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更新日:2018年3月23日

畜産センター本所

肉用牛研究所

養豚研究所

畜産センター本所 先端技術研究室

単為発生卵が産生する妊娠認識物質を利用した受胎率向上技術の確立

期間・区分

平成20~23年度,県単

背景・目的
 受胎率向上は生産現場から求められている重要なニーズの一つである。近年,妊娠認識メカニズムを増強する物質としてインターフェロンタウ(以下,IFN-τ)が注目され,IFN-τを分泌する栄養膜小胞と受精卵を一緒に移植すると受胎率が向上する傾向が認められている。IFN-τは単為発生卵からも産生されているため,単為発生卵からのIFN-τ産生量や移植による受胎率向上効果を調査することによって,牛の繁殖成績の改善や受胎における繁殖生理機構などの解明を進め,総合的な受胎率向上技術を確立する。

方法
 単為発生卵を効率的に作出する方法を検討し,単為発生卵が産生するIFN-τ量を測定した。今後は,単為発生卵を受精卵移植の際に一緒に移植し,受胎率向上効果を調査する。さらに,通常の人工授精の際に同様の単為発生卵移植を行い,受胎率を調査する。

成果・評価
 効率的なウシの単為発生卵の効率的な作出方法を検討するためエタノール,Caイオノフォア,電気パルスとCaイオノフォア,6-ジメチルアミノプリン(以下,6-DMAP)の4方法について調査を行った。卵割率,胚盤胞発生率,Aグレード胚発生率等についてはすべて6-DMAPによる処理方法が最も成績が良い傾向が認められた。したがって,体外受精胚との共移植試験などで利用する単為発生卵は6-DMAPによる方法で作成するのが効率がよいと考えられる。今後は,単為発生卵の発生率を向上させるとともに,作出した単為発生卵の共移植の効果を検証する。

牛体細胞クローン胚の効率的な作出技術の確立に関する研究

期間・区分

平成22~24年度,県単

背景・目的

体細胞クローン胚の作出率が低い原因の一つとして胚の発生段階におけるDNAのメチル化の異常が指摘されている。牛クローン胚については,あるDNA領域において異常に高いメチル化状態であることが報告されており,クローン胚のメチル化状態とクローン胚・クローン産子の異常との関連性を指摘する報告もある。よって,黒毛和種牛体細胞核移植においてドナー細胞及び核移植後のクローン胚の培養液中にDNA脱メチル化剤及びHDAC阻害剤を添加することにより,胚盤胞発生率を向上させ,正常なクローン牛の作出率を向上させる。

方法
 黒毛和種の体細胞クローン胚を作製する際,核移植用の卵子,ドナー細胞,または核移植直後のクローン細胞について,培養液にDNA脱メチル化剤およびHDAC阻害剤を加え,胚盤胞への発生率および胚盤胞期総細胞数などを調査した。

成果・評価
 体細胞核移植の基本技術を整えるため,核移植に用いると場由来卵子の成熟培養条件や細胞準備法を検討した。

牛の受精卵移植技術の普及定着に関する研究~β-カロテン・ビタミンの添加が分娩前後の初妊牛へ及ぼす影響について~

期間・区分

平成2年度~,県単

背景・目的
 近年,牛の繁殖機能低下が問題となっている。その原因として様々な要因が考えられるが,その一つにビタミンの不足があげられる。本試験では,卵巣機能へ作用が知られ,ビタミンAの前駆物質であるβ-カロテンの添加が交雑種・黒毛和種の分娩後の発情回帰および採卵成績に及ぼす影響について検討を行った。

方法
 供試牛として,交雑種・黒毛和種計8頭の初妊牛を用いた。対照区と試験区を各4頭とし,試験区については通常の配合飼料にβ-ブリードSPを100g添加した。分娩前4週,1週,分娩時,分娩後1週,4週,8週に採血を行い,血中のビタミンAおよびβ-カロテン濃度を測定し,併せて初回発情回帰日数,黒毛和種においては採卵成績についても調査を行った。

成果・評価
 血中のビタミンAの濃度については差はみられなかったものの,β-カロテン濃度では試験区が対照区より高くなる傾向を示した。また初回発情回帰日数についても試験区が対照区より早くなる傾向が示され,採卵時の正常卵率においても試験区が高い傾向を示した。以上よりβ-カロテンの給与が繁殖成績改善に繋がる可能性が認められた。

メラトニン濃度を指標とした牛の卵巣機能解析法に関する研究

期間・区分

平成22~24年度,国補

背景・目的
 近年,受胎率の低下が深刻化し畜産経営を圧迫する大きな要因となっている。メラトニンは脳内ホルモンのひとつで,睡眠調節や抗酸化作用,卵巣機能との関係等が注目されている。また,メラトニンの投与によって妊娠率が向上することなども知られており,本試験ではこのメラトニンが牛の繁殖成績にどう影響を与えるのか解明し,牛の繁殖性の改善に活用していくことを目的とする。

方法
 牛における血中のメラトニン濃度を指標化するため,日内の変動および年間の変動状況について調査した。日内の変動については2時間毎に24時間採血を行い,年間の変動については日照時間の異なる冬至,春分,夏至,秋分に採血を行った。採取した血液はRIA法によってメラトニン濃度を測定した。

成果・評価
 牛における血中のメラトニン濃度の日内変動は,日没後に徐々に上昇し午前2時頃をピークに日出にかけて減少していく傾向を示した。また,年間の変動としては季節(日照時間)の違いによってピーク値が変動することなどが明らかとなり,指標化に適した採血時刻が示された。

