わたしたちの県議会 茨城県議会
平成9年第2回定例会


 議会は、6月19日の本会議において、次の5つの意見書を可決し、内閣総理大臣など各省庁にその実現方を要望しました。


21世紀の郵政事業の在り方に関する意見書

 政府が取り組んでいる行政改革は、6つの改革の最大の課題として、21世紀の日本社会の目指すべき方向に向けて、行政改革会議等で検討されているところであるが、行政改革は真に国民のためになるものでなければならない。
 現在、郵政事業の在り方について、いろいろと議論がなされているが、郵便局は郵便・貯金・保険の3事業の公的サービスを通じて、地域社会に密着したサービスを提供しており、地域になくてはならないものである。
 ところが、この郵政事業が採算性を重視した民間に移行されると、事業は収益の高い都市部に集中し、これまでの全国を統一したサービスが受けられなくなるおそれがあり、過疎地方の切捨て、廃局につながることが考えられる。
 真に、国民のためになる行政改革を推進することが必要であり、例えば地方自治体と連携を図って、少子化・高齢化社会に対応する地域の拠点として、地域の情報、福祉の向上や、道路・公共施設等、インフラ整備に財政投融資の有効活用が期待されているところである。
 よって、政府におかれては、国民的議論を経た上で、地域の拠点としての郵便局の役割を評価し、これら郵政事業の果たす公共的・社会的役割の重要性に鑑み、より一層の効率化と時代にあったサービスの向上に努力され、現行経営形態を堅持した上で、郵便局ネットワークの有効活用方策について検討されるよう強く要望する。


著作物の再販売価格維持制度存続を求める意見書

 現在、「規制緩和」を理由に、独占禁止法に定める著作物の再販売価格維持制度の廃止に向けた動きが強まっている。
 しかし、国民生活にとって欠かせない情報を、新聞購読者に対して毎日、迅速に、しかも同一紙・全国同一価格で広く提供し、また、文化水準の維持に不可欠な多数の書籍等を全国的に、広範に普及させている再販制度は、国民の「知る権利」を保障し、自由な世論形成を可能とするうえで極めて重要な制度である。
 再販制度が廃止された場合、企業間競争はさらに強まり、経営体力のない中小新聞社や新聞販売店、中小出版社や書店の衰退、寡占化を促進し、憲法の保障する言論・出版などの表現の自由が損なわれるおそれがある。
 また、地域による価格差が生じるなど消費者に安定的な購入機会を失わせることにより、文化水準の地域間格差を生じさせるなど、規制緩和が必ずしも国民生活の質の向上、消費者の利益につながらないこととなる。
 よって、国においては、国民の表現の自由、知る権利に応え、文化を育てるために欠くことのできない制度である著作物の再販売価格維持制度を存続するよう強く要望する。


港湾整備の促進に関する意見書

 今日我が国は、財政構造改革など厳しい取り組みが必要とされる諸情勢の中にある。我が国が、社会経済の諸活動の活力を維持し、将来にわたり豊かな国民生活を実現し、さらなる発展を確かなものとするためには、物流の効率化による経済構造改革を推進し、全国各地域のみならず広く世界と連携しつつ安定的な発展を図っていくことが強く求められている。
 物流の基幹的施設たる港湾は、国際交流の拡大や国内物流の円滑化を推進するための基本的な社会資本であり、防災拠点や快適なウォーターフロントの創出を通して国際交流の推進や国民生活の向上に大きく寄与している。このためにも、港湾整備を重点的かつ強力に推進していくことが我が国の最大課題である。特に国際コンテナ港湾の競争力を強化するためのコンテナターミナルの整備や、海運を利用した複合一貫輸送を推進するための国内物流基地の充実を図ることが重要である。
 かかる情勢下にあって、本県は、中核国際港湾として我が国最新鋭の国際海上コンテナターミナルとなるべく整備中の常陸那珂港をはじめ、アジア諸国とのコンテナ定期航路及び自動車や木材の輸入基地として利用されている日立港、首都圏と北海道とのフェリー輸送の基地になっている大洗港、我が国の代表的工業港湾であり、流通港としての発展も期待されている鹿島港などの重要港湾を擁しており、昨年は過去最高の公共取扱貨物量を達成するなど、県内各港湾は活況を呈しており、施設整備の促進を図ることが喫緊の課題となっている。
 特に、常陸那珂港にあっては、港湾と道路とが連携した整備の促進が図られる「国際交流インフラ推進事業地域」に選定され、広く北関東地域の流通拠点として、又規制緩和の下、我が国の港湾サービス改善の嚆矢となるよう期待が寄せられており、平成10年からの供用開始は本県における緊急の課題となっている。 よって、政府においては、港湾整備の重要性を深く認識され、平成10年度の予算編成に当たり、本県並びに我が国の経済社会発展の基幹的社会資本である港湾整備に対し、予算の重点配分を行い、もって常陸那珂港をはじめ、日立港、大洗港及び鹿島港の整備を強力に促進されるよう強く要望する。


中学校社会科教科書の錯誤の削除に関する意見書

 平成9年4月から、中学校で使用されている社会科(歴史)の全教科書(7社)に、「従軍慰安婦」「強制連行」等の記述が登場した。
 こうした記述は、以下の理由により、事実とは認め難いと考えられる。

  1. 教科書に記述されている「強制連行」については、政府の調査では、国や軍が関与したことを実証する証拠は確認されていない。
  2. 「従軍慰安婦」という言葉は当時存在せず、事実の無い造語にすぎない。

 よって、心身発達段階にある中学生に、確たる証拠も無いまま、「従軍慰安婦」問題を提示することは、青少年健全育成の立場から教育的配慮が欠如しているものと思われる。
 また、これは「心身の健康や安全及び情操の育成について必要な配慮」や「未確定な時事的事象について断定的記述がしているところはないこと」等を規定している教科書検定基準にも明らかに違反している。
 ついては、国において、平成9年度から使用の中学校社会科(歴史)の全教科書に記載されている「従軍慰安婦」等の記述について、削除をされるよう強く要望する。


首都機能移転の着実な推進を求める意見書

 政府は、さる6月3日の閣議において、首都機能移転については、当面する財政再建を理由として、慎重な対応を行うことを決定した。
 首都機能移転は、東京一極集中の是正による多極分散型国土の形成や大規模災害への対応力の強化を図るとともに、21世紀に向けた新しい政治・行政システムを確立するための、極めて重要な国家的課題である。
 そしてまた、首都機能移転と併せ、地方分権や規制緩和など行財政改革を推進することにより、真に自主的で創造的な地域社会が実現されるのである。
 こうした認識のもと、国においては、平成4年12月に議員立法による「国会等の移転に関する法律」を制定し、昨年6月の同法改正を経て、現在、国会等移転審議会において、候補地の選定作業が進められているところである。
 もとより、「国家百年の大計」ともいうべき首都機能移転は、公共事業抑制など財政再建と同列に論じられる問題ではなく、広く国民の支持を得て、積極的に進めるべきものである。
 よって、政府においては、首都機能移転の持つ本来の意義・効果を深く認識し、法の趣旨に則り、引き続き今後とも着実に推進されるよう強く要望する。


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