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更新日:2017年1月20日

 のびのび制作できる場所を探し、やっとたどり着いた。「大子町地域おこし協力隊」ともつねみゆきさんが暮らす「実はアートな町」(前編)

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実はアートな町

みなさんは、「鍛金」という言葉を聞いたことがありますか?

鍛金とは、銅板を加熱し、ハンマーで打ち出しと絞りを繰り返す金属工芸の技法です。

今回は、その鍛金でオブジェやアート作品、アクセサリー等の制作をしている鍛金作家であり、大子町で地域おこし協力隊としても活動されている、ともつねみゆきさんにお話を伺いました。

2015年5月に地域おこし協力隊に着任、2016年6月には「恋人の聖地」に選ばれた日本三名瀑の一つ袋田の滝を記念したモニュメントのデザイン・制作を担い、同年9月に開催された茨城県北芸術祭(https://kenpoku-art.jp/)では、キュレトリアルアシスタントとして活躍されました。

彼女が考える「アートと地域」とは一体どんなものなのでしょうか。

前編では、移住までの経緯と、地域おこし協力隊としてアートワークにはげむ日々から見えてきた大子町に関して探ります。

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ともつねみゆき
茨城県小美玉市出身。茨城県大子町地域おこし協力隊。茨城大学教育学部美術科卒業後、鍛金・金工作家としてオブジェやアート作品、アクセサリー等を制作。これまで、都内や県内と各地で個展を開催。2016年に袋田の滝恋人の聖地モニュメントをデザイン・制作。同年開催された茨城県北芸術祭ではキュレトリアルアシスタントを務める。

町の人たちの姿勢が協力隊になる決意をつくった

2015年5月に茨城県大子町地域おこし協力隊に着任したともつねさん。

大子町には、大子町の特別な一日と題される、『丘の上のマルシェ』というクラフトイベントがあります。ともつねさんは、その第二回から出店作家として訪れていました。

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 年に一回大子町で開催される「丘の上のマルシェ」。(画像提供:山田善和)

都内や茨城県内など様々な場所で出店されていましたが、丘の上のマルシェに出店したときに、この町の人たちは違う!と思ったエピソードがあったそうです。

最初に出店したときが雨だったのかなぁ。その時に結構ずぶ濡れで、準備していたら、お客様に足元悪い中来ていただいて、「ありがとうございます」って出店者の私が言うのが普通なんですけど、大子町に出店したときは、大子町のお客さんが「ありがとーこんな中出店してくれて」って話してくれて、大子町ってなんか違うな~って。こっちがありがとうなのに。

それから丘の上のマルシェの実行委員長の木村勝利さんから、地域おこし協力隊の募集があることを知らされます。

最初の地域おこし協力隊の募集の時にも知らせていただいたんですが、その時は地域おこし協力隊の募集項目が事業起こしで、大子町の特産品を生かして起業したい人を募集しますという内容でした。
私自身制作する素材については金属って決めていたし、金属と大子町の地域の特産品は結びつかないなと思って、まったく応募する気持ちが起こらなかったんです。

その後、第二回の募集をまた木村さんからご紹介いただいて、その時は定住移住という項目があったので、それなら私自身だいたい3,4年に一回くらい引っ越しをしていたし、移住したい人の気持ちもわかるなぁと。

それと、私自身ずっと工房を探し続けていたので、空き家の活用や空き店舗での活用といったことであれば、私自身の活動やこれまでの経験と非常にリンクするなと思ったので、第二回の協力隊に応募させていただきました。

また、ともつねさんが地域おこし協力隊になろうと思えたのは、地元の方たちの後押ししてくれる雰囲気があったからと言います。

地域おこし協力隊に応募した頃、野外でコーヒーを飲む企画をやりたいという若者がいました。その企画を町の人たちが後押しする姿や大子町がこんな風になったらいいと町の未来を話す姿を見て、移住する気持ちが固まったそうです。

その時はまだ自分が地域おこし協力隊になるかわからなかったけれど、大子町の人って、こんな風に動きたいと思っているし、動けるし、いろんなことを考えている人が集まっているんだなぁと思って、人にすごく魅力を感じたのが協力隊になろうって決めたきっかけですね。

その後、無事に地域おこし協力隊に採用となり、着任後早速展示イベントに参加します。

親戚の人が見に来てくれるようなあたたかさ

地域おこし協力隊になってすぐに始まったのが地元のNPO法人まちの研究室が企画するスキマスペースプロジェクト、"5gallerys " 。 

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5gallerysにて展示されたともつねさんの作品。
『作品タイトル:ピンク』1998年から制作しているシリーズ。(画像提供:山田善和)

大子町で作品を展示することで、まずは作家さんに来てもらい、町を知ってもらい、人とも交流してもらうといった単なるアートイベントではなく、移住定住も絡めた企画です。

町の人には、作品を見てもらうことで作家さんがどんな人かわかるし、話していくうちに自然と空き家や空き店舗の情報も出てくるかもしれないということで始まりました。

大子町で展示すると、「地域おこしの人がやっているから見に来た!」とか、あんまり美術関係に熱心ではなくても、「こんなことをやっているのか!」とご近所の方が来てくれたり、そういう部分では協力隊として展示できてよかったなと思いますね。

それから、親戚の人たちが見に来てくれたみたいな、優しい気持ちになってですね。笑 それがいいなあ!って。笑 作品をきっかけに話せたりもできますし。

大子町で活動していく中で、大子町の人ってもともとアートが好きなんだなと思う瞬間がいくつかあると言います。

地域おこし協力隊になっていろんな方と仕事でお会いすると、大子町在住の日展に出展する作家さんや、プロではないかと思わせるような風景写真を撮る方、ご自宅の玄関にご自身で描いたであろう油絵が飾ってある方がいて、驚くことがあるそうです。

