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更新日:2016年5月27日

マツ枯損発生の環境要因

研究報告No.15(要旨)

の研究は、茨城県において特徴的に認められるマツノザイセソチュウによるマツ壊滅的枯損発生の環境要因を、実際の壊滅的枯損状況から帰納的に明らかにし、今後、気象的な悪条件が生じた時、壊滅的枯損が発生しやすい地域を予測することを目的として行ったものである。また、壊滅的枯損地域周辺で、周囲のマツ林分の枯損が著しいにもかかわらず、集団としてマツの残存する林分が認められるので、この残存マツ林の特徴について、予備的に調査した。

1.マツノザイセンチュウによる被害発生後、10年経過した1981年6月までの、茨城県内でのマツ枯損状況を、1辺約500m、面積約25haのメッシュ単位で調べた結果、マツ林がほぼ100%枯死した壊滅的枯損メッシュが1、120認められた。この壊滅的なマツの枯損地域は、県内で最初にマツノザイセンチュウによるマツ林の枯損が確認された県中央部よりも南に位置し、壊滅的枯損が単に被害発生後の時間的な長さだけでなく、地域的に壊滅的枯損を発生しやすい環境条件によって生じている可能性を示唆した。

2.1981年6月までに生じた1、120の壊滅的枯損メッシュと壊滅的枯損の発生に関与すると考えられる10種類の環境要因との関係を調べた結果、壊滅的枯損メッシュは、気候的要因から見ると、一定の温度以上で、かつ一定の年降水量以下に該当する場合が多く、また、立地的要因から見ると、表層地質、地形、土壌等が特定の条件に該当する傾向を示した。そのため、壊滅的枯損発生の条件は、気候的要因及び立地的要因の両面から限定できると考えた。そこで、壊滅的枯損発生の条件を気候的要因及び立地的要因の両面から限定し、同時に、壊滅的枯損発生の危険地帯推定の基礎とするため、1981年6月までの壊滅的枯損メッシュと環境要因との関係から、各要因ごとに壊滅的枯損発生の条件を限定するための基準を設定した。
定された基準は次の通り。年平均気温=13.7℃以上、温量指数=108以上、8月の平均気温=25.2℃以上、年降水量=1、449mm以下、海抜高=30m以下、表層地質=沖積統・未固統堆積物・泥、洪穣統・ローム、地形=ローム台地・段丘、三角洲性低地、土壌=黒ボク土壌、淡色黒ボク土壌、起伏量:49m以下、谷密度=6以下。

3.県内で10種類の環境要因すべてが、設定された基準を満たすメッシュの分布を求め、それを基準に壊滅的枯損発生の危険地帯を推定した。さらに、1981年6月から1983年6月の間に新たに壊滅的枯損となったメッシュを確認した結果、それらはいずれも推定された危険地帯内で発生し、本研究で行った危険地帯の推定が妥当なものであることが明らかになった。そこで、危険地帯内に分布するマツ林を、その分布の状態から6地帯に分け、各地域ごとに、今後の現実的な壊滅的枯損発生の可能性を推測した。

4.壊滅的枯損地域周辺で、周囲のマツ林分の枯損が著しいにもかかわらず、集団として残存するマツ林とマツ壊滅的枯損跡地の土壌を調べた結果、両者の土壌型は基本的に共通し、明瞭な相違は認められなかった。そのため、これらマツ林が残存した理由については、マツ林に対する薬剤による防除の有無等、さらに広い視点から検討する必要があることを指摘した。

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