わたしたちの県議会 茨城県議会
平成11年第3回定例会



 議会は、9月24日の本会議において、次の5つの意見書を可決し、内閣総理大臣など各省庁にその実現方を要望しました。

聴覚障害者の社会参加を制限する欠格条項の早期改正を求める意見書
 1981年の国際障害者年は、「完全参加と平等」をテーマに掲げ、国際的にも国内的にも、障害者に対する差別をなくし、社会的理解を広げる大きな契機となり、聴覚障害者の社会参加と平等の保障は、我が国でも着実に前進してきたところである。
 しかしながら、医師法、薬剤師法など、医事・薬事関係法を中心に「耳が聞こえない者、口がきけない者」を絶対的な欠格事由と規定し、障害者個々の能力や事情を考慮することなく、一律に資格や免許を与えないとする条項がまだ残されている。
 聴覚障害者の社会参加を促進する観点から考えれば、個々の障害程度、業務執行能力を検討し、手話通訳等必要な支援を行うなどにより、資格や免許の付与を実施する方策が講じられるべきである。
 また、著作権法や公職選挙法においても、間接的に聴覚障害者の社会参加を制限することとなる規定が存在している。
 よって、政府におかれては、ノーマライゼーションの理念に基づき、聴覚障害者の社会参加を制限する条項のある法律について早期に改正を図るよう強く要望する。

豚コレラ撲滅事業に関する意見書
 豚コレラ防疫はワクチン接種による予防体制をとってきたが、これまでの成果を踏まえ、農林水産省では平成12年秋を目途に、ワクチンを使用しない防疫体制の確立を図り、豚コレラの清浄化を達成していくこととしている。
 本県は養豚の粗生産額が全国第3位に位置するなど農業における基幹部門として発展してきており、農家数が多く、飼養密度も他県に比べ高い状況である。
 豚コレラの撲滅は養豚農家の願いでもあるが、過去に豚コレラの甚大な被害を被った経緯があり、ワクチン接種こそが豚コレラを予防する最良の方策であると主張もされている。
 農家はワクチン接種中止後の万が一の発生に大きな不安を持っているので、全国的なワクチン接種中止時期については、豚コレラ撲滅対策の推進状況を勘案し、生産者が安心して養豚経営が継続できる環境が整うまで、弾力的な対応をすること。
 また、豚の飼養密度が高い地域において万が一の発生の場合、甚大な被害が予測されることから、養豚経営への影響を緩和する対策の充実を図ること。
 さらに、全国的なワクチン接種中止後における緊急ワクチン接種の使用に当たっては、豚の飼養密度の高い地域の実情も十分考慮して実施することなど、政府におかれては、万全の措置を講じられるよう要望する。

「WTO(世界貿易機関)次期農業交渉」に関する意見書
 WTO次期農業交渉は、2000年1月から開始され、農業の貿易に関する助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減する観点から行われることとなっており、農産物の輸出国が輸入国に対し関税水準や国内助成の大幅な削減等を要求することが想定されている。
 我が国は、主要先進国の中でも最大の農産物輸入国であり、また、本県にあっては、全国第3位の農業粗生産額を誇る屈指の農業県であることなど、今後も農業・農村の維持発展は県政の重要な課題となっている。
 よって、政府におかれては、先に成立した「食料・農業・農村基本法」を尊重され、次の事項について確固たる交渉姿勢を貫くよう要望する。

1 WTO次期農業交渉に当たっては、その交渉内容について、国民の支持と理解が得られるよう国民重視のものとし、公平な農産物貿易ルールを確立すること。
2 特に我が国における農業の持つ、多面的かつ公益的機能の発揮を高く評価し、一定の保護と助成策を新しい貿易ルールの中に具体的に反映させること。
3 国内農業生産の増大を食料供給の基本に位置付けることが食料安全保障の確立には不可欠であることを十分に考慮すること。
4 遺伝子組み換え食品の取り扱いについては、様々な視点から検討する場が設けられるよう主張すること。

道路整備の促進に関する意見書
 道路は、豊かな生活の実現と県土の均衡ある発展を図るうえで、最も基本的な施設であり、その整備推進については、県民の強い期待が寄せられているところである。
 本県では、21世紀に向け県内外の地域間の交流・連携を促進し、活力ある地域づくりや暮らしづくりを支援するとともに、良好な生活環境を創造するため、北関東自動車道、首都圏中央連絡自動車道等の高規格幹線道路から、国道、県道、市町村道に至る道路網の整備を長期的な視点に立って着実に進めていくことが是非とも必要である。
 その実現のためには、平成10年度を初年度とする総額78兆円の「新道路整備5ヶ年年計画」の完全達成が不可欠である。
 よって、政府においては、「新道路整備五箇年計画」に基づき、円滑に道路整備を推進していくとともに、現行の道路特定財源制度を堅持し、一般財源の大幅な投入による道路整備財源確保を図るよう強く要望する。

義務教育費国庫負担制度の堅持に関する意見書
 義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等とその水準の維持向上を図る制度として定着しており、現行教育制度の重要な根幹をなしている。
 しかしながら、政府は、昭和60年度以降、行財政改革の一環から制度の見直しを進め、これまでに教材費、旅費、恩給費及び共済費に係る追加費用等を国庫負担の対象外として、一般財源化を行ってきたところである。
 さらに、今後は厳しい財政状況の中、学校事務職員及び学校栄養職員に対する給与費等が国庫負担の対象から除外されることが懸念されるところである。
 こうした国から地方への負担転嫁は地方財政を一層圧迫するのみならず、義務教育の円滑な推進に大きな影響を及ぼすおそれがある。
 よって、政府においては、地方に新たな負担転嫁を行うことなく、義務教育費国庫負担制度を堅持するよう強く要望する。