畜産センター本所 環境保全研究室

水田における環境負荷を考慮した資源循環型飼料用稲多収生産技術の開発

期間・区分

平成21~23年度,国補

背景・目的

 近年,米の生産過剰基調や輸入飼料高等から主食用米に替わる飼料用稲の生産が注目され,家畜ふん堆肥の有効利用等から地域資源循環型農業の形成が求められている。このような中,合理的な堆肥等の養分施用によって資源循環型生産の可能性が高いが環境負荷を考慮した視点での飼料用稲の生産について明らかになっていない。そこで,飼料用稲生産における堆肥・液状コンポストの利用方法や物質循環フローを明らかにする。

方法

  1. ポット試験:ワグネルポット1/2000aに飼料用イネ品種(ホシアオバ,べこあおば,モミロマン)を移植して,液状コンポストの追肥時期,追肥回数の違いによる飼料用イネの生育・窒素利用率について調査した。追肥する液状コンポスト中窒素量は15kg/10a量とした。
  2. 圃場調査:40㎡の圃場に飼料用イネ品種(ホシアオバ,べこあおば,モミロマン)を栽培し,移植後30日,60日に総追肥窒素量が15kg/10a量となるように液状コンポストを施肥した。

成果・評価

 ポット試験において,べこあおばは,他の2品種と比べ穂数・穂重量が多かった。追肥方法では,施肥量を複数に分けて施肥することでいずれの品種でも窒素の利用率が高かった。圃場調査においても,べこあおばが他の2品種と比べ玄米重が多かった。栽培品種の選定(べこあおば)と追肥回数を増やすことにより,より窒素の利用が高まることが示唆された。

畜舎排水処理水における硝酸態窒素等の除去技術確立及び脱色技術の検討

期間・区分

平成22~24年度,県単

背景・目的

 畜舎排水を浄化・放流している畜産農家が,水質汚濁防止法の健康項目のうち硝酸態窒素等の一律排水基準をクリアでき,継続的に経営ができるような処理方法・技術を確立する。また,茶褐色に着色している畜舎排水浄化処理水の簡易な脱色技術について処理方法を検討する。

方法

 畜産農家処理水の硝酸態窒素濃度,色度等の実態調査を行った。
 高度処理により,脱色,硝酸態窒素の除去について検討した。

成果・評価

 調査した浄化処理水の硝酸態窒素濃度は,600~1000ppmの範囲にあった。また,回分式は98~173ppm,連続式が15~435ppmと処理方式で差がみられた。冬季に行った調査では硝酸態窒素濃度は,100~600ppmと低下傾向であった。

家畜ふんたい肥の高度利用に関する研究

期間・区分

平成19~22年度,県単

背景・目的

 家畜ふんたい肥の土壌改良効果の指標としてC/Nが用いられてきたが,C/Nはオガクズ等水分調整材の投入量によって増減する。オガクズは分解が遅く,施用を嫌う耕種農家が多い。そこで,たい肥中の腐植酸含量等を指標とした家畜ふんたい肥の土づくり効果の明確化を図る。

方法

  1. 乳牛ふんたい肥のC/Nおよび腐植酸含量・腐植酸のC/Nの測定を行った。抽出した腐植酸のRFおよびΔLogKを測定し,熊田法に基づき腐植酸の分類を行った。
  2. C/Nの異なる2つの乳牛ふんたい肥を黒ボク土に添加し,畑状態保温静置法により培養し,培養土壌を水中篩別し,乾燥後重量を測定して団粒分画区分率とした。
  3. 牛ふんたい肥および鶏ふんたい肥において定量区および50%代替区を設定し,試験区毎に土壌のC/NおよびCECを測定した。
  4. 100ml容のUMビンに山砂または黒ボク土の風乾土を入れ,液状コンポストを添加し,畑状態保温静置法により30℃で2週間培養する。40℃で24時間風乾し分析材料とする。CECは簡易バッチ法により測定する。団粒形成は,団粒分析装置をもちい水中篩別法で測定した。

成果・評価

  1. 液状コンポストはSSが高いものほど,全炭素量が多い傾向が見られた。
  2. 液状コンポストの腐植酸の腐植化度は,Rp型又はp型であった。SSと大腸菌数が高く簡易ばっ気処理が不十分と推測できたものは腐植化度がp型又はp型に著しく近いRp型であった。適切な簡易ばっ気を行って処理された液状コンポストの腐植化度はRp型と推測された。
  3. 液状コンポストのフルボ酸の腐植化度は,RF(相対色度)が最大で2.2と著しく低かった。
  4. 炭素量が多い液状コンポストは,山砂のCEC増減への影響は確認できなかったが,1mm以上の粒径分画を増加させる団粒形成効果があった。また,黒ボク土のCECを有意に増加させた。

家畜ふんたい肥の速効性肥料効果の解明と実用化技術の開発

期間・区分

平成22~26年度,国補

背景・目的

 家畜ふんたい肥には,無機態成分と未分解な有機態成分が混在している。そのため,肥料としての効果(肥効率)が不明瞭で農産物の安定な生産が確立できず,家畜ふんたい肥の利用が進まない大きな原因となっている。そこで,家畜ふんたい肥の土壌中での肥料成分の動態を把握することで速効性肥料効果を解明し,現場で簡便に調整するための知見を得て,速効性肥料効果を考慮した施肥設計法を実用化(システム化)する。

方法

  1. 抽出方法の検討
    1. 豚ぷんたい肥を65℃で24時間風乾し10gを供試した。抽出液は0.5MHCLと2%クエン酸とし,振とう時間を10分,15分,30分,60分,抽出液の温度を10℃,20℃,30℃として試験区を設定した。
    2. 各抽出液について,アンモニア態窒素及び硝酸態窒素を連続流れ分析装置(ビーエルテック(株)社製)で測定した。
  2. 畑状態保温静置法による窒素無機化量の解明
    1. 100ml容のUMビンに黒ボク土の風乾土を20g入れ,全窒素が10mg程度になるよう豚ぷん堆肥を添加し,ポリエチレンフィルムで蓋をして,蒸留水で最大容水量の60%に調整しながら30℃で培養した。培養期間は2,4,7,9,11,14,21,28,49日間とした。
    2. 培養終了後,UMビンに2M塩化カリウム液80mlを加え30分間浸透した。静置後,乾燥して測定した。