文化的にいろんなことを楽しみながら日常の中に取り入れてやっている方が、非常にたくさんいらっしゃるなあということも感じています。そういった日常にお邪魔させていただけるのも協力隊になったからですね。

地域おこし協力隊になったことで、作家活動だけでは出会えなかったことにたくさん巡り会えるというともつねさん。地域をフィールドに活動する地域おこし協力隊だからこそ見えたものもあるのかもしれません。

その後、町からの依頼で袋田の滝のモニュメントのデザイン・制作を担当されるなど、活躍は続きます。

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袋田の滝に展示されている恋人の聖地モニュメント。
大子町の鳥オシドリをイメージしてあります。(画像提供:出村尚英)

ついにご縁が繋がった、工房兼住居との出会い

鍛金は、ハンマーなどで金属をたたいて作品を作る鍛金を主流としているため、制作するには大きな音が出てしまいます。そのため、3~4年に1度は引っ越しをする生活を続けていました。

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(画像提供:ともつねみゆき)

「のびのび制作ができるようなところはないだろうか」。しかし、紹介されるのは近くに人が住んでいる物件ばかり。それでもあきらめずに工房を探し続けていました。

大体3年ごとに引っ越していました。

1年目は、音が出る作業をするんですってご近所さんにご挨拶説明をしてから作業するんです。みんな1年目は優しいんですけど、2年目になるとみんなあれ??みたいな。笑 3年目になると、この子ずっとここに住んでこの音出し続けるんだってなるので。笑 やんわりと怒られるんです。笑 「赤ちゃん生まれたからね。」とか、「うち受験生がいるんだー」とか。笑
「あ~すみません」っていうのを続けるんですけど、締切が迫ってくるとどうしても夜まで仕事をしてしまうので音が出てしまうんです。夜に音を出さないサイクルに変えることが難しいこともあって、3年くらいに1回は引っ越しをしていました。

大子町で今住んでいるところは面接のときに音が出せるところでお願いしますとお話をして、たまたま今のところが空いていたそうです。

今の住まいご近所さんが遠くのびのびと作業ができ、今までで一番いいと繰り返し言います。

なかなかたどり着けなかった、のびのびと制作ができる環境。探し続けることを諦めなかったからこそ、ご縁が連鎖してやっと理想の工房とともつねさんを結び付けてくれたような気がします。

ホンモノを見続けられる町

夏は県内でもトップクラスの最高気温を叩き出し、冬には滝も凍るほどの寒さの大子町。

寒暖差が激しいことで有名ですが、そんな気候もあってか、それぞれの季節には大自然がくるくると表情を変え、楽しませてくれます。

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春の大子町にはこのような景色が広がります。

さらに、人には厳しい気候も、一方では素晴らしい景色、おいしい食べ物や空気を生み出します。

地元のみなさんがたくさんお野菜とかお裾分けしてくれて、お野菜いっぱい食べてからかな。
大子に来てから、元気になったね!とか、若返ったって言われます!笑
私自身大子が合ってたのかもしれないですね。

大子町から1時間ほどで県庁所在地の水戸市がありますが、水戸に行った時でさえ、空気が違う!と感じるそうです。
そんな大自然に囲まれた町に住むことで、驚きが連鎖していきます。

一年目も二年目も飽きなかったんです。景色や毎日通勤する道に。
大子に引っ越してくるまで、四季折々ってこれだと思ってたものがあったんですけど、大子では毎日が違う!と思っています。
芽吹いていく頃の山の色が毎日変わっていって、季節ごとにいろんな景色が見れます。葉っぱが落ちた後とかも違っていて、空気に色がついてくるんです、町中に。ほんとに全然違う。
だから本当だったらもっと早く着くのに、通勤にすごく時間かかっています。笑

そんなともつねさんに「お気に入りランキング3つ教えてください。」と聞くと、

1.作業ができる。2.山がある。3.朝霧。
あとは食べ物とか。人も優しい。

毎朝カーテン開けるのが楽しみなんです。今朝なんか全部霜がぱー!って広がっているのが、わー!って。笑 寒いんですけど。笑

かつて恩師に言われた、「本物を見続けろ」という言葉を日常に落とし込める暮らしがここにはあります。

作家さんそれぞれに、人の持っている深いものを描く人は人を見続けた方がいい人もいるだろうし、人が作っている町や暮らしを見続けた方が深くに行ける人もいるだろうから。
それはその作家さんごとにあると思うんですけど、私自身は、人や人の暮らしを見続けるよりは、自然を見続けていた方が自分の作風にあっているというか。私はきれいなものを見ていないと生きていけないからね。笑

都内でないと作品の材料となるものを集められない作家さんもいれば、自然がそばにあることで何かを想像できる作家さんもいる。

自分らしいモノづくりに適した町というのがあるのかもしれませんね。


 

前編では、地域おこし協力隊の活動から大子町に住み、暮らすことを語ってくれたともつねさん。

後編は、大子町も舞台となり、ともつねさんもキュレトリアルアシスタントとして関わった、茨城県北芸術祭の話へと続きます。

地域にアート作品が飛び出していったことで与えた影響とは何だったのか。
茨城県北芸術祭を機に見えてきた地域とアートの可能性についてご紹介します。

後編も、どうぞお楽しみに!

(Text/Photo:宮田晴香)

 

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