わたしたちの県議会 茨城県議会
平成12年第1回定例会


決算特別委員会

審査の結果、原案を可決
 〜平成10年度県一般会計、特別会計〜

 決算特別委員会は、平成11年第4回定例会において付託された「平成10年度茨城県一般会計及び同特別会計歳入歳出決算の認定」について審査するため、本年1月19日から2月16日までの間に7回の委員会を開催しました。
 審査にあたっては、代表監査委員、出納長、関係部長など関係者の出席を求めて、提出された決算書および関係書類に基づき、詳細に決算内容の説明を聴取し、監査委員の決算審査意見を参考としながら、平成10年度の予算執行が、議会の議決の趣旨にのっとり、適正かつ効果的に執行され、県民の信託に十分こたえるものであったか、などの点に留意して行われました。
 審査の過程において、論議された主な事項は、総務部および知事直轄組織関係では、人員削減の実施状況と人件費削減に果たした効果、地方税特別減税に対する国の財政支援、県税滞納者に対する対応について、などでした。
企画部関係では、JR常磐線の東京駅乗り入れ、鹿島臨海鉄道の収支の推移、百里飛行場の民間供用化と交通アクセス、情報化時代に対応できる職員の育成などについて。
生活環境部関係では、救急救命士の養成、上海事務所の利用状況、霞ヶ浦の浄化対策、産廃不法投棄監視体制の充実などについて。
保健福祉部関係では、県立中央病院等の救急患者受け入れ体制、県立医療大学卒業生の県内への就職状況、エイズやO―157等の感染症の検査実施体制、放課後児童クラブ整備補助の充実などについて。
商工労働部関係では、制度融資の利用状況と県内企業の経営状況、規制緩和の進展状況と小売店に対する影響、研究成果の技術移転とベンチャー企業の育成・支援などについて。
農林水産部関係では、休耕地の荒廃対策、「ゆめひたち」の作付け状況の推移、と畜場の再編整備、霞ヶ浦浄化への対応、環境にやさしい農業の推進などについて。
土木部関係では、国の直轄事業県負担金の増加理由、道路・河川の適切な維持管理、効率的な工事執行、県営住宅の滞納整理促進などについて。
教育庁関係では、インターハイの開催準備推進と気運の醸成、県立学校校舎改築工事の期限内完成、外国人児童生徒への対応、特色ある高校づくりの推進などについて。
警察本部関係では、信号機設置要望の取り扱いと設置状況、産廃不法投棄の取り締まりの現状、オウム真理教施設の監視継続などについて。
 また、総括審査においては、県税の滞納整理対策、県債発行額の推移、行財政改革に向けた取り組み、政策評価システムの導入、などについて論議されました。

 審査の結果、予算の執行および決算は、いずれもその内容が適正なものと認められるとして、「平成10年度茨城県一般会計及び同特別会計歳入歳出決算の認定」は、賛成者多数をもって原案を「認定すべきもの」と決定されました。



安全・安心な地域づくり調査特別委員会

調査結果報告書(概 要)


はじめに

 県民一人ひとりが、物心共に豊かな環境の中で、安全かつ安心して日常生活を送ることは、県民の願いであり、また県に課せられた重大な責務といえる。
 しかし、昨今の社会経済情勢の急激な変化の中、県民の生活の周りには、大量のゴミ処理にともなうダイオキシン発生への懸念や、食生活における食品の安全性への不安感、あるいはいつ巻き込まれるかも知れない交通事故など、多くの危険や生活への不安感が溢れている。また、犯罪においては多様化する組織犯罪や、インターネットなどを使った犯罪など新たな犯罪も発生している。
 このように、今日の県民の日常生活は、多くの危険や不安がその傍らに存在している状況にあると考えられ、今こそ、県民一人ひとりが等しく安全で安心な暮らしを享受できる地域づくりを、我々は真剣に考えていかなければならない。
 これらのことを踏まえ、安全・安心な地域づくりのための諸問題についての調査・検討を行うため、平成11年第1回定例会(3月)において本委員会が設置された。
 また、「安全・安心」という大変間口の広いキーワードに対し、本委員会は、「地域において日常生活を営む一般的な県民にとっての安全・安心」という視点から、「安全・安心な生活環境の確保」、「安全・安心な食料の確保」、そして「事故・犯罪のない安全・安心な生活」という、3つのテーマを設定し、調査・審議を進めてきたところである。
 本委員会は、設置以来13回にわたる精力的な調査・審議を積み重ね、ここに報告を行うものである。

T 調査方針及び経過

1 調査方針

 本委員会設置の経緯から審議を始めるに当たって、調査の目的、調査項目、調査期間について、次のように方針を決定した。

(1)調査の目的
 都市化の進展や生活水準が向上し県民を取り巻く社会経済状況が大きく変化する中で、水質汚濁や大気汚染、廃棄物処理に係るダイオキシンの発生等の環境問題、遺伝子組み換え食品の一般的な流通等や農薬の使用に対する食生活への不安感、あるいは犯罪の凶悪化・広域化の進行とともにインターネット等のニューメディアを駆使した新たな犯罪の発生、さらには依然多い交通事故死者数など、県民の安全で安心な日常生活を脅かす 問題が生じてきており、これらへの対応が急務である。
 このため、県民の日常生活を脅かす事象の実態や原因を明らかにし、日常生活の中で県民が等しく安全で安心な暮らしを享受できる地域づくりのための諸問題を調査検討する。
 
