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ホーム > しごと・産業 > 農林水産業 > 農林事務所 > 県北地域 > 県北農林事務所振興・環境室畜産振興課 > 野生動物からの農作物被害を防ぐ > 4.農作物被害を防ぐための防護柵について
ページ番号:45821
更新日:2020年2月2日
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県北地域で農作物に被害を出しているイノシシから農作物を守る防護柵について説明します。ハクビシン,アナグマにも効果があります。
電気柵を始め,防護柵にはさまざまな種類があります。
農地の周りをぐるりと囲んで,外から中の様子を覗けなくすることで,野生動物の視線から農作物の姿を隠し,農作物の被害を防ぐ方法です。
農作物が視覚に入らなければ,農地に中に侵入しようとはしません。
イノシシは確かに鼻が良いのですが,1000m先から「あそこに熟したトウモロコシがある」などと嗅ぎつける能力はありません。
あくまで地道に,周りを見渡してエサの有りそうな場所を探しては,その場所の地面の匂いを嗅ぎ,掘り返してエサ探しをしているのです。
そこで,遮蔽板で農地を囲み,農地の外からの中を見えなくして,イノシシのエサ探しの標的から外すことで,被害を減らします。
視覚を遮る防御方法なので,ハクビシン,アナグマ等,地上を歩いている他の動物にも効果が期待できます。
主にトタン板が目隠しとして使われます。
設置する時は,地面との隙間が出ないように取り付ける事が大切です。隙間があると,そこから中のようすが分かる場合があります。
雑草を取り除いてから,地面を平らにならして設置しましょう。また,遮蔽板どうしをつなぐ場合も,隙間が出ないように端と端を重ねるようにしてください。
トタン板の利点としては,設置が割合と簡単な点と,維持管理の手間もさほどではない点にあります。
注意点としては,基本的に目隠しなので,中に侵入する事そのものは防げないことです。
野生動物の「危険かどうか確認する」という本能を逆手に取り,電気柵に触れて感電する事で「電気柵は危険物なので近寄らない」と学習させることで,農地を守る仕組みです。
ペットと野生動物の最大の差は「自分の生息している環境が危険に満ちている」かどうかとも言えます。不用意な行動をとれば誰も助けてくれません。簡単に死に至ります。
そのため,野生動物は常に警戒する事を怠りません。そこを利用して,農地から遠ざけます。防護柵としては最もポピュラーと言えます。
地面と通電線,そして通電線同士の間隔は20cm以下になるように設置してください。それ以上広い隙間だと,イノシシはその隙間に頭をねじ込んで侵入しようとします。
実験でも30cmの隙間があると頭をねじ込むのが確認されています。(幅が20cmを切ると,隙間にねじ込もうとはしませんでした。)
きちんと設置すれば,ハクビシンやアナグマにも同様の効果があります。
電気柵の電気は24時間常に流してください。イノシシは24時間いつ来るか分からないからです。
電気が流れていない時に通電線に触れると,当然感電しません。すると,イノシシは「通電線は危険ではない」「触れても問題ない」と逆に学習してしまいます。
その結果,それからは電気線を無視して中に入ってきます。イノシシは剛毛で毛量も多く,鼻と腹以外は通電線が触れても感電しないので,そこ以外なら電気柵に触れても平気なのです。
しかも,無視するのは通電していなかった農地に張られた通電線だけではありません。以後,全ての通電線を無視して侵入するようになります。
最初にイノシシが通電線に触れた時,確実に感電させ,「通電線は危険な存在である」と学習させる必要があるのです。
ハクビシンやアナグマも同様です。
電気柵は管理が面倒,という方もいらっしゃると思いますので,そういう場合は金属繊維が織り込まれている電気柵対応型の防草シートや,雑草の葉だけ枯らす農薬(根まで枯らすと畦畔が崩れる場合があります)で根は残して除草する方法等があります。
また,一般的な防草シートしかない場合,電気柵の内側だけ防草シートを敷き,電気柵の外側は刈り払い機を使う方法もあります。
やや高価ですが,グランドカバープランツの導入もお奨めします。
電気柵の利点としては,正しく運用すればほとんどの野生動物に効果がある点にあります。
注意点としては,こまめな維持管理が必要なことと,野生動物の視線を遮れないこと,背の低いハクビシンは下を潜りぬける可能性があることです。
イノシシ,ハクビシン,タヌキ,アナグマ,アライグマ等中型動物全般に効果のある改良型電気柵が埼玉県農林部農業技術研究センターで開発されています。
