシのように白い汁が出ます。葉はギザギザして、棘がありますが、柔らかいので痛くはありません。

 

霞ケ浦環境科学センターで見られるその他の植物

食用のイチゴ(オランダイチゴ)に似た、3p〜4pの花を咲かせます。野生のイチゴで、赤い実ができて、食べられます。名前にクサと付いていますが、木です。全体に白い毛があり、茎には短い棘がありますが、柔らかい棘です。林の淵など、日が当たる所で咲きます。

 

 高さは15p位で、茎は地面から斜めに出て、先端に1p位の花を咲かせます。日当たりのよい所、明るい林の中などに生えます。葉はイチゴに似て3枚で、「ツチグリ」は根茎がクリ(栗)のようなので、土栗と名前がつきました。

 

霞ケ浦環境科学センターの日があまり当たらない、湿った所に生える植物

高さは25p〜50p位で、長さ1p位の花を鈴なりに付けます。柔らかく、おいしそうな葉をしていますが、毒があります。ウスバシロチョウの食草です。

 

サトイモ科なので、花は地面から直接出て、太さ5p位、長さ20p位のラッパ状の形をしています。花から出ている紐みたいなものは、付属体と言います。付属体を釣り竿に見立てて、浦島さんが釣りをしているように見えるので、ウラシマソウと言います。大きい花ですが、実は、これは花の集まりで、花弁に見えるのは苞と呼ばれるもので、本当の花はこの筒状の中に、小さな花が雄花と雌花に分かれて、たくさんあります。写真の花は咲き終わったものです。緑色のツブツブが雌花から実になったもので、その上に雄花のかたまりがありました。本当の花弁はありません。受粉はハエや小さな甲虫が、入り込んで行われます。また、ひも状になっている付属体が、何のためにあるのかはまだ不明です。
 マムシグサ、コンニャク、ミズバショウも同じ仲間で、花の構造はみんな同じです。

 よくテレビなどで話題になる、ショクダイオオコンニャク(スマトラオオコンニャク)も同じ仲間で、独特の強い匂いで、虫を集めます。また、開花期間は、ウラシマソウなどは1週間から10日くらいですが、ショクダイオオコンニャクは2日と短いです。

 

 

 

植物は春が来たことを、どうやって知るのでしょうか

植物は温度を感じることができます

生物はみんなそうですが、温度(気温)が高くなると、細胞の働きが活発になり、低くなると不活発になります。人も寒くなると、動きが鈍くなりませんか。冬に入って寒くなると、植物も休眠状態になります。そして春になり、暖かくなると、また活動を始めます。

 

有効積算温度

植物の細胞の動きが活発になる温度を5℃として、1日の平均気温から5℃を引いた温度を有効温度とします。それを日数で積算したものを有効積算温度と言います。植物は暖かくなっても、この有効積算温度が決まった数字に達しないと、芽を伸ばすなどの動きをしないのです。このようにして、間違わずに、本当の春が来たことを感じるのです。

 

植物の春化(バーナリゼーション)

春の植物にイチゴがあります。しかし、イチゴは冬に入ってすぐの12月頃から出回り、春が盛りになる頃には出荷が終わってしまいます。もちろん温室で栽培しているのですが、温度を上げてやれば、冬でも実ができるのでしょうか。イチゴは秋の次に寒い冬があり、そして春になること、寒い冬を経験しなければ、春が来ないことを知っているのです。この寒い時期を経験して、暖かくなって春が来たことを知ることを「春化」といいます。

 

では、冬の初めに食べる、栽培しているイチゴに、どの様にして春を知らせているのでしょうか。それはイチゴを夏の間、涼しい山の上に移植し、秋になり麓に下ろして温室に入れると、イチゴは冬が終わり、春が来たと勘違いして、花を咲かせ、実を結ぶのです。栃木県の農家では、日光の戦場ヶ原や鶏頂山に移植しています。このことを「山あげ」と言いっています。

 

