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更新日:2018年3月23日

平成25年度年報

畜産センター本所

肉用牛研究所

養豚研究所

畜産センター本所 先端技術研究室

牛受精卵移植技術を利用した牛白血病ウイルス伝搬防止に関する研究

期間・区分

平成24~27年度,県単

背景・目的

 牛白血病の全国の発生件数は1998年で99頭であったものが,2012年には2,090 頭まで急激に増加している。牛白血病は感染すると発症率は低いが無症状の牛が感染源になるため,適切な管理をしないと農場内に蔓延し,高度汚染農場となる可能性がある。近年,乳牛へ黒毛和種の受精卵移植において,BLV感染代理母乳牛から陽性黒毛和牛子牛が生産される可能性も指摘されている。受精卵移植技術は受精卵の洗浄処理によりBLV陰性子牛が生産できる利点があり,この技術を活用したBLV清浄化方法の確立が求められている。繁殖技術におけるウイルス伝搬リスクを明らかにし清浄化対策が確立されることによって,受精卵移植技術の高度化・普及に貢献する。

方法

 感染牛の卵胞液,受精卵,子宮灌流液等のBLV遺伝子量の調査および,垂直感染防除実験によって胚移植技術におけるBLV感染リスクを明らかにし総合的な清浄化対策を検討する。

成果・評価

 牛白血病陽性母牛とその産子を用いて,血液,羊水,初乳および常乳を採取し、含まれる牛白血病ウイルス遺伝子を定量した。

 200μlの全血を用いてDNAを抽出した結果,陽性母牛では約2000コピー/100μgのBLVが検出された。また,親子分離した新生子牛では検出されず,リアルタイムPCR法による検査で陽性母牛および新生子牛の感染十強を早期に診断できることが示された。

牛体細胞クローン胚の効率的な作出技術の確立に関する研究

期間・区分

平成22~24年度,県単

背景・目的

 体細胞クローン胚の作出率が低い原因の一つとして胚の発生段階におけるDNAのメチル化の異常が指摘されている。牛クローン胚については,あるDNA領域において異常に高いメチル化状態であることが報告されており,クローン胚のメチル化状態とクローン胚・クローン産子の異常との関連性を指摘する報告もある。よって,体細胞核移植においてドナー細胞及び核移植後のクローン胚の培養液中にDNA脱メチル化剤及びHDAC阻害剤を添加することにより,胚盤胞発生率を向上させ,正常なクローン牛の作出率を向上させる。

方法

 黒毛和種の体細胞クローン胚を作製する際,核移植用の卵子,ドナー細胞,または核移植直後のクローン細胞について,培養液にDNA脱メチル化剤およびHDAC阻害剤を加え,胚盤胞への発生率および胚盤胞期総細胞数などを調査する。

成果・評価

体細胞核移植の基本技術を整えるため,核移植に用いると場由来卵子の成熟培養条件や細胞準備法を検討した。また,単為発生において,培養液にDNA脱メチル化剤およびHDAC阻害剤を加え,胚盤胞への発生率を調査した。

メラトニン濃度を指標とした牛の卵巣機能解析法に関する研究

期間・区分

平成22~26年度,国補

背景・目的

近年,受胎率の低下が深刻化し畜産経営を圧迫する大きな要因となっている。メラトニンは脳内ホルモンのひとつで,睡眠調節や抗酸化作用,卵巣機能との関係等が注目されている。また,メラトニンの投与によって妊娠率が向上することなども知られており,本試験ではこのメラトニンが牛の繁殖成績にどう影響を与えるのか解明し,牛の繁殖性の改善に活用していくことを目的とする。平成24年度は特に牛における血中メラトニン濃度と採卵成績との関係および体外受精時のメラトニン添加が胚発生率に及ぼす影響について検討した。

方法

 黒毛和種雌牛の血中メラトニン濃度は,自然光条件下で日南中時,日入,日入4時間後に採血,RIA法で測定し,採卵成績(正常卵率,変性卵率等)との関係を比較した。採卵のスケジュールは,過剰排卵処置を発情後5~9日目にFSH(アントリンR:共立製薬株式会社)12~18AUを4日間漸減投与し,PGF2α(プロナルゴンF:ファイザー株式会社)35mgを朝夕に分けて投与した。
 また,と場卵巣よりAランクの卵子のみ回収,定法に従って体外受精を行い,胚発生段階裸化受精卵培養液(IVD101 (株)機能性ペプチド研究所)にメラトニン 0.1ng/ml,1.0ng/ml,10ng/mlを添加し,卵割率および胚発生率を算出した。結果についてはχ2検定により統計処理を行った。

