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更新日:2017年2月10日

地域でクリエイティブな仕事をする ーマジカルロッド代表 石川一広さん

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インタビュー

地域でクリエイティブな仕事をする人、地域で起業する人、近頃そんな人を耳にする機会が増えました。

インターネットが普及した昨今、地域でも都会とさほど変わらず仕事が出来るようになったとも聞きます。クリエイティブな仕事=東京じゃないとという状況は変わってきているのでしょうか。

今回お話を伺ったのは常陸太田市にゲームの会社を立ち上げたマジカルロッド代表の石川一広さんです。

石川さんは、常陸太田市生まれの常陸太田市育ち。2011年から地元へUターンし、起業しました。これまで東京で培った経験を生かし、ゲームを制作する会社を立ち上げたのです。

実際、地域でクリエイティブな仕事をするということとは、どのようなメリットがあり、どのようなデメリットがあるのでしょうか。東京で働いていた頃、家族の事、これから目指すものなど、いろいろ伺ってきました。普段は聞けないゲーム制作現場の貴重なお話なども伺ってきました。

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プロフィール: 石川 一広(いしかわ かずひろ)さん
茨城県常陸太田市出身。マジカルロッド株式会社代表取締役。
大学卒業後、東京の3Dを専門に扱う会社でSEシステムエンジニアとして3Dの技術を磨く。
その後元々やりたかったゲームの世界へ。エンジニアとしてコーエーテクモゲームスで数々のゲーム制作に携わる。
コーエーテクモゲームスではPlayStationに代表されるような家庭用コンシューマゲーム機向けのゲームを開発、制作。初ディレクター作品は『国盗り頭脳バトル 信長の野望』。

2011年地元常陸太田市にてゲーム制作会社、マジカルロッド株式会社を立ち上げる。
現在、スマートフォンを中心としたゲームを制作している。

常陸太田市のマスコットキャラクター”じょうづるさん”のゲーム『じょうづるさんの憂鬱』も制作。その他に『フィギュアスケートあにまるず!』、『跳べ!クマシェンコ』、『パンダのたぷたぷ そらのたび』、『鏡の国の名無さん』などのオリジナルゲームを制作。ユーザーからの評価は高い。
http://www.magicalrod.com(外部サイトへリンク)

きっかけは複合的な理由から

 石川さんは大学までは茨城で過ごし、その後東京で3Dを専門に扱う会社でSEシステムエンジニアとして3Dの技術を磨きます。3年半勤めた後、元々やりたかったゲームの世界へ。ゲーム業界に入るなら、コーエーテクモゲームスだな、と思っていたところ3Dの出来るプログラマーを募集していました。運命的でした。そこから十数年、コーエーテクモゲームスでは数々のゲームの開発、制作に携わってきました。

茨城へUターンするきっかけは一つだけではなく複合的な要因がありました。


(石川さん)
もともと、長男というのもあり、いずれは茨城に戻らなければならないんだろうな、という気持ちがありました。健康面でも娘の気管支が弱く、咳が止まらないという状態でした。
こちらに来ても、プログラマーとしてゲーム制作以外にもプログラムの仕事とかあるだろう、と軽い気持ちで考えていました。最後の後押しになったのは震災ですね。
いろいろな要因が重なった結果、起業することになりました。

震災の日はちょうど『100万人の真・三國無双』のソーシャルゲーム版がリリースされ た日でした。
徹夜して会社から戻った3月11日の朝、9時に就寝、そして14時ごろ地震で起こされました。会社に向かうとてんやわんや。会社から家まで戻るのに10時間もかかりました。

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常陸太田市には古い建物が多く、趣のある風景が見られます。ここは、鯨が丘の板谷坂。

茨城にUターンするまで3〜4年の移行期間がありました。家族だけは一足先に茨城へ移っていたそうです。その間石川さんは土日だけ家族と会うという生活でした。2011年に完全に茨城へ移行し、5月に起業しました。

茨城での生活は、体調面、経済面も抜群によく、保育所の待機児童問題もない、住み良い暮らしでした。東京で働いていた当時、石川さんの住まいは横浜でしたが民間の保育所しかなく、経済面でも大きく違っていました。
保育所の敷地面積はせまく、運動会を見るだけでも大変だったと言います。

東京での勤務状態は会社に宿泊することも多く単身赴任状態でした。今は自宅兼本社ということもあり、娘の『ただいま』という声が聞けたりする事にいいな、と感じるそうです。