植物は冬をどうやって過ごすか

ロゼット

冬、地面にぴったりと葉をつけて、広がっている植物を見たことがあるでしょう。この状態をロゼットと言い、植物が寒い冬を過ごす方法の一つです。冬の冷たい風を避けるためには、背を低くした方が、有利です。また、地面は気温より温度(地温)が高く、葉を広げて地面にくっつくことで、地面から熱を受けることもできます。広がった状態になっているのは、暖かい太陽の光を少しでも多く受け止めることができるようにしているのです。皆さんも外で寒い時、同じようなことをしているのではないでしょうか。

なのはな

春に川へ行くと、堤防が一面黄色い花で覆われているのを見たことがあるでしょう。それを見て、その花は、菜花として売っているアブラナだと、思っているでしょう。しかし、堤防の花はアブラナでなく、ほとんどがカラシナ(セイヨウカラシナ)で、茎をかむとピリリと辛みがあります。

アブラナは菜花として食用にしたり、菜種油を絞って灯明として、昔から利用してきました。また、カラシナも漬け物などで食用にしています。現在、栽培しているアブラナはセイヨウアブラナ、堤防にあるのはセイヨウカラシナで、いずれも明治時代に日本に来た帰化植物です。全国あちこちに「かき菜」と呼ばれている食用菜があります。これが古くからあるアブラナの仲間の一つになります。また、タカナ、ザーサイはカラシナの仲間になります。

 

セイヨウアブラナとセイヨウカラシナ

花はほとんど同じようですが、セイヨウアブラナは葉が茎を、巻き込むように抱いています。セイヨウカラシナの葉は抱いていませんし、葉に切れ込み(鋸歯)があります。

 

花の構造

なのはなの仲間(アブラナ科)は花の造りが簡単なので、観察してみましょう。

花は、がく(萼)、花びら、おしべ、めしべの4つが一組で、一つの花になり、これが基本となります。なのはなは黄色の花びら4枚の元に緑色のがくが4枚、花びらの中におしべが6本(うち2本は短い)、めしべが1本です。

 

合弁花と離弁花

双子葉植物の花には合弁花と離弁花があります。合弁花は花びらがくっついた植物、離弁花は花びらが一つ一つバラバラになる植物です。ですから花が散る時、合弁花植物は固まった花びらが落ち、離弁花植物はバラバラに散ります。ツツジ、アサガオ、ナス、キクは合弁花植物。サクラ、アブラナ、ナデシコ、ケシは離弁花植物になります。

 

タンポポの花の構造

さて、タンポポもキクの仲間ですので、合弁花植物です。と言っても、花びらは一つ一つバラバラになると思っていませんか。実は、一つに見える花は、花の集合体なのです。では、本当の一つの花はどれかと言うと、花びらを引っ張って抜けたのが一つの花になります。白い毛ががく、おしべとめしべは、めしべの周りにおしべがくっついて、1本になっています。花びらの先端をよく見てみましょう。ギザギザになっていますが、どの花びらも山が5つです。つまり5枚の花びらがくっついているのです。従って、タンポポは合弁花植物になります。

ところで、タンポポのがくを見て何か気づきませんか。種子についている白い綿毛、がくはその綿毛になるのです。

タンポポと同じ仲間のオオジシバリでは、花弁がくっ付いているのがよくわかります。

では、一つの花に見えた根元にある緑色のものは、がくではなく、なんでしょう。これはほう(苞)と呼ばれるもので、花の集合体を覆って守っているものです。

ハコベの問題の答え

ハコベの花びらは10枚あるように見えますが、拡大してよく見ると、2枚ずつ花びらの根元がくっついています。従って花びらは5枚です。同じ仲間のオランダミミナグサは5枚とわかりますが、よく見ると、花びらの先端が割れています。

春、暖かくなると、野ではいろいろな色の花が咲きます。暖かい日に外へ出て散歩しながら、どのような花が咲いているか、観察してみるのも楽しいですよ。新しい発見があるかもしれません。

お問い合わせ先

茨城県霞ケ浦環境科学センター 環境活動推進課
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