わたしたちの県議会 茨城県議会

平成23年第4回定例会で可決された意見書・決議

《意見書》


子ども・子育て支援策の充実・強化を求める意見書

 本格的な人口減少社会の到来により,将来の経済・社会全般に大きな影響を及ぼすことが懸念されている中,今後,我が国が安定的で持続可能な社会を実現していくためには,次代を担う子どもたちの健やかな成長のために,地域や社会全体で子育てを支援する体制を充実することが必要である。
 とりわけ,親への経済的支援,地域や社会における子育てのための環境整備,子育て家庭への支援など,子育て支援策の更なる充実・強化が求められている。
 よって,国においては,子どもたちが健やかに育つことができる環境づくりを進めるため,下記の施策を積極的に講じるよう強く要望する。

  1. 次世代育成支援対策推進法に基づき,地方公共団体が策定した行動計画の着実な推進に必要な財源の拡充を図ること。
  2. 病児,病後児保育や中小企業等が行う事業所内託児施設など,きめ細やかな保育サービスを提供するための財政支援の充実を図ること。
  3. 年齢や保護者の就労の有無にかかわらず,すべての子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを進めるため,「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」と「放課後子ども教室推進事業」の充実を図るとともに,両事業の連携を進めること。
  4. 放課後児童クラブの実施にあたっては,学校以外の保育所,幼稚園の余裕教室や児童館その他の公共施設など,地域の社会資源を活用した実施も促進すること。
  5. 特別支援学校等に通学する障がいのある学齢期の子どもを対象とした放課後対策の充実を図ること。
  6. 所得税の扶養控除や子どもに対する手当の拡充,奨学金制度の拡充等,子育てのための経済的負担の軽減を図ること。また,乳幼児医療費の公的負担制度を創設すること。
  7. 児童虐待防止対策,児童相談所等の体制の充実に必要な財源の拡充を図るとともに,要保護児童が家庭的環境において個別的なケアを受けられるよう,体制整備を推進すること。
  8. 要保護児童が入所する児童養護施設等において,要保護児童に適切な支援が行えるよう,施設の最低基準や措置費の見直しを図ること。
  9. 地域における子育て支援施策を更に充実するため,地域子育て支援拠点の整備や子育て相談等の運営に対する財政的支援の拡充を図ること。
  10. 妊婦健康診査の公費助成の拡充及び不妊治療への医療保険適用や助成拡充を図ること。
  11. 一人親家庭のために,自立のための経済的支援をはじめ,就労支援の充実,養育費の確保など,法的整備を含む総合的な支援体制の充実を図ること。

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登記の事務・権限等の地方への移譲に反対する意見書

 昨年6月に閣議決定された「地域主権戦略大綱」において,国の出先機関は原則廃止するとの姿勢の下,地方自治体への事務・権限等の移譲による抜本的な改革を進めることが定められた。
 こうした中,政府の地域主権戦略会議において,出先機関改革の一環として,事務・権限仕分けが十分な議論もないまま進められ,法務局の登記事務についても地方に移管すべき対象として検討されている。
 しかしながら,登記の事務・権限は,国民の権利義務に直結するものであり,全国統一の高い中立性・公正性が求められる。このため,地方がそれぞれの判断で行うのではなく,国の機関である法務局が全国的に統一された基準により直接実施することが適当である。
 また,登記の事務には,民法・会社法・民事訴訟法等の高度な法律的専門知識・能力に基づく判断が求められる。このため,地方に移譲された場合,地域によって運用・能力に格差が発生することも懸念される。
 よって国会及び政府は,法務局が担う登記の事務・権限等を地方への移譲対象としないよう強く要望する。