結果・評価

 畑状態保温静置法による窒素無機化量を測定したところ,開始直後に無機態窒素の減少がみられた。21日以降の無機態窒素の増加がみられたが,各たい肥によって増加量に違いが見られた。

畜産センター本所 酪農研究室

初産分娩月齢早期化のための健全な哺乳・育成技術の確立

期間・区分

平成18~22年度,県単・一部委託

背景・目的

 酪農経営における後継牛の確保は,自家生産・育成が主流であるが,初産分娩月齢はここ数年改善されていない。優良後継牛を安定的に生産するため,自給粗飼料を活用して育成期の発育を高め,育成期間を短縮する技術を検討した。

方法

 ホルスタイン種育成牛を供試し,育成前期(200~380kg,n=31)と育成後期(380kg~分娩前2ヶ月,n=27)の2ステージについて,DG(日増体量)0.95kgに必要なTDN(可消化養分総量)の80%を自給粗飼料(イタリアンライグラス)で給与する粗飼料多給区と,60%の配合飼料で給与する配合飼料多給区の2試験区で育成試験を実施した。調査項目は,日増体量,乾物摂取量,分娩時の月齢,体重,及び乳量とした。

成果・評価

 育成前期では,粗飼料多給区で目標DGよりやや低く,乾物摂取量がやや低くなった。一方で配合飼料多給区はDGが1.0kg(上限)を超えたため,自給粗飼料割合は70%程度が良好と考えられた。
 育成後期は,粗飼料多給区でほぼ目標どおりのDG0.93kgが得られ,分娩月齢も22.0ヶ月で体格も十分であった。配合飼料多給区も分娩月齢,体格は十分であったが過肥気味となった。乳量は両区とも8,000kg前後と良好であった。(6県協定研究,供試頭数60頭分)

酪農経営における未利用資源の敷料利用法の検討

期間・区分

平成22~24年度,県単

背景・目的

 畜産業において主要な敷料であるオガ粉等の木質系資材の需給が逼迫し,これに変わる新たな敷料資材の開発が求められている。そこでペーパーシュレッダーダスト(PSD)をはじめとする未利用資源の敷料利用を検討する。

方法

 県内における敷料の種類及び利用状況について現地調査を行い,飼養形態に即した敷料の種類及び使用量についてとりまとめると同時に,数種類の新たな敷料資材の発酵特性について,小型堆肥実験装置を用いた堆肥化試験を実施した。また,フリーストール,繋留式及びカーフハッチにおいて,敷料利用及び堆肥化に関する実証試験を実施した。

成果・評価

 PSDの敷料特性に関して,一定程度の吸水力及び保温効果が確認されたが,切断長が短いものでは機械作業にやや不適な一面が見られたため,さらなる改良が必要である。また,引き取り時の状態のままでは運搬時の比重が低いため,圧縮などによる作業効率向上法の検討が必要である。

飼料用米等水田を活用した乳牛の飼養管理技術の開発

期間・区分

平成22~26年度,独法委託

背景・目的

 飼料自給率の向上を図るため,飼料用米や稲WCS等の水田作飼料の給与が離乳子牛や育成牛の発育・生理性状に及ぼす影響を解明し,乳用牛への効率的な給与技術を開発する。

方法

 育成中期牛(6ヶ月齢,200kg)の目標日増体量を0.90kgとして,必要な飼料の30%を濃厚飼料,残りをチモシー乾草で給与する場合に,配合飼料と圧ぺんトウモロコシを概ね半々とするN区と,N区のトウモロコシを未粉砕の飼料用米で置き換えるG区,粉砕した飼料用米で置き換えるFG区の3試験区で12週間の飼養試験を実施した。

結果・評価

 給与したチモシー乾草の栄養価が低かったため,日増体量は目標値よりも全体的に低かった。FG区とN区の日増体量に差がなかったため,育成中期牛において粉砕米はトウモロコシとの代替が可能であると示唆された。一方でG区では,他の2区に比べ日増体量が小さく,デンプンの消化率が低く,糞中に未消化の玄米が散見されたことから,育成中期牛においても成牛に給与するとき同様に,飼料用米を加工する必要があると考えられた。

(6県協定研究,供試頭数35頭分)

機能性サプリメントを活用した栄養管理の高度化による泌乳牛の繁殖性改善技術の開発

期間・区分

平成21~23年度,独法委託

背景・目的

 乳牛の繁殖性低下の要因として,第一胃内エンドトキシン(内毒素)と酸化ストレスに着目し,アスタキサンチン等の抗酸化物質とエンドトキシン低減効果が期待されるラクトフェリンの給与による繁殖性改善効果を検討する。

方法

 初産牛での繁殖性改善効果を検討するため,分娩予定日4週前から脂溶性ビタミン,セレン及びアスタキサンチンを給与し,分娩後の繁殖性,産乳性及び酸化ストレス物質の推移を調査した。
経産牛についても,補正乳量10,000kg以上の高能力牛について,アスタキサンチン及びラクトフェリンの給与が分娩後の繁殖性,産乳性,酸化ストレス及びエンドトキシン濃度に与える影響を調査した。

成果・評価

 第1回飼養試験において,初産牛ではセレン添加区の血中プロジェステロン濃度が無添加区よりも高く推移し,黄体形成が良好であると示唆された。また,アスタキサンチン添加区では発情回帰日数が無添加及び他の2添加区よりも早くなる傾向がみられた。経産牛ではアスタキサンチン,ラクトフェリンとも繁殖性,産乳性及びその他のいずれの項目においても無添加との間に差はみられなかった。

