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更新日:2017年7月26日

CEO社長情報vol.18(2015年3月20日発行)

CEO社長情報vol.18(2015年3月20日発行)に掲載された記事からの転載です。

ベトナムを中心にアジア展開を推進する茨城県の戦略の全貌

ベトナムの国家主席が昨年3月に茨城県を訪問

 日本市場が縮小傾向にあるなか、経済界は海外市場、とりわけ、成長著しいアジア市場に目を向けている。行政も国から市町村に至るまで、企業の海外進出を支援。政財官が、海外へのビジネス展開でタッグを組む動きが活発化している。都道府県のなかでも、注目されているのが茨城県の動きだ。アジアの新興国のうち、ベトナムとの関係構築に特に力を入れている。 

 茨城県がなぜ、ベトナムとの関係を深めているのか。その経緯について、茨城県の橋本昌知事は、次のように振り返る。 

「私が日本ベトナム友好協会茨城県連合会の会合に出席していたことから、フン駐日ベトナム大使とは、以前から親交がありました。ベトナムは農業が盛んで、さまざまな種類の農産物が採れます。農業を近代化するため、日本の進んだ農業技術を取り入れたいと考えていました。一方、茨城県は全国第2位の農業県で、農作物の種類も変化に富んでいます。ただ、茨城県では多数の外国人農業実習生を必要としております。そこで、『農業分野を中心に、経済交流を深めましょう』という話に、発展していったのです」 

 茨城県は2014年3月、ベトナムのサン国家主席が視察で来県した際、ベトナム農業農村開発大臣との間で、農業における協力関係強化に関する覚書を交わした。さらに、ベトナム政府の招きで同年10月5~10日、橋本県知事や県議会、県内市町村、県内農業団体・経済団体・福祉医療団体などのメンバーから成る、合計約80名の訪問団がベトナムを訪れた。ハノイ市、ホーチミン市のほか、農業の盛んなナムディン省、ドンタップ省を視察した。同時に開催されたジェトロ茨城貿易情報センターの「ベトナム投資環境視察ミッション」にも、県内企業などから約20名が参加した。 

 一行は、国家主席や農業農村開発大臣から晩餐会に招待されるなど、非常に手厚い待遇を受けたという。現地のマスコミも多数取材に訪れ、「ベトナム側の関心の高さを感じた」と橋本知事は語る。 

「ベトナムを実際に訪問してみて、可能性の大きい国だと思いました。温暖な気候で、国土は豊かです。南部の地域では、米を年3回も収穫できます。また、ベトナム人は勤勉で優秀。将来的には介護実習などの分野での交流も期待できます。さらに、ベトナムは、人口が9000万人以上に達しており、富裕層も増えています。今後は輸出市場としても有望ですね」

 

ベトナム産のうなぎも近い将来には日本の食卓に!?

 ベトナムが日本に期待しているのは、農業の機械化への支援。近年は徐々に土地が集約化される地域も増えていることから、日本で利用しているような農業機械・設備を導入すれば、農業の生産性は高まり、国民の約70%を占める農民の生活が豊かになると予想されているのだ。茨城県農業協同組合中央会と茨城県は、具体的な協力事業として、国際協力機構からの支援も得て、茨城県農業総合センターでベトナムの農業研究者の研修を行なう。技術指導のため、ベトナムに専門家も派遣する方針だ。また、ベトナムは、日本の農業発展のモデルとして農協制度にも関心を寄せており、茨城県農業協同組合中央会との交流も図っていく。  

「ベトナムのエビはもちろん、米、マンゴー、コーヒー、ウナギは、有力な輸出品に育つのではないでしょうか。ウナギは、日本が蒲焼きのノウハウを提供すれば、日本向けに出荷できる可能性もありますね」 

 農業以外の産業分野でも、経済交流を進める。中国の生産コストの上昇などによって、ベトナムは工業製品の産地としても注目されているからだ。例えば、ベトナム訪問団に参加した茨城県の常陽銀行は、ベトナムの外国投資庁と業務協力に関する覚書を締結。また、同じく訪問団に参加した県内企業がハナム省への進出を表明している。 

「日本はODA(政府開発援助)によって、ベトナムで、最近のニャッタン橋やノイバイ国際空港をはじめ大型施設の建設を行なってきました。ところが、そうしたインフラの先にある工業団地を韓国企業がもっぱら利用している例も多いと聞きました。日本はODAを活用して、ベトナムと濃密な経済交流を行なうべきでしょう。ベトナムの輸出額は約13兆円ですが、そのうち、約2兆円を韓国企業1社が占めています。それに、ベトナムには本格的な自動車産業もありません。日本企業の進出は、大いに期待されているのではないでしょうか」

 

すでにベトナムから茨城県へのツアー企画は60以上

 茨城県がベトナムと経済交流をするのは、ベトナムが経済発展すれば、茨城県産品をベトナムに売り込めるといった狙いもあるからだ。日本政府は、30年までに農林水産物・食品の輸出を5兆円に引き上げるという国策を掲げている。茨城県にとっても、とりわけ、茨城産農産物の輸出拡大は重要課題と言えるだろう。すでに、ハノイ市のホテルやホーチミン市のレストランを常陸牛海外販売推奨店として指定、茨城県のブランド和牛を提供している。そのほか、「現地のマスコミの報道によって、ベトナムでは、茨城県の知名度が高まっています。今年に入ってから、ベトナムから茨城県へのツアーが、60本以上企画されています」(橋本知事)という。茨城空港でも、アジアからのチャーター便の誘致活動も強化していく。

 一方、ベトナム以外のアジア諸国との交流も、並行して取り組んでいく考えだ。
茨城県は、96年に中国・上海事務所を開設。茨城県のPR活動や県内企業のサポート、中国人観光客の誘致などを行なってきた。最近の日中関係の冷え込みによって、経済交流は停滞気味だが、「草の根の民間交流は、続けるべきだと考えています」(橋本知事)。そこで、橋本知事が会長を務める茨城県日中友好協会では、日本・中国・韓国の青少年が参加する音楽イベント「ティーンズ・ロック・アジア」を5年前から開催。将来を担う若者の文化交流を支援している。 

「茨城県は、(首都圏という大消費地を控え)経済的条件に恵まれていたので、これまで海外でのビジネスが出遅れていました。しかし、少子高齢化のなか、茨城の経済の維持・発展に向けて、海外進出への布石は着実に打っていきます」 

 橋本知事は力強く抱負を語った。

 

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