わたしたちの県議会 茨城県議会
平成10年第3回定例会


 議会は、9月10日および21日の本会議において、次の7つの意見書を可決し、内閣総理大臣など各省庁にその実現方を要望しました。

税制改正に関する意見書

 国が深刻な景気低迷等に対処して取り組もうとしている経済対策なかんずく減税を中心とする税制改正については、それが地方税に与える影響について重大な関心を持っているところである。
 申すまでもなく、地方税は、自主財源の主要部分を占めており、地方自治の確立、地方分権の推進をはかるうえで、きわめて重要な役割を担うものであることから、本県議会では、この3月に「国と地方の税財源配分等に関する意見書」を決議し、その中で「今後、景気対策上、減税を実施する場合は、国税の減税を中心に検討すべきであり、地方税の減税については、地方自治体の意向を十分に踏まえ慎重に対応すべきものと考える」との意見書を提出したところである。
 今回の減税は、現下の諸情勢を踏まえたものとはいえ、減税の主体のあり方については、慎重な配慮が必要と考えるものであり、今後、税制改正の具体化に当たっては、地方の事情について十分配慮し、特に、法人課税、個人所得課税についての論議が行われる場合には、以下の点を十分に踏まえて検討することとされたい。

  1.  法人課税に関する減税 については、国、地方を通じて検討すべき課題であること。
     特に、法人事業税は、本県県税収入の約3割を占めるなど最大の基幹税目であり、その減収は、財政運営に致命的な影響を与えるものであること。
     なお、事業税の外形標準課税は、議論途上のものであり、現時点では、事業税の先行減税の担保とはなり得ないこと。
  2.  個人住民税については、既にその税率構造は簡素なものであり、最高税率も十分低く、最高税率の引下げの影響は、対象となる所得階層が大きく違うことから地方税の減収規模が国税に比較して著しく大きいものであること。
     特に、個人住民税は本県県税収入の約2割、県下市町村税の3割強を占める都道府県・市町村共通の基幹税目であり、その減税のあり方には慎重な対応が必要であること。


北朝鮮によるミサイル発射に関する意見書

 北朝鮮から発射された弾道ミサイルが我が国土を飛び越え、三陸沖に着弾したことは、我が国の安全保障上、極めて由々しき事態であり、強い怒りを持って厳重に抗議する。
 我が国が人道的見地から、食糧支援の再開やエネルギー開発機構への資金協力等、日朝国交正常化に向けた友好関係を一層発展させようとしていた矢先のことである。
 この北朝鮮の行為は、日朝国交正常化を願う我が国に対する重大な背信行為であるのみならず、北東アジアの平和と安定に重大な脅威を与え、国際社会に緊張をもたらす暴挙である。
 大量破壊兵器の拡散を断固防ぎ、世界の平和と安全・安定を希求する観点から、次のことについて強く要望する。

  1.  あらゆる外交手段を通じ、毅然として厳重に抗議するとともに、説明と謝罪を求めること。
  2.  食糧支援やエネルギー開発機構への資金協力等、国交正常化に向けた交渉を当面凍結すること。
  3.  情報収集・発信など、危機管理・緊急事態対応体制を確立すること。
  4.  我が国の平和と安全を守るため、防空体制を整備すること。


大雨による災害の復旧対策に関する意見書

 去る8月27日から31日にかけての大雨は、東日本を中心に河川の氾濫、山地の崩壊などを招き、多くの人命が奪われるなど甚大な被害をもたらした。本県内でも、那珂川の溢流による浸水などにより、公共土木施設や農作物などが大きな被害を被ったところであり、現在、県及び関係市町村などが、総力を挙げて被災者の救済及び被災地の復旧に取り組んでいるところである。
 ついては、一日も早い被災者の救済及び被災地の復旧を図るとともに、このような被害が繰り返し発生しないよう次の事項について要望する。

  1.  普通交付税の繰り上げ交付及び特別交付税の増額に配慮すること。
  2.  1級河川那珂川の早急な河川改修を実施すること。
     特に、昭和61年の台風第10号による洪水に続き、今回も大きな被害を受けた水戸市及びひたちなか市における緊急改修区間整備の早期完了を期するとともに、他の被災地域についても新たに緊急改修区間として採択し、早期に事業着手すること。
  3.  県域各地の河川、道路などの公共土木施設被害の早期復旧を図ること。
     なお、県道水戸枝川線の那珂川に架かる寿橋が流失したので、永久橋の建設に際しては特段の配慮をすること。
  4.  農作物などの被害調査の結果を踏まえ、天災融資法の適用について配慮すること。
  5.  被害を受けた農業者に対する既貸付制度資金の償還期間の延長について配慮すること。
  6.  農業共済金の早期支払いについて配慮すること。
  7.  加工用米の特例規格の制定について配慮すること。
  8.  被害を受けた農地、農業用施設の早期復旧に対して配慮すること。
  9.  山地崩壊における災害関連緊急治山事業の採択について配慮すること。
  10.  那珂川河口から鹿島灘沿岸及び大洗港・鹿島港に漂着した廃棄物の回収処分の災害復旧事業などによる支援について配慮すること。
  11.  市町村が行う災害廃棄物処理事業に対し、十分な予算を確保するとともに、海岸に漂着した廃棄物についても補助対象とするよう配慮すること。
  12.  伝染病の発生・まん延を防止するための被災者の検病調査、健康診断及び被災地の消毒などにかかわる財政措置について配慮すること。