(12県協定研究,供試頭数60頭分)

初産牛への窒素低減飼料給与が産乳と繁殖に及ぼす影響

期間・区分

平成19~22年度,県単・一部委託

 

背景・目的

 成長途上にある初産牛において,体に蓄積する窒素量とエネルギーを摂取飼料により調節することで,安定した泌乳量と乾物摂取量を確保し,かつ排出窒素量を低減化させる適正な飼料中蛋白質含量について検討した。

方法

 初産牛を供試し,乾物中の粗蛋白(CP)含量が16%と14%の2区を設け,16週間の飼養試験を実施した。調査項目は体重,乾物摂取量,産乳成績,血液性状およびルーメン液性状とした。また,繁殖成績については分娩後20週まで調査した。

成果・評価

 初産牛の泌乳前期において,飼料中のCP含量を16%にすることにより,乾物摂取量は高まり,体重の回復も良好で,乳量も増加した。また,血液性状,ルーメン液性状および繁殖成績にも影響はない。CP含量を14%まで低下させると,尿中排泄窒素量が低下するが,同時に蛋白質充足率が有意に低くなった。したがって,安定した泌乳量と乾物摂取量を確保するには飼料中の蛋白質含量は16%が適切であることが示された。

(6県協定研究,供試頭数43頭分)

酪農における飼料用米の効率的な給与法の確立

期間・区分

平成21~23年度,国補

背景・目的

 飼料用米は濃厚飼料の代替として位置づけられ,県内においても近年作付け面積が増加している。しかしながら,泌乳牛への飼料用米の給与試験は少ない。そこで,ホルスタイン種泌乳牛への玄米給与が産乳性や関連形質へ及ぼす影響を解明する。

方法

 平均体重576kg,平均分娩後日数218日,日平均乳量20~24kgのホルスタイン種泌乳牛8頭を供試した。濃厚飼料代替50%(粉砕玄米給与量:4kg/頭/日)(試験区)と濃厚飼料のみの区(標準区)の2区を設定した。14日間の給与期間の後,乳量,乳成分,ルーメン液性状,血液性状および乾物摂取量を調査した。

成果・評価

 試験区と標準区において,乳質および乳量について,両区間に顕著な差は認められなかった。また,ルーメン液性状および血液性状についても,両区間に有意な差は認められなかった。以上のことから,日平均乳量20~24kg程度の泌乳牛において,濃厚飼料の代替として飼料用米(玄米)を50%利用しても産乳性を損なうことはないことが示された。

畜産センター本所 飼料研究室

飼料作物品種選定試験

期間・区分

昭和58年度~,県単

背景・目的

 市販の飼料用トウモロコシについて,本県の気候・風土に適合した優良品種を選定し,県奨励品種決定の基礎資料とすることにより,本県の自給粗飼料の生産性向上を図る。

方法

 RM(相対熟度)106~127の25品種について,4月下旬に播種した。施肥等は,県耕種基準を準用した。刈取調査は黄熟期とした。

成果・評価

 夏期の高温条件により,各品種とも髙い収量を示した。
乾物収量については,早生ではタカネスター及びP1543,中生ではKD660・KD670・NS120・31P41・ZX7605・NS124・KD750・TX158・ZX7956・P2023,晩生ではNS127がそれぞれ多収だった。
 雌穂乾物収量については,早生ではNS106及びタカネスター,中生ではKD660・KD670・31P41・NS124・ZX7956・P2023,晩生ではNS127がそれぞれ多収であった。
 9月上旬に台風が接近したが,倒伏はみられず,また,病虫害についても観察されなかった。

イタリアンライグラスの新品種育成試験

期間・区分

昭和39年度~,国補(指定試験)

背景・目的

温暖地に適する優良なイタリアンライグラス品種を育成する。

方法

  1. 早生耐倒伏性系統の育成 友育159号の検定試験を行った。前年度育成した耐倒伏性2倍体15系統の生産力検定試験を標準(出穂期),晩刈り(開花期)で検定を行った。
  2. 早生高乾物率系統の育成 高乾物率で2回の選抜を行って育成した20系統の検定を行った。
  3. 中生系統の育成 2世代の選抜により前年までに得られた4倍体系統46系統の生産力検定試験を実施した。
  4. 極長期利用系統の育成 LL1系統77系統(平成20年播種)の生産力検定試験を行った。

成果・評価
 友育159号は「はたあおば」より乾物収量は同程度であり,倒伏は強かった。「はたあおば」より耐倒伏性,乾物率の高い系統を選抜した。中生系統は「タチムシャ」より冠さび病程度が低く収量が高かった。極長期系統は「アキアオバ3」より越夏後収量が高く冠さび病に強かった。

畜産センター本所 養鶏研究室

地鶏供給事業

期間・区分

平成20年度~,県単

 

背景・目的

 本県の地鶏である「奥久慈しゃも」,「つくばしゃも」等の原種鶏や種鶏を維持・保存し,地鶏の種鶏の雛を供給する。

方法
原種鶏の維持

  • 奥久慈しゃも原種鶏(しゃもJ系,名古屋種,ロードアイランドレッド種L系)
  • 新地鶏原種鶏(しゃもZ系)
  • 日本鶏(13品種)