茨城ではとても恵まれた環境の中、快適な暮らしが出来ているそうです。

まるで一本の映画。チームワークで作り上げていたコーエーテクモゲームス時代

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  コーエーテクモゲームスさんと言えば、ゲームをしない人でも目にしたことがあるくらい有名な『真・三國無双』や『信長の野望』など人気ゲームを制作している会社です。

ゲームを作るには、いろんな部品が必要でプログラムだけではつくれません。
CG、サウンド、シナリオ、企画、それから、説明書を作る人、宣伝、攻略本、いろんな部所の人間が団結して一つのプロダクトを作り上げます。石川さんのプログラマーという役割は絵や音、シナリオなどの素材を組み合わせてゲームそのものを作り上げていくことです。
絵や音と違って、プログラム自体がユーザーから見える事はないのですがゲームの出来栄えを大きく左右しますのでやりがいのある仕事です。

プログラマーも分業されていてAIや3D表現などの専門的な研究開発を行う人やゲームを作り易くするためのツールを作成する人、それらを使ってゲームの具体的な場面を構築する人などがいます。

ここでの石川さんの業績は、前職の技術を活かし、3Dを扱う部品であるグラフィクスライブラリを開発して様々なタイトルで利用出来るようにしたことです。PlayStation2の『決戦』というタイトルに始まり、開発効率の高さから、徐々に全てのタイトルで使用されるようになりました。人気シリーズ『信長の野望』の3D化にも繋がっています。

その後、徐々にタイトルの方にシフトしていきました。ディレクター、いわゆる監督です。


(石川さん)
ゲームを作りたくてゲーム業界に入ってくる人はここを目指します。監督は自分の裁量で舵がとれるからです。

私のチームは少人数でしたので、ディレクターをしつつメインプログラマーも担当していました。
例えて言うと、手術チームみたいなもの。自分が執刀医、みんながそれをサポート してくれる。ものすごく効率があがります。最終的にOKを出すのは社長です。社長独断で判断はむずかしいところがあるのでいくつかチェックをしていくための会議があります。

会議ではいろいろ厳しい意見が出るのですが指摘された問題をストレートに解決するには、予算も納期も残っていません。ただそこで、ディレクターとプログラマーを兼任していますから、仕様面、技術面でバランスのとれた実現可能な『おとしどころ』を柔軟に見つけることが出来るのです。

時代がスマートフォンにシフトした

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スマホで出来るソーシャルゲームのブームがきて、最後のほうはそちらのほうにシフトしていきました。


(石川さん)
それまではゲームを作ってメディアに焼き上げるまでが仕事だったのですがスマホゲームはその後の運営業務が延々と続きます。お正月も休みなしに働いていました。みんなが休むときがゲームをやってくれる一番の稼ぎ時ですので。おかげさまでそちらの技術が身に付いたので独立しやすくなりました。

ゲームを作るには、開発機材に莫大な金額がかかります。初期投資だけでも大変です。しかもハードメーカーごとに機材も違ってくるそうです。スマホゲームなら初期投資や開発費をぐんと抑えられ個人でも作り易いとのこと。作ったゲームはApple storeやandroidのgoogle playで商品をおいてくれるので整った環境の中でゲームが作れるというわけです。そういう訳でスマートフォンのゲームはぐんと増えたそうです。


(石川さん)
スマホゲームは基本スタートが無料、そして操作も簡単で手軽にできるものでないと、まずやってもらえない。作り手にとっては大変です。そうすると、どれも似たようなゲームになってしまうんですよね。差がつくのは宣伝広告にどれだけかけるか、という風になってきます。
独立して思うのは、コーエーテクモゲームスでは、いいものを作ることだけに集中出来ました。こういう作業に人手が足りない、と言うと、社内で調達してくれます。社内では高いスキルを持った人がたくさんいます。品質もあがります。恵まれた環境だったんだなあと思いました。その反面、独立したことによって、自分達で考えて、自分達で作る、そしてユーザーさんに喜んでもらえるという満足感は一際大きいです。

オリジナルゲームは昨年から

石川さんは、独立してからもコーエーさんから仕事を受注していました。仕事を受けつつ、新しいゲームが作れればと考えていました。4年が経ち、受託を減らしてむりやり時間を作っていかないとオリジナルは作れないという危機感がありました。
そこからオリジナルゲームを作り始め、今ではじょうづるさんのゲームをはじめ、その他4作品があります。それがきっかけで2016年に開催されたいばらきコンテンツセレクション2や東京ゲームショウなどのイベントに参加しました。

