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更新日:2018年3月2日

若きアーティストたちの活動拠点。「ごた混ぜ」の写真家たちをもしなやかにつなげる場「梅津会館」。  /  常陸太田市・鯨ヶ丘

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けんぽくレポート

こんにちは、常陸太田在住のライター、山野井咲里です。

この一年、常陸太田市の旧市街である鯨ヶ丘商店街についてご紹介してきました。

常陸太田市に移ってきて4年が経ちました。私の好きなこの鯨ヶ丘の光景はその短い間でもわずかに変化しています。古民家が真新しい住宅に変わっていくのは寂しい思いがあります。

でも、この丘には趣のあるたくさんの歴史的な建造物がまだたくさん残っています。そのなかでも一際目立っているのは梅津会館です。この町を初めて訪れこの近代洋風建築を目にしたひとはきっと興味をひかれることでしょう。

今回は、かつて常陸太田市の中心地だった鯨ヶ丘に佇む「梅津会館」をご紹介します。

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当時の最先端の建築工法とデザインの流行が取り入れられていて昭和初期を象徴する建物と言われています。/撮影 山野井咲里

梅津会館は常陸太田市出身の実業家、梅津福次郎の寄付により1936年に建てられました。1978年まで市役所として使用されていましたが、役所が現在の場所へ移転した1980年からは郷土資料館として活用されています。1999年には国の登録有形文化財に指定されています。

現在、1階には郷土資料館の常設展示室として、原始古代から近世に至るまでの資料が展示されています。1階の一部と、かつて議場として使われていた2階は、各種イベントや展示など、多目的に利用できる貸出スペースとして活用されています。建物の細部をよく見ると、当時の職人さんのこだわりが見えてきます。当時の最先端の建築工法とデザインの流行が取り入れられたこの梅津会館は、当時の歴史を刻む生きた資料とも言えるでしょう。

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1階の入り口。カウンターや玄関の腰壁や階段室に地元真弓山で産出される寒水石(大理石)が使われています。

若手アーティストに発表の場を。「Art Trial at 梅津」。

「Art Trial at 梅津」が2017年から始まりました。企画したのは「NPO法人 結」。NPOではこのウェブサイトでも以前ご紹介したコミュニティカフェ「Cafe結+1」を運営しています。

鯨ヶ丘でこのイベントをはじめたきっかけについて塩原さんにうかがいました。

私たちは梅津会館の利活用を含めた受付業務を担っています。趣のある2階会議室は音響もよく、また室内の雰囲気もよく、梅津会館の魅力を多くのかたに伝えるため、ここを使って音楽や美術などなアート事業ができないかと考えていました。NPOのメンバーの中にアートを学んだスタッフが2人います。そのメンバーが学生の頃、自分の作品を展示するギャラリーを借りるために、いろいろと苦労があったことを聞いていました。若手アーティストが自己表現としての発表の場を提供するだけでも何かの助けになるのではないか、と思い、始まったのが「Art Trial at 梅津」です。

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2017年の夏に開催した第1回は、アートプロジェクト「ひたちおおた市美術館」(外部サイトへリンク)の展覧会。美術家・渡部智穂さんによる、名画を味わうワークショップでした。

“ごた混ぜ”の写真家によるグループ展

第2回「Art Trial」の展示が先月中頃まで開催されていました。茨城や福島で活動する写真家11人が集まった合同写真展「mish mash」です。実は、かくいう私自身もメンバーのひとりとして参加していました。同世代だけではなく、いろんな年代の方が行き来し交流の場となった展覧会でした。残念ながらすでに終了してしまいましたが、その様子をご紹介したいと思います。

茨城と福島で活動する写真家11人は、「mish mash」合同写真展開催を機に集まりました。

きっかけとなったのは、写真展メンバーの703(なおみ)さんの一声でした。

私は(今回参加した写真家のひとりの)Fujitaさんの写真が好きだったので、彼に写真展をやる予定はないのかとたずねたところ、「まだ写真展の準備ができる時期ではないから」と。「それなら私が企画しますよ」と切り出したのが始まりなんです。会場としてすぐに思い浮かんだのが、この梅津会館でした。