成果・評価

奥久慈しゃも種鶏ヒナの供給

  • しゃもJ系統雄ひな 150羽
  • TL系交雑雌ひな 1,200羽

つくばしゃも

  • しゃもZ系統大ひな 105羽

地鶏の遺伝資源保存等に影響を及ぼす阻害因子に関する試験研究

期間・区分

平成20~22年度,国補

背景・目的

 地鶏の遺伝資源保存を阻害する要因について試験研究を行い,貴重な遺伝資源を安定して育種し,その資源を有効に活用するための技術開発を図る。

方法

  • 種卵の加温処理技術の開発:マイコプラズマの不活性化温度(45.8℃)に加温する時間,パターンを換えて,鶏卵内温度の測定とふ化率を調査した。
  • 凍結精液利用技術の確立:耐凍剤(メチルアセトアミド)濃度が異なる凍結精液を製造し,人工授精を行った。
  • HACCPを取り入れた衛生管理技術の確立:市販の簡易キットを用いて農場内の衛生状態を調査するとともに,コスト,検査方法を検討した。

成果・評価

  1. 種卵の加温処理技術の開発
    1. 鶏卵内温度は,7時間,17時間処理プログラムとも,マイコプラズマを不活性化させる45.8℃以上になることが確認できた。
    2. ふ化率は,17時間処理(54.4%)は,対照区(85.5%)より低いが7時間処理(34.0%)に比べ優位に高かった
  2. 凍結精液利用技術の確立
    1. 各品種により授精率に差が認められた。(12.9~37.8%)
    2. 同一品種内でも,耐凍剤濃度(5%,7%,9%)により授精率に差が認められた。(7.0~51.2%)
  3. HACCPを取り入れた衛生管理技術の確立

 市販の簡易キット(5種類)の検査手技,時間,コストについて検討した

粉砕納豆の給与による低コレステロール鶏卵生産試験

期間・区分

平成20~22年度,県単

 

背景・目的

 採卵鶏に粉砕納豆粉末を給与し卵黄中のコレステロール含量の推移や生産性に及ぼす影響について検討した。

方法

 粉砕納豆粉末を産卵開始前の大雛から給与する区,成鶏から給与する区,及び対照区の3区で試験を行った。

成果・評価

 低コレステロール卵生産が可能なことを示せたが,長期的安定的なものではなく産卵開始時からの生産はできなかった

養鶏場におけるアニマルウォッチセンシングシステムの確立

期間・区分

平成20~23年度,独法委託

背景・目的

 養鶏現場において,体温や運動量をモニターするアニマルウォッチセンサの耐久性や稼働性を調査し,汎用タイプのセンサ開発に寄与する。
 また,暑熱ストレス等感作時の体温や運動量の変化をモニタリングし,暑熱ストレスを未然に防止する監視システムの開発を目指す。

方法

  1. 養鶏場におけるアニマルウオッチセンサ装着,稼動の実証センサの装着部位,装着方法の検討を行った。
  2. 暑熱ストレスが生産性に及ぼす影響の調査,生産性低下防止対策の確立細霧(ミスト)システムおよび大型送風機による飼養環境の改善対策を検討するとともに,飼料に重曹,ビタミンCを添加することによる暑熱ストレス低減対策の検討を行った。

成果・評価

  1. センサの耐久性,稼動性センサの平均稼動日数(電池消耗)は,81日であった。
  2. 鶏舎環境と生産性(飼料消費量,卵重,産卵率)との関係ミスト鶏舎における生産性は通常鶏舎よりも優れており,鶏舎内へのミスト噴霧及び送風機の設置は暑熱ストレス低減効果があった。

地鶏・採卵鶏の飼料用米給与による生産技術の確立

期間・区分

平成21~22年度,県単

 

背景・目的

 飼料自給率の向上や耕作放棄地解消を目的として,家畜への飼料用米給与の取り組みが全国的に始まっている。
 市販飼料に飼料用米(玄米及び籾米)を外付けで添加して採卵鶏,肉用鶏に給与し,その生産性や生産物へ及ぼす影響を調査した。

方法

採卵鶏:対照区には配合飼料のみ,玄米区には配合飼料の20%量の玄米を,もみ米区では同様に20%量の籾米を混合した。
肉用鶏:玄米,もみ米給与とも対照区は配合飼料のみ,10%,20%区はそれぞれの重量割合を混合した。

成果・評価

採卵鶏

  • 産卵率は玄米区,籾米区とも対照区よりも優れていた。特に暑熱期(7月~9月)にその傾向が大きかった。
  • 卵黄色は給与開始後5ヶ月以降に玄米区,籾米区ともに対照区と比較してカラーファンスコア値(卵黄色を表す指標,薄くなると小さくなる)で約0.2低下した。

肉用鶏

  • 20%では発育がやや悪くなったが,10%添加では嗜好性や生育に悪影響はなく,生産性の向上も期待できた。

肉用牛研究所 改良研究室

牛改良事業

期間・区分

昭和27年度~,県単

背景・目的

 優良種雄牛を適正に飼養管理し,優良な凍結精液の生産と譲渡を行う。

方法

 種雄牛及び候補種雄牛を繋養し,精液を採取して凍結した。このうち,検査に合格したものを保存し,希望に応じ県内に譲渡した。

成果・評価

 候補種雄牛を含め16,111本を生産し,2,400本を譲渡した。譲渡した精液は,北国関7が2,031本で全体の85%を占め,千穂が130本,舞花桜が98本であった。

肉用牛広域後代検定推進事業(直接検定)

期間・区分

平成11年度~,県単

背景・目的

 肉用牛の改良を図るため,肉用牛広域後代検定推進事業により選定された基礎雌牛へ基幹種雄牛を指定交配し,生産された雄子牛を選定し飼育検定する。

方法

 (社)全国和牛登録協会で定める産肉能力検定直接法に基づいた。

成果・評価

  1. 1日平均増体量は,「福平」が1.22kg/日,「北茂」が1.06kg/日であった。
  2. (社)全国和牛登録協会が定めた体高値による発育判定は「福平」が3,「北茂」が3であった。
  3. 茨城県肉用牛育種改良推進協議会専門部会で審査した結果,「福平」及び「北茂」を選抜した。