強固なワイヤーメッシュ柵で農地を周囲から物理的に遮蔽する方法です。きちんと設置すればイノシシの突撃も防ぐ強固な防御力を持ちます。
設置の際は下端を地面にしっかりと固定する事が大切です。
ワイヤーメッシュの下端へパイプを固定すると,80kg以上の荷重をかけても曲がりませんでした。(平均的なイノシシが鼻で物体を押した場合にかかる荷重は70kg)
上部を30度ほど外側に曲げると,視覚的な圧迫効果が出て,イノシシの垂直跳びによる侵入も防げます。
また,設置の際にはメンテナンス用の通路を必ず確保して下さい。
内側と外側,両方に50センチ以上の幅の作業用通路が必要になります。ワイヤーメッシュを法面の際に設置すると,法面側に作業用通路が確保できず,メンテナンス作業が出来ないので注意してください。
設置する地面も検討が必要です。固い地盤などは避けた方がよいでしょう。
ワイヤーメッシュは内側と外側を定期的に草刈りをする必要があります。
特に,林と地域との境界線に設置する場合は,作業用通路が必須になります。
林の切れ目は,様々な雑草が勢いよく繁茂する場所でもあり,実際,林の中の方が背の高い草もなく,雑草自体がまばらになっていて歩きやすいと感じられることが多いと思います。
林側に作業用通路を確保せず,そのまま雑草に埋もれてしまうケースも多く,一度藪の中に埋まってしまうと,復旧するのが非常に大変です。
「ワイヤーメッシュ柵だからメンテナンスフリーでいいや」と藪の中に埋まるに任せてしまうと,後日,藪を切り払う時に大変な苦労をする羽目になります。また,劣化する速度も早まります。
地域全体をワイヤーメッシュ柵で囲い,イノシシ等の野生鳥獣が侵入しないようにしている地域もありますが,あえて森の中に設置する事で藪に埋もれるのを避ける場合もあります。
ワイヤーメッシュ柵の利点としては,一度設置すれば除草以外,さほどメンテナンスが不要な点と,イノシシはほぼ完璧に防げる点です。
注意点としては,コストがやや高めなことと,野生動物の視線を遮れないこと,メッシュの目より小さい動物はすり抜けること,よじ登りが出来る動物は上から侵入する場合があることです。
例えば,目隠し板が突破されたので電気柵を導入する場合,目隠しの板を取り除いて電気柵を設置するのではなく,トタン板に電気柵をプラスしてください。
具体的にはトタン板の外側に電気柵を設置してください。
こうする事でトタン板の「触れても通電ショックなどを与えられない」と電気柵の「視線を遮れない」という弱点を相互で補うことができます。
トタン板とワイヤーメッシュ柵,電気柵とワイヤーメッシュ柵の場合も同様です。交換するのではなく,追加していくことで弱点の穴埋めが進みます。
目隠し板,電気柵,ワイヤーメッシュ柵を防護柵として機能させるのに一番大切ことは,しっかりとしたメンテナンスです。
電気柵は雑草が茂るのを放置すれば,たちまちその機能を失います。
目隠し板やワイヤーメッシュ柵も,雑草に埋もれてしまえば最後には役に立たなくなります。
そこで,設置の時に内側と外側に50cm幅の作業路を作ってください。
頻繁に人が通る通路は雑草の伸びも抑制できますので,日々,農作物の様子を見たり,散歩をしたりする際に作業路を通るだけで管理の一助となります。
ハクビシンは活動時間が夜間のみの完全な夜行性の動物です。
ネコ位の大きさの動物で,木登りが得意で放置された民家や神社,お寺の屋根裏に巣を作ることも珍しくありません。
このため,ワイヤーメッシュ柵は登ったり,目の粗い所をすり抜けたりして内部に侵入できますので,危険を察知させて追払う電気柵が有効とされています。
アナグマは,イノシシ,ハクビシン,タヌキ,アライグマ等の中で最も探査行動(危険があるかどうかの確認行動)が弱い動物です。
実験的に設置した電気柵を,初めて見たにもかかわらず,無到着にほぼノーチェックで乗越えようとしました。
(その他のアライグマ,ハクビシン,タヌキ,イノシシは,ぎりぎりまでゆっくり慎重に近付いていき,最終確認で鼻で臭いをかいで接触し感電しています)
その際,電気柵を跨いでいる最中に,通電線が腹に触れて感電して,驚いて逃げていますので,電気柵にちゃんと触れればきちんと効果はあります。
また,食べ物への執着がとても強く,一度味をしめると,防護柵があっても何としても再び農地の中に侵入しようとします。
その名の通り,穴を掘るのが上手な動物なので,地面に穴を掘って侵入してくる場合もあります。
そこで,アナグマの被害がある地域では,防護柵はアナグマが被害を出す前に設置して,アナグマが農作物に執着しないようにする必要があります。