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常陸太田市のマスコットキャラクター、じょうづるさんのゲーム『じょうづるさんの憂鬱』。ワンタッチで簡単操作。手軽に出来るゲームです。茨城のかわいいゆるキャラがたくさん登場します。

イベントに参加したことによって出会いがあったり、他社の動向がわかったり、刺激を受けたり、収穫はとても大きかったそうです。
県内の人たち同士、つながりが出来て上手くマッチングすることが出来れば、何かものを作るのに東京へ外注することなく県内だけで出来るようになってくるのでは、とそう話していました。

現在マジカルロッドでは二人で運営しています。千葉在住の方と遠隔で何の問題もなく仕事が出来ているそうです。情報もネットで収集できるため困ることはありません。


(石川さん)
これから連携したいのはCGデザイナーさん。ゲームでキャラクターは必須です。
絵を上手く描ける方はいるのですがCGとなると限られてきます。2Dや3Dのグラフィックが出来る方、背景が描ける方、どんな方でもウェルカムです。
今の所、クラウドソーシングを利用したり、知り合いに外注したりしています。

マジカルロッドのこれからの活動


(石川さん)
今年はVR系をやっていきたいです。技術的には昔からあるもので3Dの技術の延長線上にあるものです。
ちょっと前まではVRをやらない、と公言していたんです。(笑)
というのも、VRはとても酔うんです。開発している人自身が参ってしまうんです。でもそうは言ってられません。需要はありますので武器のひとつとしてVR も出来る体制にしていきたいです。

具体的には観光資源を利用して、例えば、竜神峡でやっているバンジーを飛べない人がVRで疑似体験をするとか。それから、実際のライブの中でやっているような臨場感のある、リズムゲームとか。軽めのVRのコンテンツが作れたらなあと考えています。

 今、VRで非常に幅をきかせているのがUnityという統合開発エンジンだといいます。これまでゲームを開発するにあたっては、ゲームの作り手ごとに、ハードウェアの特性をフルに活用するためのゲームエンジン(※3Dグラフィクスライブラリのような部品のセットです)を作成するところから始める必要がありました。
その性能の優劣がとても重要なフェーズで、ゲームの品質に直結しました。なおかつお金もかかりました。製品そのものを開発するのはその後ですから、完全に先行投資だということです。


(石川さん)
Unityようなツールを利用すれば、ゲームエンジンをいちから開発する必要がなくなります。今では標準的なゲーム開発ツールになっています。人も手間も大幅に削減できます。もちろん、実機での性能不足に陥るなど良いことばかりではないのですが、技術的なところをすっとばして良いコンテンツを作ることに集中できるのは大きなアドバンテージです。
実際、Unityで作って欲しいという話もありました。今後は、そういったやり方も取り入れつつ、今まで培ってきたハードウェアへの深い理解が必要な技術も活かせる形で、適切なアウトプットができればといいなと思います。

一番の目標は雇用創出です

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常陸太田市の駅付近の景色。遠くに山が見え、空がとても大きく感じられる茨城の景色。じょうづるさんのゲームの背景にも同じ場所が使われています。

リモートワークでの仕上がりは8割いったら大成功とのこと。100パーセント以上のものを引き出すのに、そもそも人がバラバラではいいものが作れない。これまで同様、顔と顔を合わせて、動作を隣で確認したり、ジャンプの細かいニュアンスを伝えたり、感覚みたいなものは、隣にいないとつかめません。いずれコーエーテクモゲームスで働いていたときのように、顔を合わせながらゲーム作りが出来ればと考えているそうです。


(石川さん)
どうしてもクリエイティブな仕事となると、東京に目がいきがちです。会社も東京に多いですしね。田舎から離れられないという事情の人もいますし、自分と同じ境遇の人など、そういった人たちの受け皿になれたらと考えています。そして地元の学生にプログラミングの技術を教えたりと教育面でも貢献出来たらいいなと思います。

石川さんのように技術や経験があれば地域でも都内と変わらずクリエイティブな仕事が出来るのだなと感じました。その石川さんの技術が地域に豊かさももたらしてくれる気がします。

(協力: カフェ・モザール)(Text/Photo: 山野井咲里)

 

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