そもそも「mish mash」とは「寄せ集め、ごた混ぜ」という意味で、まさに、11人のいろんな個性が表現された展覧会でした。

今回参加したメンバーにお話をうかがいました。

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Yasuhiro Fujita(左上/撮影 Emi Cotsume)、Emi Cotsume(右上)、Mayumi Suzuki(左下)、703(右下)/撮影 Yasuhiro Fujita

写真展参加のきっかけと作品について教えてください。

Yasuhiro Fujita「703とのたわいもない会話から写真展をやろう、という話になりました。梅津会館は元々知っていました。建物が好きだったから、ここで写真展がやれたらいいなと前から思っていた場所なんです。広いから何人かでやれればいいね、と話していました。僕は国内の廃墟を巡って撮影しています。今回もその写真を展示しました」

Emi Cotsume「私は藤田さんに誘ってもらいました。元々モニターの中で楽しむよりも紙にして外に出すのが好きで、それを展示ができる機会は嬉しいなと思って。常陸太田は友人がいたのでときどき遊びにきていました。作品は、自分が一番無心になって撮れるセルフポートレートを展示しました」

Mayumi Suzuki「昨年大子で参加した写真展の繋がりで703さんに声をかけてもらって。梅津会館は県北芸術祭のときに来たことがあって、こんな素敵なところでできるのならぜひ参加したいと思いました。今回の作品のひとつは最近撮っている”EXIT”というシリーズ。自分の気持ち、感情を人や景色に写して撮ったものです。」

703さんは今回の写真展きっかけでカメラを始めたんですよね。

703「そうなんです。だから今回の展示ではどういった表現ができるか考えて、ぱっと見てみんながいいと思わない、でも私にしか気がつかない、いいな、撮りたいなという部分を切り取った写真にしました。100人がいいと言う写真じゃなくて、1、2人がいいと言ってくれる写真。今回、他のメンバー10人にもスペースだけ決めて好きにやってください、という形にしたくてこういう形になりました」

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堀川文宏(左上)、Teiji Suzuki(右上)、ほりかわ波(左下)、三上 慧(右下)/撮影 Yasuhiro Fujita

堀川文宏さんは日立出身で、日立で活動されているとのことです。今回11人も集まって、こんなに写真の活動をしている方がいることはご存知でしたか。

堀川文宏(外部サイトへリンク)「僕はあまりひとが集まる場所に出向かない方で知りませんでした。でも、知り合っていなくても、活動しているひとはいるんだろうな、と思っていました。今回、藤田さんに誘われたとき、梅津会館という場所でやるというのも面白そうだし、藤田さんの周りに集まるひとだったらきっと面白いに違いないと思って楽しみにしていました。今回展示した写真は、日常的な光景のなかで、ドラマティックな感じではなく、共感を持ってもらえるようなものを選びました。」

Teiji Suzukiさんは福島からですが茨城の写真展参加のきっかけはなんでしょう?

Teiji Suzuki(外部サイトへリンク) 「常陸太田は兄家族が住んでいるのでよく来ています。知り合った703さんに今回誘われました。今回、展示場所が常陸太田の鯨ヶ丘ということで鯨ヶ丘も撮影しました。一見、鯨ヶ丘とはわからない切り取りかたをしている写真です。でも、みるひとがみれば鯨ヶ丘であることはわかる。普段はいろんなジャンルを撮っていて最近ではポートレートが楽しくて撮っています。人がみせる一瞬の表情が撮れると嬉しくて。」

ほりかわ波(外部サイトへリンク)「私も藤田さんからのお誘いです。ここには中山うりさん(※)のライヴで来たことがありました。そのときにとても雰囲気のよい場所だと感じていたので、今回も楽しみにしていました。展示は今一番みせたい写真として、日立の料亭「三春」とcafe MIHARUに勤めていた間に撮りためていたものです。cafe MIHARUで使われていて印象的だった黒い木のテーブルのようにフレームを自作し、そこに写真を並べるように展示しました。」

※中山うり|埼玉生まれ。シンガーソングライター。アコーディオンやトランペット、ギターなどを演奏。2000年にデビュー後これまでに9枚のアルバムをリリース。2011年、自身作詞・曲の「回転木馬に僕と猫」はNHK「みんなのうた」でオンエア。(中山うり公式ウェブサイト・プロフィール(外部サイトへリンク)より要約)