(2)調査項目
調査項目は、次のとおりとした。
@ 安全・安心な生活環境の確保
A 安全・安心な食料の確保
B 事故・犯罪のない安全・安心な生活
 
(3)調査期間
本委員会の調査期間は、平成12年3月までの概ね12カ月とし、平成12年第1回定例会の会期中に調査結果の報告を行うこととした。

2 調査経過

 本委員会は、平成11年第1回定例会(3月)において「安全・安心な地域づくりのための諸問題」を調査するために設置され、平成11年4月26日に第1回の委員会を開催して以来、13回にわたる調査審議を進めてきた。
 調査審議に当たっては、生活環境部、保健福祉部、農林水産部、土木部、企業局及び警察本部等の関係執行部から、生活環境、食料、そして事故・犯罪に係る現状や課題、あるいはその取り組み状況などについての詳細な資料の提出及びその説明聴取を行った。
 また、食料については、その供給者と消費者というそれぞれの立場の方々を、事故・犯罪については、新たな犯罪としてクローズアップされているインターネットをめぐるトラブルに日常的に対応している(社)日本通信販売協会の方をお招きし、意見交換を行った。
 さらに、現地視察調査として、県内においては、国立環境研究所でダイオキシンの分析技術の研究状況を、土浦ビオパークで自然浄化機能を活用した水質浄化対策の状況を、そして霞ヶ浦町戸崎地内の国道354号における安全な通学等のための歩道整備の状況を視察した。
 また、県外においては、埼玉県嵐山町にあるダイオキシンの発生を抑制した廃棄物処理施設及び廃棄物のリサイクル施設の状況を、厚生省横浜検疫所では輸入食品の安全対策の状況を、そして警視庁でのハイテク犯罪への対応及び組織等の状況について視察を行うなど、安全・安心な地域づくりのための今後の対応について精力的に調査審議を重ねてきた。
 特に、オウム問題については、鹿島郡旭村や猿島郡三和町等において、活動拠点を求めたオウム真理教団とこれを排斥しようとする地元住民との間で軋轢が生じていることから、当該問題について集中審議を行い、第2回定例会で「オウム真理教団への対策に関する意見書」を全会一致で可決し、内閣総理大臣をはじめ関係省庁大臣等に対し、意見書の提出を行った。

U 安全・安心な生活環境の確保

1 ダイオキシン

(1)ゴミの減量化・リサイクルの推進
 「第二次ごみ減量化行動計画」(平成10年4月策定)に基づき、ゴミ排出量の抑制とリサイクル率の向上を図っていくとともに、環境に優しい消費行動の普及、環境学習・教育の推進、環境保全に関する県民運動を推進することを提言する。

(2)ダイオキシン発生源対策
 「ごみ処理広域化計画」(平成10年4月策定)に基づき、市町村一般廃棄物焼却施設の集約化を図っていくとともに、ゴミ処理の広域化や施設の集約化に当たっては、鹿島共同再資源化センターにおける資源の有効活用を図る取り組みを資源循環型社会の構築のための先駆的事例として位置づけ、これらのことを視野に入れた取り組みを促進していくことを提言する。

2 産業廃棄物の不法投棄

(1)減量化・リサイクル及び処分場の整備の推進
 「リサイクル優良事業所認定制度」が本年度創設されたことから、今後はより多くの事業所が当該制度の認定を受けることができるような支援策を講じること、農業用廃プラスチックのリサイクルを基本とした適正処理を行うことを提言する。
 また、産業廃棄物の最終処分場の残余容量が残り少なくなってきており、かつ民間事業者による整備が進まないことから、早急な公共処分場の整備を提言する。

(2)監視体制の強化
 不法投棄の発生を未然に、あるいは速やかに察知できるようにするため、県民への協力依頼や 監視員の充実等、監視体制を一層充実するとともに、いつでも通報が可能となるよう24時間対応の通報受理システムについても検討することを提言する。

(3)適正処理の指導・啓発の強化等
 不法投棄の未然防止・ 早期解決を推進するため、排出事業者や土地所有者に対する規制強化について国における廃棄物処理法改正の動向を見極めたうえ、本県独自の制度を検討することを提言する。

V 安全・安心な食料の確保

1 食料の供給等

(1)輸入食品対策
 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という)の改正にともないすべての生鮮食料品に原産地表示が義務づけられたため、消費者や食品加工業者、流通関係業者等に対して制度趣旨を周知するとともに、安全性の確保のため次により検査体制の充実を図ることを提言する。
 ア・国の検査結果や過去の違反事例等から食品衛生法違反の蓋然性の高い食品等に対し、計画的・効率的に検査を実施していくこと。特に、流通の拠点となる公設市場における検査体制を充実すること。
 イ・検疫所が管理する輸入食品監視支援システム(FAINS)に集積さた情報を速やかに収集するための方策を検討すること。

