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ホーム > しごと・産業 > 農林水産業 > 農林事務所 > 県北地域 > 県北農林事務所振興・環境室畜産振興課 > 野生動物からの農作物被害を防ぐ > 5.イノシシよけのための電気柵設置について
ページ番号:45727
更新日:2020年3月4日
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イノシシ等による農作物被害を軽減する方法として,防護柵の設置がありますが,その中で最も普及しているのが電気柵になります。
しかしながら,正しい設置と運用を行わないと,設置した電気柵が役に立たないだけでなく,周りに設置されている電気柵へ悪影響を与えてしまいます。
電気柵にはイノシシを直接的に捕獲や殺傷する能力はありません。イノシシを感電させて痺れさせて捕まえたり,電流で焼き殺すような危険な装置ではありません。※
野生動物が自分の生息範囲の中で異物を見かけたときに,それが危険かどうか確認する習性を利用することで侵入を防ぐのです。
イヌやネコを触れると分かりますが,ほとんどの動物は分厚い毛皮に覆われているため,皮膚を直接触るのはむずかしく,電気柵が背中の毛に触れただけでは絶縁されて電気が殆ど流れません。
しかし,どんな動物でも鼻先は濡れていますので,そこが電気柵に触れれば通電します。また,腹側の毛は薄くなっていますので,そこでも通電します。
その通電時のショックで「これは触れると危険だ」と認識させるのです。負傷させるのが目的ではありません。
平成27年に静岡県西伊豆町一色の仁科川支流で漏電による感電事故を起こした電気柵は,電気工事技術を持っていた製作者が自作したもので,自宅から電線で引き込んで通電させ,侵入しようとして接触した野生動物が致命的なダメージを負う危険な物です。現在市販されている電気柵本体は,メーカーを問わず全ての製品で,出力できる電圧が致死・致傷しない電圧以下に固定,1秒前後の間隔でオンオフが切り替わる等の安全処置が何重にも施された安全な装置です。(鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気柵施設における安全確保について(外部サイト))
電気柵を設置する場合,電気柵の外側に幅50センチメートルの作業路を作ってください。また,作業路の外側1mは草刈りを行って,イノシシが姿を潜める場所を無くして下さい。
農地のすぐそばに藪があると,イノシシはその中に潜り込んで隠れ家にします。その結果,電気柵を突破しようと試みる回数がとても増えますので,侵入される危険性が高まります。
逆に,農地に近づくには姿を晒さなければならない環境にすると,イノシシによる電気柵突破の試みは激減します。
また,電気柵のすぐ外側がコンクリートやアスファルトにならないようにしてください。
コンクリートやアスファルトは電気を通しにくく,イノシシが電気柵に触れても流れる電力が下がって効果がなくなる事があります。
電気柵の外側に幅50センチメートルの作業路を作るのは,作業目的以外にイノシシが感電しやすくするためでもあります。
地形上コンクリート等に隣接せざるをえない時は,その部分にトタンや電気柵対応型の防草シート等の電気を通すものを敷いて,電気が流れるようにしてください。
電気柵を設置する時は,一段目は地面から20センチメートルの位置に設置してください。斜面やくぼみがある場合は,地表面と一段目の隙間が20センチメートル以下になるように設置してください。
次に,一段目の上に隙間が20センチメートル以下になるように二段目を設置してください。
高さに不安があると感じたなら,電気柵の間隔を変えずに,同じように20センチメートル以下の間隔で3段目を設置してください。
標準的なイノシシは,立った状態での鼻の位置が地面から20センチメートル前後になります。そのため,ちょうど目と鼻の先に電気柵の一段目がくるので,異物に対する警戒心から鼻で電気柵に触れて通電します。
また,隙間が20センチメートルを超えると,しばしば隙間をこじ開けて潜り込むことがありますので,潜り込みを防ぐために地表面と一段目,一段目と二段目の間隔は20センチメートル以下にしてください。
