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生物多様性から受ける恵み

生態系サービスとは

生態系とは、植物が太陽の光を利用し、光合成によって作り出す炭水化物を基盤として機能するシステムです。

これら植物(生産者)を栄養源とする動物(第一次消費者)がおり、さらにその動物を栄養源とする動物(第二次および高次消費者)がいます。これらの動物は食う・食われるの関係によって食物連鎖を形成します。生態系は多様な生物からなるため、それらは複雑につながり合った食物網を作ります。

光合成などによって大気から取り込まれ、生物の体を作る炭素や窒素などの元素は、食物連鎖を通じて植物から動物へ、その動物から別の動物へと移り、そして最後は微生物などの分解者によって分解され、再び大気に戻ります。生態系を動かす源は太陽の光エネルギーであり、私たち人類も、このように循環する物質によって作られている数多くの生物の一つなのです。

生態系は長い時間をかけて出来上がったとても複雑なシステムですが、それ故に安定しており、多くの物質や機能を産み出します。生態系の一員である私たちは、そこから常に多大な恩恵を受け取っています。この恵みのことを“生態系サービス”と呼び、次の4つのタイプに分けられます。

生態系サービスの4つのタイプ

基盤サービス

生態系から受ける恩恵,生態系サービスの1つ目は基盤サービスです

命の循環私たちの呼吸に必要な酸素は,数十億年の間に微細なシアノバクテリアや植物の光合成により生み出されてきたものです。雲の生成や雨による水の循環,それらに伴う気温・湿度の調節も,森林や湿原の水を蓄える働きなどが関係しています。

豊かな土壌は,動物の死骸や植物が分解され,窒素・リンなどの栄養分が森から河川,そして海までつながり,豊かな生態系を育んでいます。

このように生物多様性は地球上のすべての生命の根源であり,存在の基盤となっているのです。

陽光を受けるハクウンボクの葉   大きな枝をひろげたブナ 

供給サービス

2つ目は供給サービスです。

ハチ私たちの生活は,食べ物,木材,繊維,医薬品など,さまざまな生物を利用することで成り立っています。

錠剤農作物は害虫やそれらを食べる鳥,受粉を助ける昆虫,土壌中の微生物などのつながりの中で育ちます。水産物もプランクトンや海藻,貝,魚などがつながりあう海の生態系の恵みです。鎮痛・解熱作用を持つアスピリンは,ヤナギの樹皮の成分として発見されました。農作物の品種改良は,野生種が持つ豊かな遺伝情報の中から,味が良い,病気に強いといった優れた性質を選び出すことによって行なわれてきました。

那珂湊おさかな市場   豊かな農村風景

このように,このサービスは実際の物の形をとるため,特に,海・山の豊かな自然があり,また全国屈指の農業県である本県においては,これらのサービスの恩恵を容易に認識することができます。 

 調整サービス

3つ目は調整サービスです。

例えば森林が,山地では土砂崩れや土壌の流出を防ぎ,海岸では高潮から沿岸を守るとともに,空気の浄化や安全な飲み水を確保するなどして暮らしを支えています。このように生活の安全や安心の基盤となるサービスです。

近年では,温暖化の原因である二酸化炭素を植物が大量に吸収することによって,気候の安定化にも大きく貢献をしていることが明らかになってきました。さらに,土壌の肥沃度の維持向上や花粉媒介などの機能もあります。

水源かん養機能

文化的サービス

4つ目は文化的サービスです。

それぞれの地方に見られる信仰や慣習など固有の文化には,生物多様性や生態系と密接な結びつきがあります。また,それらと結びついた知識や技術,豊かな感性や美意識などが数多く見出せます。

納豆例えば,日本各地には,漬物,味噌,日本酒,しょうゆなど地域の微生物と食材が織りなす地域固有の食文化があります。本県においても,特に納豆などは,全国的にも有名な食文化を形成しています。

 

北茨城市五浦六角堂また,絵画などの芸術にも自然は強い影響を与えます。日本近代美術の父といわれる岡倉天心は,北茨城市五浦(いづら)に日本美術院研究所を設立,彼の弟子たちにアトリエとして提供しました。岸頭には書斎の六角堂を建てて,読書と思索にふけったのです。北茨城の自然は,日本美術の発展にも大きな貢献をしました。

このほか,観光や森林浴,アメニティ,エコツーリズム,レジャーなど,日常の暮らしの中でも生態系は大きな役割を果たしています。

 

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