成果・評価

 血中メラトニン濃度と採卵成績との比較では,個体差が大きく有意な相関性は認められなかったものの,メラトニン濃度が高いほど,正常卵率が高く,変性卵率が低い傾向がみられた。体外発生培地へのメラトニンの添加試験では,有意差は認められなかったものの,胚発生率が対照区,メラトニン添加0.1ng/dl区,1.0ng/dl区,10ng/dl区でそれぞれ31.8%,61.1%,31.8%,40.0%,となり,メラトニン添加0.1ng/dlで卵割した受精卵のその後の胚発生率が高くなる傾向を示した。以上より,メラトニンが牛受精卵の品質に関与している可能性が示唆された。

牛の受精卵移植技術の普及定着に関する研究~β-カロテンの添加が採卵成績へ及ぼす影響について~

期間・区分

平成2年度~,県単

背景・目的

近年,牛の繁殖機能低下が問題となっている。その原因として様々な要因が考えられるが,その一つにビタミンの不足があげられる。

分娩前後の初妊牛への,β-カロテン添加によって血中のβ-カロテンおよびビタミンA濃度の上昇が認められ,また血中のβ-カロテン濃度が高い牛については採卵成績(回収卵数,正常卵数)が高くなる傾向がみられた。この結果を受けて,短期給与(14日間)における血中のβ-カロテンおよびビタミンA濃度と採卵成績との比較をおこなったが,相関性はみられなかった。今年度においては,β-カロテンの長期給与を行い,血中のβ-カロテンおよびビタミンA濃度と併せ,血清生化学検査の成績(T-CHO,Glu,BUN,ALT,AST,CRE,)採卵成績について調査し,β-カロテン添加が採卵成績に与える影響,効果的な給与期間についてのさらなる検討を行い,繁殖性の改善をはかることを目的とする。

方法

当センター飼養の供卵牛(黒毛和種)10頭を供試牛とし,過去の採卵成績より対照区,βカロテン添加区の2区に分類した。採卵のスケジュールとしては,過剰排卵処置(SOV)を発情後5~9日目にFSH(アントリンR:共立製薬株式会社)12~18AUを4日間漸減投与し,PGF2α(プロナルゴンF:ファイザー株式会社)35mgを朝夕に分けて投与した。試験牛には,β-カロテン添加剤(β-ブリードSP:日本全薬工業株式会社)を採卵42日前から配合飼料に50g/日添加し,給与を行った。採血は試験区は給与開始時,SOV 開始時,採卵時の計3回,対照区はSOV開始時,採卵時の計2回行い,血清中のβ-カロテンおよびビタミンA濃度を測定し,推定黄体数,回収卵数,正常卵数との比較を行った。

成果・評価

 血中のβ-カロテンおよびビタミンAの濃度と採卵成績の関係性については個体差が大きく,本試験では相関性はみられていない。血中のβ-カロテンおよびビタミンA濃度は有意差はなかったものの,β-カロテン添加区は対照区と比較し高い傾向にあった。H25年度には,さらなる例数の確保およびβ-カロテン添加剤の最適は給与期間,給与量の検討していく。

畜産センター本所 環境保全研究室

肥料価値を高める家畜ふんたい肥化技術の開発

期間・区分

平成23~25年度,県単

背景・目的

 亜酸化窒素の発生を抑制し、堆肥中に亜硝酸態窒素として保持することにより、地球温暖化防止と合わせて窒素含量を高めた肥料価値の高い家畜ふん堆肥を生産して利用促進を図る。

方法

 約4tの豚ふんと750kgのおがくずを混合し、約2tの混合堆積物を2つ作成して、亜硝酸酸化細菌添加による亜硝酸酸化促進法を用いた堆肥化試験を実施した。農研機構畜産草地研究所内の堆肥化施設において、7月から試験を開始した。2つの堆積物を試験開始当初は1週間間隔で、その後2週間間隔で切り返して16週目(11月2日)に堆肥化試験を終了とした。堆積から6週目に戻し堆肥を試験区表面に散布し、堆積物中の無機態窒素及び硝化細菌数の動態を調査した。

成果・評価

  1. 試験開始後6週間で堆肥温度上昇がみられなくなり、亜硝酸態窒素の蓄積及び亜硝酸酸化細菌が出現した。
  2. 戻し堆肥添加後、試験区で、アンモニア態窒素は対照区より早く減少し、亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素は対照区より2週間早く増加した。
  3. 試験終了時の硝酸態窒素含量は、試験区で対照区より27%多く、全無機態窒素含量は、試験区で対照区より34%多かった。
  4. 硝化細菌数は試験区と対照区で差はみられなかった。
  5. 戻し堆肥の表面添加により窒素含量の高い豚ぷん堆肥を製造できる。

家畜ふん堆肥の速効性肥料効果の解明と実用化技術の開発

期間・区分

平成22~25年度,国補

背景・目的

 生産現場での安定した家畜ふん堆肥の利用を進めるために、たい肥中の速効性肥料成分(窒素)を解明し、実用化を考慮した速効性肥料窒素も簡易測定法を開発する。さらに、施肥設計システムに反映させる等の実用化技術を開発する。