肉用牛広域後代検定推進事業(後代検定)

期間・区分

平成4年度~,県単

背景・目的

 直接検定により選抜された候補種雄牛の現場後代検定を実施し,優秀な種雄牛を選抜する。

方法

(社)全国和牛登録協会で定める産肉能力検定(現場後代検定法)に基づいた。

  1. 検定場所数:2場 茨城県畜産センター肉用牛研究所,全国農業協同組合連合会茨城県本部,肉用牛哺育育成センター
  2. 供試牛頭数 概ね15頭/1種雄牛出荷月齢雄去勢 29か月齢未満,雌 32か月齢未満

成果・評価

 候補種雄牛「安福幸」,「根茂賢191」の産子の検定を終了した。枝肉成績を検討した結果,枝肉重量及び脂肪交雑の推定育種価(BMS)が県評価基準値に対して安福幸+9.603,+0.072,根茂賢191+4.568,-0.521となったことから,安福幸のみを選抜した。

銘柄牛高品質化のための黒毛和種遺伝子多型と産肉性との関連の研究

期間・区分

平成20~22年度,国補

背景・目的
 本県和牛におけるstearoyl-CoA desaturase (SCD)遺伝子,成長ホルモン(GH)遺伝子,及びグレリン受容体(GHSRla)遺伝子の遺伝子多型を解析し,産肉性に関する成績との比較から遺伝子に基づく能力評価法を確立し,本県和牛集団の産肉性の改良を促進する。

方法

  1. 茨城県産黒毛和種肥育牛(864頭)の腎周囲脂肪及び胸最長筋の一部を採取し,採取組織細胞から常法によりゲノムDNAを抽出した。
  2. SCD遺伝子とGH遺伝子では既に報告されている文献情報より塩基多型部位解析用プライマーを設計し,GHSR1a遺伝子では新規に塩基多型部位解析用プライマーを設計し各個体サンプルの遺伝子型を判定した。
  3. 脂肪交雑(BMSNo.)等枝肉成績は(社)日本食肉格付協会の格付結果を用いた。

成果・評価

 枝肉形質と各遺伝子多型の関連性を検討した結果,GHSR1a遺伝子において枝肉重量でAA型が有意に大きく,A遺伝子の相加的効果は約19kgと推定された。また,枝肉重量の遺伝分散に占めるGHSR1a遺伝子座位の割合は,約4%と推定された。GHSR1a遺伝子座位の優良遺伝子であるA遺伝子頻度は0.22と低く,この遺伝子を蓄積することにより茨城県の黒毛和種集団の枝肉重量の改良に利用できると考えられた。

肉用牛研究所 飼養技術研究室

遊休農地のシバ型草地化実証試験

期間・区分

平成18~22年度,県単

背景・目的

 小規模な繁殖和牛農家でも省力・低コストで草地化が可能で,さらに造成後も低コストで持続的な利用可能な低投入持続型草種(センチピードグラス)を利用し,現地での栽培及び放牧実証試験を行う。

方法

試験区はセンチピードグラスによる耕作放棄地の草地化を行った。3年間耕作放棄地放牧を実施した元水田と元畑を利用した。それぞれセンチピードグラスの播種量により1kg/10aと0.5kg/10aの区とし,蹄耕法による不耕起造成を行った。

これらの造成した草地を利用し,放牧圧の違いがセンチピードグラスの草地に及ぼす影響を調査した。強放牧区と弱放牧区に区分しそれぞれ繁殖和牛2頭を同じ日数放牧した。

成果・評価

 播種から3年目には,播種量,播種後の放牧方法の違いによる試験区間の被度の差はほとんど見られなくなった。不耕起造成で播種量0.5kg/10aの条件でもセンチピードグラスによる草地造成が可能であった。
 放牧圧の違いにより単位面積当たりの草の生産量では元水田,元畑とも放牧圧の弱い方が多くなったが,利用量では放牧圧の強い方が多くなる結果であった。

銘柄牛のうま味成分に関する試験研究

期間・区分

平成20~22年,国補

背景・目的

 茨城県の銘柄牛(常陸牛)のうま味・風味成分の状況を把握するとともに,飼養管理と肉質の関係を明らかにする。

方法

 常陸牛生産者のうち,選定した30戸の農家が出荷した牛肉の僧坊筋を採取し,脂肪酸組成・イノシン酸量の測定を行った。また,採材した牛の枝肉格付け・出荷月齢・販売価格等の情報の収集や,農家の飼養管理方法などを収集し,データベース化した。収集した飼養管理情報と枝肉情報,牛肉の肉質の分析結果について統計解析を行った。

成果・評価

 脂肪酸については,農家間および種雄牛間でそれぞれオレイン酸割合,不飽和脂肪酸割合に有意(P<0.01)差が見られた。また,BMSNo.とオレイン酸割合および不飽和脂肪酸割合についてはともに相関が低かった。
 イノシン酸量については,BMSNo.の増加と負の弱い相関が見られた。

飼料用米の給与が黒毛和種の肥育成績に及ぼす影響

期間・区分

平成21年度~,県単

背景・目的

 トウモロコシ等の代替飼料として注目されている飼料用米の黒毛和種肥育における適切な給与水準や,肉質に及ぼす影響について明らかにし,飼料用米の給与技術を確立する。

方法

 肥育期間は10ヶ月齢~29ヶ月齢とした。試験区分は濃厚飼料を飼料用米で30%,15%,0%(対照区)代替した3区とした。
 飼料残滓の計量,尿石等の疾病確認,体重,体高,胃液性状,血液性状等の結果について調査した。

成果・評価

 増体は,試験区の方が対照区より遅れる傾向が認められた。健康状況については,胃液のpHが5.99~7.88,血液のBUNが11~14と各区とも特に問題は認められなかった。