過疎地域活性化のための新立法措置に関する意見書

 過疎地域の活性化については、昭和45年の過疎地域対策緊急措置法、昭和55年の過疎地域振興特別措置法及び平成2年の過疎地域活性化特別措置法に基づく過疎対策事業により、全体的には人口減少は鈍化し、また各種の公共施設についても着実にその整備が図られ、地域づくりの成果が上がっているところである。
 しかしながら、本県の過疎地域の多くの自治体では、依然として、人口の減少が続いているほか、高齢化の進行や地域活力の減退、公共施設等の整備水準の立ち遅れ、産業・雇用面の条件の劣弱さ及び財政基盤の脆弱さなど、いまもなお解決すべき多くの課題が山積しており、過疎地域活性化特別措置法の平成12年3月の失効後においても、なお一層国を挙げての強力な施策の推進が必要である。
 よって、国においては、このような実状を十分に認識され、過疎地域が今後活力ある豊かで住みよい地域として発展できるよう、平成12年度を初年度とする新たな立法措置に基づく総合的な対策を講ぜられるよう強く要望する。

景気回復と雇用の安定確保対策の推進を求める意見書

 我が国経済は、平成9年度に戦後最大のマイナス成長を記録したが、その後も回復の兆しはなく、戦後3番目に長い景気後退が続いており、危機的な状況となっている。
 本県においても、民間企業の業績は悪化しており、企業の倒産が、依然として高水準で発生している。
 このことが、民間企業における雇用の維持を困難にし、失業率の増加、求人倍率の低下を招き、雇用情勢を極めて深刻な状況にさせているところである。
 このまま景気が低迷し、雇用の悪化が続くことになれば、国民生活の不安は増大し、我が国及び本県にとって憂慮すべき事態となる。
 よって、政府は、我が国が将来にわたって発展し、次の時代の世界の繁栄をリードできるよう、経済構造の抜本的改革を進めつつ、景気の回復と雇用の安定確保を図る諸対策を推進されるよう強く求めるものである。

遺伝子組換え食品に関する意見書

 組み換えDNA技術で微生物などの遺伝子を農作物に組み込み、除草剤や害虫に抵抗力を持たせたトウモロコシ、ジャガイモ、大豆、なたねなどのいわゆる 「遺伝子組換技術応用食品」の輸入が現実のものとなっている。
 これら遺伝子組換え食品は、食用油脂、醤油、各種インスタント食品などの原料にもなっており、今後一層、日常生活の中で食される機会が増大するとともに、学校給食などでの利用が拡大していくものと予想される。
 厚生省は、コウモロコシ、ジャガイモ、大豆、なたねなどの遺伝子組換え食品について「安全性に問題はない」として輸入を認めたが、我が国では初めての食品であることから、その安全性に関して不安を持つ人も多い。
 よって、国においては、国民の不安を解消するため、遺伝子組換え食品の安全性確認に万全を期するとともに、消費者の選択の権利を確保するため、遺伝子組換え食品あるいはこれを使用した食品に関する情報公開を促進し、その表示について義務的措置を講ぜられるよう要望する。

義務教育費国庫負担制度の堅持に関する意見書

 義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等とその水準の維持向上を図る制度として定着しており、現行教育制度の重要な根幹をなしている。
 しかしながら、政府は、昭和60年度以降、行財政改革の一環から、教材費、旅費、恩給費及び共済費にかかわる追加費用などを国庫負担の対象外として一般財源化を図ったとしているが、現実には、地方に大きな負担転嫁を行ったものである。
 さらに、近年は、現行制度の見直しが行われ、学校事務職員及び学校栄養職員に対する給与費などが国庫負担の対象から除外されることが懸念されるところである。
 このことは、地方財政負担の一層の増大をもたらすのみならず、義務教育の円滑な推進に大きな影響を及ぼすのは明らかである。
 よって、政府においては、地方に新たな負担転嫁を行うことなく、義務教育費国庫負担制度を堅持するよう強く要望する。


 

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