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私学助成制度の堅持及び充実強化に関する意見書

 私立高等学校等(高等学校,中等教育学校,中学校,小学校及び幼稚園)は,建学の精神に立脚し,新しい時代に対応した特色ある教育を展開し,公教育の発展に大きな役割を果たしている。
 しかしながら,私立高等学校等の経営は,従来に例を見ない厳しい状況に直面しており,少子化による生徒等数の大幅な減少等は,私立高等学校等の存続をも大きく揺るがしている。
 また,「高等学校等就学支援金制度」の創設により,私立高等学校に学ぶ生徒の授業料負担の軽減が図られたものの,公私間の格差はむしろ拡大し,さらには都道府県間では新たな格差も生じており,子どもたちの学校選択の自由,教育の多様性や機会均等を保障する意味からもこの改善は喫緊の課題である。
 公教育の将来を考えるとき,公私相俟っての教育体制が維持されてこそ,健全な発展が可能となり,個性化,多様化という時代の要請にも応えうるものである。
 そのためには,私立学校振興助成法第1条に規定する通り,教育条件の維持向上と保護者の経済的負担の軽減を図るとともに,私立高等学校等の経営の健全性を高めていくことが強く求められている。
 よって,国においては,私立高等学校等教育の重要性を認識され,教育基本法第8条及び教育振興基本計画の趣旨に則り,現行の私学助成に係る国庫補助制度を堅持され一層の充実を図られるよう強く要望する。


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「受診時定額負担制度」導入に反対する意見書

 平成23年6月30日,政府・与党社会保障改革検討本部は,社会保障・税一体改革成案を正式決定した。その中で提示された社会保障改革の具体案として「受診時定額負担」の導入が提案されている。この「受診時定額負担」の導入はわが国が世界に誇る国民皆保険制度の崩壊につながり容認できない。
 「受診時定額負担」は医療機関を受診するたびに現在の定率負担とは別に,外来で受診した患者全てに100円程度の定額負担を求めるものであり,受診頻度が多い人ほど負担増になる施策である。患者の受診抑制が起こると同時に,受診機会を損なうことで結果的に重症化することが考えられる。そもそもこの「受診時定額負担」は「高額療養費見直しの原資1,300億円」と抱き合わせで明記されているが,本来は保険料,公費によって賄うべき医療費が,病気で受診した患者からのみ負担を強いるのは相互扶助の精神に反するもので「社会保障制度」からみても大いに問題がある。
 また,平成14年の健康保険法等の一部改正(平成15年4月施行)で,患者窓口負担を2割から3割に引き上げたが,その附則第2条第1項には,「医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については,将来にわたり百分の七十を維持するものとする」と明記されている。今回提案された「受診時定額負担」の導入は,憲法第25条第2項,生存権保障における国の責務に背馳しているといわざるを得ない。
 よって,国におかれては,「受診時定額負担」を導入しないよう強く要望する。


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サイバー攻撃・情報保全対策に関する意見書

 衆議院や参議院,政府機関を狙ったサイバー攻撃が明らかになり,サイバー攻撃に対する国民の不安はこれまでになく高まっている。
 わが国の重要な情報がサイバー攻撃で海外に流出することは,国益に大きな影響があり,政府が一体となってサイバー攻撃対策・情報保全体制を構築することが求められている。
 特に現在,不定期開催となっている情報セキュリティ政策会議を定期開催することや,情報保全の危機管理,内外情報分析,諸外国の政策動向等を定期的に国会に報告することで,わが国の情報保全対策に対する決意を内外に示すこととなる。
 よって,政府及び国会におかれては下記の事項について積極的に実現を図り,サイバー攻撃に対する国民の安心・安全を守るよう強く求める。

  1. 国家としての安全保障の観点から,情報保全の基本戦略を早急に構築すること。
  2. 防衛省はわが国の防衛調達に関する情報管理,保秘体制を強化すること。
  3. 政府は重要な社会基盤に対するサイバー攻撃の可能性を評価・検証し,地方自治体に対するサイバー攻撃対策についても,早急に戦略を構築すること。
  4. 民間の優れた人材の技術を活用し,官民一体となった情報保全体制を構築すること。