和牛子牛の制限哺乳が母牛受胎率及び子牛の発育に及ぼす影響

期間・区分

平成21~23年,県単

背景・目的

 本県の黒毛和種繁殖経営では分娩間隔の短縮や子牛の発育向上が必要である。そこで,早期母子分離に替わる管理法として制限哺乳を実施し,授乳の減少による母牛の発情回帰日数,受胎率への影響,子牛の増体効果を検討する。

方法

  1. 供試頭数 制限哺乳区4頭,自然哺乳区5頭
  2. 飼養条件 制限哺乳区 母子別飼い哺乳:朝夕2回各15分
     自然哺乳区 母子同居
     両区とも,スターター,乾草,水は自由摂食
  3. 試験期間 生後7日齢~3ヶ月齢(離乳時期:生後3ヶ月齢)
  4. 調査項目 子牛の体重,体高,下痢発生状況,飼料摂取量

成果・評価

 試験期間中の平均摂食量は,制限哺乳区で54.3kg/頭・3ヶ月,自然哺乳区で21.6kg/頭・3ヶ月であった。1日当たり増体量は制限哺乳区,自然哺乳区ともに0.88kgであった。下痢の発生回数は,制限哺乳区で16回,自然哺乳区で31回と制限哺乳区で少なくなり,平均回復日数も制限哺乳区1.3日,自然哺乳区2.3日と制限哺乳区で短くなった。

養豚研究所 育種研究室

 ランドレース種系統造成試験

期間・区分

平成17~22年度,県単

背景・目的

 系統豚は,ローズポークを始めとする高品質豚肉生産の基礎豚として県内で広く利用されているが,系統維持も閉鎖群で行うため,近交退化により生産性が低下)する恐れがある。そこで,2010年の造成完了を目標に,「ローズL-2」の後継系統として造成を開始した。

方法

 2005年度からG1の生産,選抜を行い,以後,閉鎖群で交配し1年1世代で選抜を繰り返し,2010年度のG6で造成を完了した。集団の規模は雄10頭,雌60頭の合計70頭で造成終了まで閉鎖群とし,交配は1月から2月にかけて行い,4月から6月にかけて集中分娩させた。以後,分娩産子について,体重30kgで発育状況・乳頭数・乳器の形状を中心とした第1次選抜,体重105kgで1日贈体重(DG)・背脂肪厚(BF)・産子数(LS)及び肢蹄強健性,抗病性について第2次選抜を実施した。

成果・評価

 G6の生産・育成・選抜により系統造成を完了した。G6育成群の産肉成績は,DGが905.9g,BFが1.63cm,LSが11.79頭で改良目標に達した。肢蹄の強健性については,歩様が良く,骨量に富みしっかりとした肢蹄となった。抗病性に関してはムレ肉発生に関係している豚リアノジン受容体1疾患型遺伝子(RYR1)の変異型を全て除外,インフルエンザ抵抗性遺伝子Mx1が全て正常型ホモとなり,抗病性の向上について期待ができる。なお,体の線が滑らかで背幅が広く,深みも充実した,バランスの良い体型となり,県内の種豚改良及び高品質豚肉生産の基礎となるとともに生産性向上に寄与することが期待される。

ローズ改良普及試験

期間・区分

昭和45年度~,県単

背景・目的

 肉豚の生産の主流は三元交雑豚であるが,ランドレース種の役割はF1母豚生産にある。
 当所で改良した種豚の高い繁殖能力や産子の発育能力を子豚に伝えるために,優良種豚の払下げを行い,県内飼養豚の改良を促進する。

方法

 系統造成過程で選抜にもれた豚の中から体型や繁殖能力を考慮して選んだ種雌豚20頭,種雄豚5頭を飼養して繁殖を行い,生産された子豚より選抜して,4ヶ月齢から8ヶ月齢くらいまでの育成豚の払下げを行った。また,繁殖成績を調査して,豚の繁殖能力を把握し,繁殖性の良い血統を中心に改良増殖を進めた。

成果・評価

 育成豚は雌91頭を12戸の農家に払下げた。繁殖成績は,38腹の分娩があり,哺乳開始頭数は364頭,離乳子豚数は309頭,育成率は94.8%,1腹あたりの分娩頭数は9.6頭であった。
 繁殖成績は繁殖性の良い母豚を中心に利用したことにより,昨年度と同様の結果が得られた。ただし,育成率が1.9%低下したので,哺乳豚の管理を徹底する必要がある。

系統豚維持試験

期間・区分

昭和62年度~,県単

背景・目的

 大ヨークシャー種系統豚「ローズW-2」を本県の銘柄豚肉である「ローズポーク」の基礎豚として,農家に供給するために,近交係数の上昇をできるだけ抑えて,長期間にわたり利用可能な維持,増殖を進める。

方法

 所内の維持施設で飼養する系統豚「ローズW-2」種雄豚7頭,母豚30頭を用いて繁殖を行い,生産した育成豚の中から更新に用いないものを県内養豚生産者へ払下げた。繁殖成績及び育成豚の主要形質の成績や集団の遺伝構成について測定,算出して,維持群の能力を調べた。

成果・評価

 育成豚は雄14頭,雌1頭の合計15頭を11戸の農家に払下げた。繁殖成績では,30腹の分娩があり,育成率は90.3%であった。昨年度比では,分娩腹数が7腹減ったが,育成率は2.0%上昇した。血縁係数は30.96,近交係数は11.62となった。昨年度比で血縁係数は0.62上昇,近交係数は0.02の上昇にとどまったのは,繁殖豚の更新を種雄豚1頭だけにしたことによる。今後は,繁殖豚の更新を抑えながら,維持増殖を進める。