(2)有機栽培農産物等
 JAS法の改正により、有機農産物の検査・認証制度が創設されるため、県が登録認定機関となり検査・認証が実施できるようにするとともに、JAS法の対象外である特別栽培農産物についても県独自の認証制度の創設を検討することを提言する。

2 飲料水の供給等

(1)水道用水の供給
 水道用水供給事業は、県民に対し安全な水を安定的に供給することを目的としているが、水道水の供給は県民の負担を伴うものでもあることから、事業の推進に当たっては、経営にも十分留意し計画的・効率的に進めることを提言する。

(2)水質管理対策
 非公営簡易水道の水質基準適合率が低いことから、公営の水道への転換を促進するため、非公営簡易水道の多い市町村を転換促進重点市町村として位置づけるなどの措置を行い、水道施設の整備を計画的に行うよう指導するとともに、転換促進のための支援策を検討することを提言する。

W 事故・犯罪のない安全・安心な生活

1 交通安全

(1)飲酒運転対策
 家庭、飲食店及び事業所の三者による取り組みを促進するため、飲酒運転追放モデル家庭、飲酒運転追放モデル飲食店及び飲酒運転追放モデル事業所の指定を引き続き推進することを提言する。

(2)青少年・高齢者等の事故防止対策
 交通死亡事故の第1当事者は、青少年の占める割合が極めて高く、その一方で高齢者が死亡する事故が後を絶たない状況にあるため、青少年・高齢者等に対し参加・体験・実践型の交通安全教育を推進していくことを提言する。

2 交通安全施設

(1)道路交通のインテリジェント化の推進
 最先端の情報通信技術を活用し、人と道路と車両を一体とするシステムの実現に向け、光ビーコン等のインフラ整備や交通管理システムの高度化を図っていくことを提言する。

(2)道路交通環境の整備
 「第6次交通安全施設等整備事業7箇年計画」(平成8〜14年度)に基づき、信号機等の交通安全施設の整備、歩道の整備、交差点等の交通危険個所の整備などの事業等を引き続き推進することを提言する。

3 組織犯罪

(1)来日外国人犯罪対策
 来日外国人による窃盗、薬物密売などの犯罪が増加する中、最近の犯罪は組織化、巧妙化、広域化が顕著であることから、国際犯罪対策部門の体制をさらに強化するとともに、来日外国人組織犯罪対策プロジェクトを強力に推進することを提言する。

(2)オウム問題
 オウム真理教に対して「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」に基づく観察処分の決定がなされ、立入検査も行われているが、地元住民の不安は依然として解消されていないため、今後ともオウム真理教の動向を注視しながら、関係省庁、関係都道府県及び市町村との連携を図りつつ、住民の安全確保と不安解消を図るための適切な対応をしていくことを提言する。

4 インターネット等利用犯罪

(1)啓発活動の推進
 インターネットを利用した電子商取引や情報提供等に絡むトラブルが急増していることから、県民に対して、情報誌、インターネットなどの各種メディア、研修会等を活用し、利用するに当たっての注意点、安全対策等に関する情報提供・啓発活動を推進することを提言する。

(2)関係団体等との連携強化
 インターネット等を利用する上での安全対策の向上、トラブル・犯罪の未然防止、早期発見・早期解決のためには、プロバイダや関係団体等の自主規制や情報提供等の協力が不可欠であることから、これら団体等との協力・連絡体制の強化を図ることを提言する。

5 毒物劇物

 毒物劇物取扱施設等に対して適正な管理体制の整備を徹底させるため、より一層監視指導を強化する必要がある。特に、病院、学校、研究施設等の届出を要しない業務上取扱施設については、その実態を調査し、盗難防止等適正な保管管理について指導することを提言する。


おわりに

 本委員会は、県民の日常生活を脅かす事象の実態や原因を明らかにするとともに、日常生活の中で県民が等しく安全で安心な暮らしを享受できる地域づくりのための対応策について、鋭意調査審議を進め、ここに提言したところである。
 短期間の中、広範囲にわたる審議課題ではあったが、執行部各位の積極的な協力と委員各位の真剣な取り組みにより、所期の目的は達成できたものと考えている。
 執行部においては、本委員会の提言を真摯に受け止め、県民の日常生活における安全・安心を確保するための早急な対応を望むものである。
 また、今回取り上げた調査項目の中には、環境ホルモンに代表されるような人体への影響等について今後の研究を待たねばならないものや、ダイオキシン対策法など法律の施行後間もなく今後の経過を注視すべきもの、あるいは今後の法整備を待たねばならないものなど、国と県との協力関係の中で、将来、新たな対応を検討すべきものがあることも事実である。
 したがって、現時点における本委員会の目的は達成したものの、県民の日常生活における安全・安心の確保という県に課せられた責務は、これで終わるものではなく、将来においても引き続き調査研究していくテーマであることを我々は十分認識しておく必要がある。以上申し添えて、本委員会の報告とする。


 

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