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摂食障害について

  摂食障害には食事をほとんどとらなくなってしまう拒食症、極端に大量に食べてしまう過食症があります。拒食症では、食事量が減る、低カロリーのものしか食べないことから体重が極端に減る、やせて生理がこなくなるといった症状があります。過食症は、いったん食べ始めるとやめられない、むちゃ食いしては吐く、食べすぎたことを後悔し、憂うつになるなどの症状がみられます。拒食症から、過食症になることもあります。

 「やせたい」という強い思いがあるため、本人はなかなか治療したがりません。しかし、低栄養から様々な体の不調につながり、死に至ることもある病気ですから、治療の重要性を伝えることが必要です。摂食障害は、様々なストレスが要因となっていることも多く、周囲の人の理解やサポートがとても大切です。

 

 病的な拒食・過食がありますか?

 食行動の異常は、食事をとりたがらない「拒食」、逆に極端に大量の食物をとる「過食」に大別できます。

 少しくらいの拒食や過食は、多くの人が経験するものです。失恋をして食欲がなくなったり、ストレス解消につい食べ過ぎる、という経験をした人は少なくないと思われます。

 ところが、こうした食行動の異常が過度になって、極端に体重が減少しても拒食がやめられない、過食の後に食べたものを全部吐いたり下剤や利尿剤を使って体重増加を避けようとする、という行為がみられるようになると、これは治療を要する摂食障害の疑いが濃くなります。

 

 拒食・過食の背景にある心の傷

 こうした極端な摂食行動の異常が現れるのは、背景に「太りたくない、やせたい」という体重への極端なこだわりや、「自分は太っている・醜い→自分には価値がない」という思いこみなどの心理的背景があります。また、とくに若い女性の場合は、「やせていることが美しい」という社会的価値観も影響します。

 また、子どもの頃に両親の仲が悪かった、親や周囲の人間から体重や体型のことをみっともないと言われた、という経験も摂食障害のひきがねになります。

 

 10代には拒食症、20代には過食症が多い

 拒食症は10代で発症する人が多く、過食症は20代に多い傾向があります。両タイプとも90%が女性です。ただし、最近は男性の摂食障害も増えているという指摘もあります。拒食と過食は正反対の症状に見えますが、拒食から過食へ、過食から拒食へと変わることもよくあります。

 

 生命の危険もある深刻な病気です

 摂食障害は、ダイエットの失敗というような単純なものではなく、ほうっておくとこころも体も病み疲れて、死に至ることもあります。とくに拒食症の場合、標準体重の60%以下にやせが進むと、低栄養による腎不全や低血糖、電解質異常による不整脈、結核などの感染症など、重い合併症を起こしやすくなります。 また、両タイプとも、アルコールや薬物への依存や抑うつ、怒りっぽい、人格障害などの精神疾患を合併しやすく、万引きや性的に奔放になる、自傷行為や自殺を図るなど衝動的な行動が多くなります。

 

 摂食障害の治療法

 摂食障害の場合、患者さん本人は治療によって体重が増えることを極端に恐れるので、なかなか治療に納得してくれません。

 学校や家族・友達が専門医とともに力を合わせて、本人がきちんと治療を続けられるように支えていくことが大切です。

 また、10代の患者さんの場合はとくに両親を初めとする家族との関係が病気に影響していることも多いので、家族に対しても患者さんとの接し方や家庭環境に関するカウンセリングが必要になります。治療にあたっては摂食障害の専門医やカウンセラーを配属している病院を選びましょう。体重減少が極端な場合や家庭環境が治療に適していないような場合は入院治療も行なわれます。

 治療は、体重に対するこだわりや間違った自己評価などを正常にするための心理療法を中心に、心身の回復をめざして薬による治療や栄養指導などが必要に応じて行なわれます。

 

              (厚生労働省のホームページ(みんなのメンタルヘルス摂食障害)より引用)