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ホーム > しごと・産業 > 農林水産業 > 農林事務所 > 県北地域 > 県北農林事務所振興・環境室畜産振興課 > 野生動物からの農作物被害を防ぐ > 3.イノシシによる被害の出ない環境整備について
ページ番号:45738
更新日:2020年2月2日
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イノシシによる被害を防ぐのは,捕獲駆除や防護柵だけとは限りません。
「イノシシが来られない環境」を整備する事も大切です。
イノシシは夜行性(夜間を生活時間にする)の動物と思われがちですが,実際は昼行性(昼間を生活時間にする)の動物です。
ですが,夜間活動しない訳ではありません。昼間行動するより安全と判断すれば,夜間でも活動します。
とても臆病なので,出来る限り人の目に付かないように慎重に行動しますが,同時に,観察力が高く,一たび安全だと判断すると大胆な行動にも出る動物です。
地域に藪が多いと,その藪を使って移動したり,身を潜めたりして,地域内に侵入し,定着していきます。
その昔,里と山の間には里山と言われる,人が管理・活用する領域がありました。
里の生活に必要なものを得るため,頻繁に中に入って枝打ちや下草刈りを行い,ときどき木を切って木材を得て,また新しく木を植える。
この管理され,人々が日常的に立ち入る空間が,山と里を分ける緩衝地帯になって,野生動物が里に近づきにくい環境を作っていました。
現在,里山を活用する機会は減り,管理されなくなって山に埋もれている場合が少なくありません。林と地域が直接接触しているのです。
林の外縁部は草木がもっとも生い茂る場所で,分厚い藪になります。そして,藪が分厚く生い茂っていると,中まで視線が通りません。
結果,イノシシは姿を晒すことなく,安全に山から地域まで近づくことができます。あとはタイミングを見計らって地域に侵入するだけです。
そこで,林と地域の境界にある藪を山側に向けて1m程刈り払うことで目隠しを取り除きます。林の中は背の高い雑草が少なく,かなり奥まで視線が通るようになります。
視線が通るということは,姿を発見されやすくなるということなので,臆病なイノシシは地域へ接近するのを嫌がるようになります。
耕作放棄地や空き地をそのまま放置しておくと,雑草が繁茂して深い藪になります。そういった環境はイノシシにとって格好の隠れ家になります。
そういった環境が多ければ多いほど,イノシシが地域の中に滞在する時間が延びていきます。
そして,イノシシの滞在時間が増えた分だけ,農作物に被害が与える可能性も高くなります。
そこで,耕作放棄地等の雑草を刈り払うことでイノシシの隠れ家を取り除いていきます。
雑草を20㎝以下になるまで刈れば,イノシシは姿を隠せません。
耕作放棄地全てを刈り払うのが難しい場合は,一つの圃場ごとに1mほど内側へ向けて刈り払うだけでも違いが出てきます。
藪の中から外に出るのにひとつハードルがあると,それだけで慎重なイノシシは躊躇します。
地域の中に安心して隠れられる場所が無ければ,危険を冒して地域に留まらずに,安全な山に戻るようになります。
農作業で出来る作物残渣や,誰も世話をしていない柿などの放置果樹の実などがイノシシに食べられても,「どうせゴミだし,食べられても別に懐も痛まないから」と思っていませんか。
これは,金銭的な被害こそ出ていませんが,イノシシによって地域へ目に見えない被害が出ている状態と言えます。
そういった,作物残渣が畑に放り出されていたり,放置された木の実が熟した順に地面に落ちてくるような環境は,イノシシの住みやすい環境です。
生活時間の大半をエサ探しに費やすイノシシにとって,地面や石をほじくり続けなくても簡単に見つかり,しかも美味しく栄養豊富なエサが安定的に供給されるので,子育てにも便利です。
そして,そういった「人の作ったもの」しか食べずに成長したイノシシは,もう山には帰れません。
母親から「山の中で食べられるものとその探し方」を教わっていないので,帰ってもエサが探せず飢えるだけなので,留まるしかないのです。
※実験でも,子供は母親が食べているのを見たものしか食べないのが確認されています。母親が脱脂粉乳を食べている姿を見たことがない子供に,脱脂粉乳と飼料を一緒に与えると,飼料しか食べませんでした。母親と一緒の時に脱脂粉乳を与えて,母親が脱脂粉乳を食べるのを見て,初めて子供も脱脂粉乳を食べるものだと認識しました。
出来が悪かった農作物や予想外に出来すぎた農作物,収穫後に出る葉や蔦などをごみだからと放置していませんか?
それらは,人間にとってはただのゴミですが,イノシシにとっては山の草や根っこよりもお手軽に,しかも大量に食べられる格好のエサです。
「食べられても実害はないからかまわない」と放置すると,それらを目当てにイノシシがどんどん集まってきます。
そして,地域に集まったイノシシには「食べても怒られない」残渣と,「食べたら怒られる」作物の区別はつきません。
その結果,作物残渣以外の農作物もイノシシに荒らされることになります。
作物残渣は放置せずにきちんと処分しましょう。
地域の中にある,柿や栗といった果物が実る樹を管理せずに放置していませんか?
誰も管理しないで放置された放置果樹は,勝手に熟した果実をバラまいて,イノシシを呼び込みつづけます。
「渋柿だからイノシシだって食べないよ」と言う人もいますが,木の根より渋柿の方がよっぽど甘いのです。
誰も管理する人,できる人がいない場合,可能であれば伐採しましょう。
もし「思い出がある」等の理由で伐採するのが忍びないときには,きちんと管理しましょう。
実が落ちてくる所を電気柵等の防護柵で囲む,実が青いうちに全部落として処分する,低木化して実を活用するなど,様々な管理方法があります。
放置果樹がイノシシを呼び集めないようにしましょう。