体細胞クローン技術の高度化及び遺伝子組換え豚の維持・保存に関する開発研究

期間・区分

平成19年度~,受託

背景・目的

 医療用として開発された遺伝子組換えした豚(TG豚)の2種類の遺伝子(hDAF,Endo Gal C)をホモ化するために交配を繰り返し,移植医療用のモデル豚の増殖技術の確立を目指す。

方法

 (独)農業生物資源研究所で作出された遺伝子組み換え豚の後代種豚を導入して,遺伝子型をホモ化したものが産出されるように交配を行い,産子の遺伝子型を判定して,ホモのものを臓器移植の試験に用いた。さらに試験に使わない豚の中から繁殖に適しているものを選抜して,最終的には2種類の遺伝子をホモで持つ種豚をつくる。

成果・評価

 22年度は8腹分娩して70頭生産した。遺伝子判定の結果より臓器移植に適した5頭を試験に供するために名古屋大学に提供した。2種類の遺伝子を持つ中から繁殖に使うために5頭を育成している。遺伝子のホモ化を行うとともに,遺伝子組換えブタ増殖技術の確立を目指す。

養豚研究所 飼養技術研究室

養豚における飼料用米給与技術の確立

期間・区分

平成21~22年度,県単

背景・目的

 わが国の飼料自給率は低く,近年の輸入穀物価格の高騰は畜産農家経営を圧迫している。一方,休耕田を利用した飼料用米の生産が推進されており,飼料自給率向上のための取組として,飼料用米の肥育豚への給与が豚肉の生産性や品質に及ぼす影響について検討した。

方法

 試験区1はローズポーク用配合飼料に飼料用米(粉砕玄米)を重量比10%代替したもの,試験区2は一般配合飼料に同じく10%代替したもの,対照区には配合飼料のみを,肥育後期2カ月間給与した。検査項目は,1日平均増体重(DG),飼料要求率,消化試験,枝肉検査,肉質検査(ロース部分の水分含量,保水力,加熱損失,pH,肉色。背脂肪内層の脂肪融点,脂肪色,脂肪酸組成)を実施。また,官能評価試験を一般パネラー50人で実施した。

成果・評価

 飼料用米を代替配合した飼料は,嗜好性が良くDGも良好であった。一方,と体長が短くなり脂肪が厚くなったことから過肥が危惧された。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の割合に差は見られなかったが,食味が良くなるといわれているオレイン酸の割合は高くなる傾向が見られ,軟脂の原因の一つとされているリノール酸の割合は低くなり,豚肉の品質の向上が期待された。また,官能評価試験では,総合判定で各年代とも一定の評価が得られ,飼料用米の利用性が認められた。

デュロック種の生産性向上のための肢蹄評価確立試験

期間・区分

平成22~25年度,県単

背景・目的

 デュロック種の種豚肢蹄改良において,他品種の肢蹄評価スコアにあてはめられない部分が多い。そこで,強健性のある肢蹄データの収集し,その結果により肢蹄評価方法を確立し,デュロック種の種豚肢蹄改良に資する。

方法

 現在当所で飼養中のデュロック種種豚(雄12頭,雌23頭)をストールに閉じこめ,出来るだけ正しく立たせ,前貌,後貌,側貌,蹄を写真撮影し,肢蹄の形状,豚の姿勢,爪の形状,蹄の接地角度,つなぎの床面に対する角度等を測定した。

結果・評価

 前貌:前肢は平均的には脇間・肘節間・蹄間の順に広がった形であったが,個別には肘節間や蹄間の狭いものや蹄間が極端に広いものもあった。
 後貌:後肢は平均的には飛節から下はほぼ垂直であったが,又間や飛節間が極端に狭い個体があった。
 前肢側貌:平均的には肩長のほぼ中央に肘節前部,蹄後部が位置していたが,肘節をかなり後方に引くものや反対にほとんど肩前の位置に蹄を置くものもあった。
 後肢側貌:平均的には尻長のほぼ中央に蹄後部が位置し,そのやや前に飛節前部は位置していたが,爪先が尻前よりもかなり前に付き,不安定な個体があった。
 蹄の接地角度;蹄の床面との角度は,前肢46.1°,後肢41.6°で,特に後肢の蹄接地角度23.6°しかないものがであった。
 ストール内で豚を正しく立たせることは難しく,写真だけの測定では肢蹄を性格に評価できなかった。

遺伝子技術を活用した豚の改良育種の試験研究

期間・区分

平成20~22年度,国補

背景・目的

 これまでデュロック種は体型や増体などの表現型によって選抜されてきたが,,ゲノム解析情報を利用した改良を加えることによりさらに効率的な選抜が期待できる。そこでQTL情報を活用してデュロック種における3つの量的形質遺伝子座(Mx1:抗病性に関与,FSHR:産子数に関与,Tubby:筋肉内脂肪含量に関与)の遺伝子型と表現型との関連性を調査し有効性について検討した。

方法

 はじめに平成20年度導入豚,平成21年度導入豚および既存の場内飼養豚についてMx1,FSHR,Tubby遺伝子型の検査を行い,これらから生産したデュロック種89頭,三元交配豚99頭についてTubby遺伝子を診断するとともに産肉性および筋肉内脂肪含量等の肉質検査を実施した。

成果・評価

 Mx1遺伝子とFSHR遺伝子については多型性が低かったためMx1遺伝子は容易に欠損型の排除が可能でありFSRH遺伝子は排除できないことが判った。Tubby遺伝子型については,デュロック種で多型性が認められたため,デュロック種と三元交配豚にTubby遺伝子型と産肉性,筋肉内脂肪含量を含むいくつかの肉質検査項目との関連性を調査したが,各遺伝子型と表現型との関連は認められなかった。輸入凍結精液はそれぞれAA型,AG型,GG型であったと推察されたことから,Tubby遺伝子それぞれの遺伝子型を作出するために輸入凍結精液を利用することは有用であると考えられる。

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