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更新日:2016年5月19日
本病は,わが国では古くからよく知られており関東,東北地方の苗畑でマツ類の重要病害のひとつとされている。その被害は苗畑だけでなく,植栽後においても著しい被害を与えることが多い。 1.苗畑および林木における被害の分布本病は北海道から九州まで,全国的に分布しているが,とくに東北,関東地方の苗畑における発生が著しく,その発病率は年によって30~405%%におよぶことがある。 2.発生の年変動と気象条件本病の発生は毎年一定ではなく,年によって大きな差が認められ,,変動が大きい。これは感染時期の9月から10月における連続した降水日数および降水量に密接に関係するようである。こぶ形成部位は,節部に多くこの傾向はとくにクロマツに顕著であった。 3.各胞子世代の形態各胞子世代の形態的特徴のうち,冬胞子の長さが従来知られてきているわが国および海外における測定結果と比較して1.5~2.0倍長く顕著な差が認められた。 4.柄子,さび胞子および夏胞子の性質ならびに寄生性a)柄子滴の形成時期および本菌のへテロタリズム 本菌の柄子滴の形成は,発病2年後から認められる。関東地方における形成時期は11月下旬ないし12月上旬から始まり,翌年の2月下旬ないし4月上旬まで続き,その最盛期は1月中旬から1月下旬である。 b)さび胞子の形成時期および生理的性質さび胞子の形成は,関東地方においては3月下旬ないし4月上旬であり,4月中旬から4月下旬にかけて最盛期である。5月15日前後にはほとんど終了し,その間は約40日間であって,さび胞子の形成期とコナラの開葉時期が一致する。さび胞子は,適温であって十分な湿度のもとでは30分から60分で発芽し,120分から180分で発芽管を分岐する。発芽は5~30℃で認められるが,最適温は15~17℃で,乾燥剤を入れたデシケーター内に入れ5℃に保存すると,126日間は発芽率が衰えないが,410日では発芽能力を失なった。 c)夏胞子の形成時期およびその性質関東地方における夏胞子の形成は,コナラ上では4月25日ないし5月5日に始まり,5月中旬に最盛期があり,5月下旬には終了する。その期間は20日ないし25日間である。しかし,夏胞子の形成期間は樹種によって差があるようである。夏胞子の発芽は,5~30℃で認められ,最適は20~22℃である。0℃または35℃では発芽しないが一定時間以内ならば適温に戻すと再び発芽する。しかし35℃で29時間以上保つと発芽能力が失なわれる。適温適湿のもとでは,60~75分後に発芽しはじめ,180分後に終了する。かなり広い範囲のpHで発芽するが,最適pHは6.4である。また,光線に対して負の屈光性が認められる。 d)中間寄主に対するさび胞子および夏胞子の病原性関東地方における中間奇主の主なものは,コナラとクヌギである。コナラは年に4回断続成長を繰り返すが,夏胞子堆の形成はさび胞子の形成時期と一致する第一回目の展開葉のみである。夏胞子の潜伏期の樹種は,コナラ,カシワ,クヌギ,アカガシ(当年生葉)およびQuercus roburで8日,その他では8日ないし11日であった。さび胞子および夏胞子をブナ科植物に接種した結果,新しく寄主としてアカガシ,ウバメガシ,Quercus robur,bur oak(Quercus macrocarpa)およびクリ14品種とCastanea dentataを加えた。Castanea sativaとブナには寄生性が認められなかった。
5.冬胞子および小生子の形成時期と生理的性質a)冬胞子および小生子の形成時期さび胞子の接種後50日から60日経過すると冬胞子堆が形成された。また,夏胞子を接種したとき,早いものでは接種後40日目から冬胞子堆の形成が見られ,これは6月10日ころにあたる。野外における冬胞子堆の形成は6月中旬ころから認められた。冬胞子堆の形成は夏胞子堆のあとからのみ生じた。冬胞子堆の形成は9月に入ると量も多くなり,野外における形成の最盛期は9月から10月である。これらの冬胞子は適温適湿のもとでは,容易に発芽して小生子を生じ,マツへの感染が行なわれる。 b)冬胞子および小生子の生理的性質 成熟冬胞子は,適湿のもとでは6~25℃で発芽したが,最適は15~20℃であった。適温適湿のもとでは冬胞子は7時間から10時間後に発芽しはじめ,小生子の放出は12時間から24時間後にはじまり,放出された小生子はまもなく発芽を開始した。24時間以内に放出される小生子は少なかったが,48時間後には18~50%となり,6日ないし7日後には全体の91~98%に達した。したがって9月の長雨は本病発生に大きな関連を持つものと考えられた。 6.マツ類に対する本病の感染時期a)接種時期と発病1966年から1972年にかけてアカマツ,クロマツおよび Pinus sylvestrisに対して接種した結果,感染は9月から11月に接種した場合にのみ起り,こぶが形成された。また,越冬冬胞子堆による春期感染は全く認められなかった。したがって,冬胞子および小生子による本菌のマツへの感染は冬胞子堆形成当年の秋(9月から11月)のみに行なわれるものであろう。 b)マツの系統または産地と発病
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