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TPP交渉参加表明に抗議する意見書

 野田佳彦総理は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けて各国と協議に入る」と述べ,事実上の交渉参加を表明した。その後,TPP交渉参加にあたって国会審議における閣僚間の答弁の食い違いや,日米両国政府の発表に矛盾が生じる等,TPPを巡る混乱に拍車がかかっている。
 混乱の原因は野田佳彦総理そのものにあると言わざるを得ない。特に交渉において国民皆保険制度については「断固わが国の制度を守る為交渉する」と述べる一方,コメの関税については「守るべきは守る」と真意が曖昧な発言をするなど,交渉において真の国益を守る気概が感じられない姿勢が際立っている。
 TPP交渉参加にあたっては,交渉で協議されている事項が何なのか,わが国の利点・不利となる点・国益上の危機が何か,いかなる対策を検討しているのかが,国民に示されないばかりか,政府内の各省の試算がバラバラであることや,政府が正確な情報を出さないため,国民的論議が全く熟してない段階である。特にTPPは「聖域なき関税ゼロ」が前提であるとされているにもかかわらず,これにわが国がどのように対応するのかが不明確ななかで参加の意向表明に踏み切ったことは,拙速のそしりは免れない。
 また,与野党を問わずAPECでの拙速な参加表明には慎重な意見が続出する中,こうした声をないがしろにし,政府が事実上の交渉参加に踏み切ったことは極めて遺憾であり,本議会は政府のこうした行為に,断固抗議するものである。
 今後,政府はTPPに対する国民的論議が熟すよう,交渉で得られた必要な情報は速やかに明らかにし,TPPの利点・不利となる点・国益上の危機を分かりやすく国民に説明するよう強く求める。


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原子力発電所の警備に関する意見書

 今般の福島第一原子力発電所の事故は,国際社会に大きな衝撃を与えた。原発の安全対策は自然災害のみならず,テロ対策も重要であることは言うまでもない。
 特に現在,収束に向けた努力が続けられている福島第一原発に対して,テロ組織等が攻撃を企てると,不安定な状態となっている原子炉から大量の放射性物質が放出される可能性もあり,厳重な警備態勢が必要とされている。
 しかしながら,わが国の法体系,警備体制は十分とは言えず,原発を含めた重要施設の警備についても,国家として確固たる意思を示さなければ,テロリストの標的となり,国民の生命・財産を危機にさらす可能性があるものと考える。
 よって,国会及び政府にあっては下記事項について早急に検討し,実現できるものは早急に実現するよう強く求める。

  1. 「成田国際空港警備隊」を参考に,警察に新たに「原発等警備隊」を創設するなど,警備体制の充実を図ること。
  2. 自衛隊の任務に原発施設等の警護を加える自衛隊法の改正を行うこと。
  3. 海上からの攻撃に対処するため,海上保安庁と海上自衛隊の連携を強化すること。
  4. 警察・自衛隊と周辺自治体を加えた防護訓練を実施すること。

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第32回オリンピック競技大会及び
第16回パラリンピック競技大会東京誘致に関する決議

 オリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会は,全世界の国と地域から選手団が参加する最大規模のものであり,これまでも参加する者,観る者に大きな感動を与えてきた。中でも日本人選手の活躍は,世界に我が国の存在感を示し,また,国民に大いなる希望を与えてきた。
 本年3月11日に東日本を襲った大震災と巨大な津波,そして福島第一原子力発電所の事故は,我が国に甚大なる被害をもたらしたが,現在,復興と収束に向けて大きく歩み出している。困難を乗り越える強い意志の力がある限り,必ず道は開けてくる。オリンピック,パラリンピックがもたらす人間の持つ可能性への限りない挑戦は,復興に向けて歩む人々にとって,大きな力となるはずである。さらには,復興を成し遂げた姿を全世界の人々に示し,人々をもてなすことは,世界中から寄せられた支援に対する感謝の気持ちを表す最も効果的なものとなろう。
 1964年の東京オリンピックが,終戦の焼け野原から復興したエネルギーを世界に示したように,2020年オリンピックを東京で開催することは,我が国が東日本大震災から僅か9年で再び力強く復興した姿と日本が安全であることを世界に示すことができ,我が国自身にとっても復興を成し遂げるための象徴的な目標となる。
 また,物質文明の豊かさを享受している先進諸都市が抱える環境問題や経済停滞などの諸問題を解決し,暮らしやすい,国際競争力のある都市の実現につながる。
 国において「スポーツ基本法」が成立する中,こうした機を捉えて国際大会を東京に招致することは,時宜にかなったものと言える。
 よって,茨城県議会は,2020年に開催される第32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会の東京招致をここに強く求めるものである。


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