三上慧(外部サイトへリンク)「僕は堀川夫妻に誘われて。チャレンジする気持ちで参加しました。展示は自分が写真の学校に通っていたときのテーマで撮っていた、働く人です。これは自分にとって節目となる写真です。最近は仲良くなったご夫婦で魅力的な2人を追って写真を撮っています。ドキュメンタリー的な写真ですね。」

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山野井咲里(左上/撮影 Saki Yamaguchi)、Saki Yamaguchi(右上)、史緒氏の作品(左下)、史緒(右下)/撮影 Yasuhiro Fujita

Saki Yamaguchiさんは暗室の楽しさを伝えるワークショップなどしていて、今回のモノクロの写真もご自身で焼いてますよね。地元の写真家さんたちが「どこの印画紙を使ってるのか」などいろいろ話を聞きたがってました。写真展での周りの反応はどうでしたか。

Saki Yamaguchi(外部サイトへリンク)「手焼きのモノクロの写真を展示したので、特に年配のかたにアドバイスをもらったり、色々と情報をいただきました。情報が少ない暗室業界なのでこういった機会が嬉しかったです。今回は海の気配が感じられる写真を展示しました。暗室で写真とつくるという手段をもっと身近に感じてもらえるように活動していきたいです。」

史緒さんも福島からの参加でしたね。普段も活動をしている常陸太田とのつながりも教えてください。

史緒(外部サイトへリンク)「僕は普段は花の活動をしています。SUNNY SUNDAYの小泉さんが主催するイベントがきっかけで、常陸太田でも活動するようになりました。cafe 結+1さんでも花の教室をしています。常陸太田はよく来ている場所です。写真展のお誘いを受けて、写真の展示というのが初めてで、どう展示していいか分からなかった。それで枝を使って展示しようと思いました。写真は日常を記録するように撮ったスナップ写真です。その写真を枝につけて、葉っぱのように飾りました。」

私は(山野井咲里(外部サイトへリンク))鯨ヶ丘の梅津会館で開催する写真展に参加できるということで、せっかくなら鯨ヶ丘の写真にしようと決めました。普段から古い建物が好きで、この街が好きで、そういう私からみた鯨ヶ丘を展示しました。このまま残していきたい、街の風景。私にできることは写真で残すことかなと考えて展示をしました。

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お客さんに写真の説明をするYasuhiro Fujitaさん(右)。

終わりに

メンバー11人の活動の仕方はそれぞれです。普段は仕事をして、休みの日に作品づくりをするひとや日常を記録するように撮影するひと、暗室の魅力を伝えたくて活動するひと、地域のグルメマップの撮影をするひと、本の撮影をするひと。11人が11人ともみんな違っていて、それぞれの想いで一つの場所に集まってゆるやかにまとまっているようでした。

都会のど真ん中で写真展をするのも魅力的です。でも、そういうところで展示をしようとすると、場所や空間、費用の制約があるのは否めませんし、コンセプトにしばられて窮屈な思いをすることもあるでしょう。一方で、この梅津会館には他にはない懐の深さを感じます。積み重ねてきた時間が、私たち「寄せ集め」「ごた混ぜ」の写真家たちを多様なものとして包み込んでくれた気がしました。


施設情報

常陸太田市郷土資料館 梅津会館(外部サイトへリンク)
所在地 茨城県常陸太田市西二町2186
開館時間:9:00〜17:00入館は16:30まで
休館日:月曜日(祝日の場合翌日休)、年末年始(12月28日〜1月4日)
臨時休館あり
入館料:無料

Art Trial at 梅津

第3回目として、「えをかきたい」(外部サイトへリンク)が3/18まで開催中です。

画像提供:NPO法人 結

茨城県常陸太田市特別支援学校の児童たちが美術家・臼田那智さんとのコラボ授業内で描きあげた絵を白い丘の内部に配置し、絵のエネルギーを身体全体で受け止めることができる作品を展示しています。

開催期間|2018年3月1日(木)〜18日(日)
開館時間|9:00〜17:00(入館時間16:30まで)
会  場|梅津会館2階
主  催|特定非営利活動法人 結
共  催|常陸太田市教育委員会
後  援|鯨ヶ丘商店会

 

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政策企画部県北振興局振興

〒310-8555 茨城県水戸市笠原町978番6

電話番号:029-301-2715

FAX番号:029-301-2738

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