イノシシを目撃するのは圧倒的に夜間が多いと思われますが,実は,イノシシは昼行性(昼間の時間を生活時間とする)の生き物です。
イノシシは警戒心に富み,人の目を避けるため,農地の周辺の藪に潜み,人の姿が無くなってから行動しています。
結果,人通りのある日中ではなく,人影がなくなる夜間に活動する事が多くなり,その時に目撃されるケースが多い事から「イノシシは夜行性」という誤った認識をしてしまうのです。
実際,人を警戒すべき対象と見なさなくなったイノシシは,日中でも積極的に活動するようになります。
そこで,どの時間帯で電気柵に触れても必ず感電するよう,24時間通電し続ける必要があります。
夜間のみの通電にすると,昼間に電気柵に触れたイノシシが,「電気柵に危険はない」と誤った認識をしてしまう可能性があります。
電気柵のトラブルで最も多いのが,雑草が電気柵に触れる事で漏電し,電圧が下がった結果,イノシシが触れても感電しなくなり,電気柵の効果がなくなるケースです。
そのため,電気柵に雑草が触れないよう,刈払機などで定期的に雑草を取り除くことが大切な作業になります。
金属繊維の編み込まれた電気柵対応型の防草シートや,芝で雑草が生えないように芝で覆うグランドカバープランツの導入も手段の一つです。
除草して地面に支柱を刺す際に,段ボールの切れ端を地面に置いて貫通させると,段ボールの切れ端が地面を覆うことで簡易防草シートになり,支柱の周辺で雑草が生えるのを抑える事が出来ます。(段ボールはおよそ一年程度で経年劣化により崩れますので交換してください)
また,電気柵対応型ではない防草シートでも,電気柵の内側だけに設置する分には問題がありませんので,外側に5センチメートルほどはみ出すように設置すると,電気柵の真下から内側にかけての除草が不要になります。(5センチメートルほどなら,外へはみ出していても,イノシシが電線に触れる時に踏むことはありませんので電気は流れます)
電気柵が効かないということは,イノシシに「電気柵は危険ではない」という学習をさせてしまったことになります。
再び電気柵の効果を取り戻すためには,イノシシに再度「電気柵は危険である」と学習させなくてはなりません。
イノシシにふたたび安全を確認する行動を起こしてもらうためには,環境に変化をつける事が一番簡単です。
基本的に同じ侵入ルートで農地に入ろうとしますので,まず侵入箇所を特定して下さい。
特定できたら,その部分の通電線の種類を目立つ別のものに変える,すぐ内側に板を立てて目隠しをする,通電線のすぐ上にビニールひもを張る等します。
イノシシは敏感に変化に気づいて,変更したところの安全確認を行いますので,再び電気柵に触れ,「これは危険だ」と再び学習します。
電気柵ではなく,釣り糸や針金,ビニールテープをダミーとして電気柵の変わりに農地の周りに張っている場合があります。
張っている人は「電気柵じゃなくてこれで十分イノシシよけになる」との事ですが,これはとても危険な行為です。
イノシシが電気柵を危険物かどうか判断しようとして触れて通電した結果,「農地の周りにある細長いヒモは危ない」と学習することで農地への侵入を防ぐのが電気柵の仕組みです。
そのため,最初に電気も何も流れていない,触れても痛くもなんともない釣り糸などを触れた場合,「農地の周りにある細長いヒモは危険ではない」と学習し,電気柵を無視して農地に侵入するようになります。
最悪,ダミーを使った人のせいで地域の農地が全滅する危険性もあります。ダミーではなく,きちんと電気柵を導入しましょう。
「わざわざ電気柵を買う必要があるのか」と思われる方もいらっしゃいますが,県北地域のようにイノシシによる被害の多い地域においては,農薬や肥料と同じ「農業するために必要なコスト」に含まれると考えてください。
実際に設置する際に大切なこと,3つを抜き出してみました。
設置する際にはこれらを念頭において作業してください。
正しく運用すればイノシシの農地への侵入防止に効果的な電気柵ですが,ハクビシン,アナグマ,アライグマなど,より小型の動物には効果が薄い場合があります。
そこで,埼玉県庁農林部の農業技術研究センターで開発された,イノシシ以外も含めた中型動物の農作物被害防止柵(略称:楽落くん)についてもご紹介します。