方法

  1. 速効性肥料効果の解明
    • 家畜ふん堆肥中の無機態窒素(アンモニア態窒素および硝酸態窒素)の成分含量を測定し、畑状態保温静置法により、家畜ふん堆肥の畜種別・製造法別にタイプ分けを行い、土壌中での変動を確認し、速効性肥料効果(窒素)を解明する。
    • また、栽培試験により、速効性肥料効果を解明する。
  2. 速効性窒素簡易分析法の開発
    • 生産現場での速効性肥料効果を考慮した施肥設計の導入を可能にするための、簡易測定方を確立する。

成果・評価

  1. 速効性肥料効果の解明
    • 無機化率測定のため、畑状態保温静置法により培養試験を実施。特徴的なパターンとして、無機態窒素のまま推移するパターン、無機態窒素がだんだん増加するパターン、一度有機化してから無機化するパターン、有機化のみのパターンの4つに分類できた。
    • しかし、畜種・製造方法別には言っての傾向がなく分類できなかった。
  2. 速効性窒素の簡易測定法の開発
    • 下記の条件で測定可能であることがわかった。
      • 抽出液:2%クエン酸溶液
      • 抽出時間:10分~60分
      • 抽出温度:20度~30度
      • 抽出固液比:1/100~2/100
      • 簡易測定機器:RQフレックス・パックテスト

畜産排水活性汚泥処理施設における窒素・リン除去のための研究

期間・区分

平成24~27年度,県単

背景・目的

 家畜排せつ物の多くは固形物と液状物に分けられ処理がなされており,うち液状物は浄化放流のほか、蒸発散や液肥として利用されている。一方、県内の環境負荷低減が求められていることから、液状物からのリン回収技術の研究を行い環境負荷低減を図る。

方法

 県内の養豚農家(母豚140頭一貫経営)の浄化施設にMAP回収装置を設置し、マグネシウム溶液を添加せずに5m3/日の原水を処理対象量として平成24年1月13日から同年7月13日までの180日間に運転をおこない、運転期間中の汚水中のpH,水溶性リン濃度,水溶性マグネシウム,水溶性カルシウムおよびアンモニア性窒素濃度を調査した。

成果・評価

  1. MAP反応槽内で汚水を連続曝気することによりpHは7付近から8以上に上昇し、それに伴い、水溶性リン・アンモニア濃度の低下がみられ、MAP反応が進んだことを確認した。
  2. MAP反応槽内の曝気を停止すると、顕著にpHの低下が起こり結晶の溶解が起こるため、継続した曝気が必要である。
  3. 調査期間におけるMAP回収率は年間の計画回収量46kgに対して約10%の回収率であった。
  4. 回収率が低かったのは,網目の細かい部材を使用したため,豚毛等の夾雑物がMAPの付着を阻害したと考えられた。

畜産センター本所 酪農研究室

水田作飼料を活用した優良後継牛の効率的な育成技術の開発

期間・区分

平成23~26年度,県単

背景・目的

 酪農経営における後継牛の確保は,重要な課題で優良後継牛を安定的に生産するため,飼料用米等の水田作の自給飼料を活用した低コストで健全な乳牛の育成技術を検討する。

方法

 ホルスタイン種雌子牛9頭を供試し,自給飼料の給与が発育状況等に及ぼす影響について検討した。圧ぺんトウモロコシ給与を対照区とし,試験区として圧ぺん籾米,圧ぺん玄米,粉砕籾米および粉砕玄米を給与した飼養試験を行った。調査項目は日増体量,乾物摂取量,下痢日数,糞便スコア,および初回種付け月齢および初産分娩月齢とした。

成果・評価

 日増体量は,粉砕玄米区に比べトウモロコシ区で安定的に高い傾向を示した。7週齢までの乾物摂取量についても,トウモロコシ区で同様に高い傾向がみられた。また,籾米および玄米はいずれも粉砕に比べ圧ぺん処理により発育が良好であった。初回種付けおよび初産分娩月齢は給与飼料による違いはみられなかった。下痢日数及び糞便スコアについては,試験区間に差はみられなかった。

酪農経営における未利用資源の敷料利用法の検討

期間・区分

平成22~24年度,県単

背景・目的

畜産業において主要な敷料であるおが粉等の木質系資材の需給が逼迫し,これに変わる新たな敷料資材の開発が求められている。そこで生竹粉およびペーパーシュレッダーダスト(PSD)をはじめとする未利用資源の敷料利用を検討する。

方法

 数種類の未利用資源を副資材として用いた堆肥化試験を実施し,発酵温度や水分の推移を調査するとともに有機物分解率や乾物分解率等を調査する。また,フリーストール,繋留式及びカーフハッチにおいて,敷料利用及び堆肥化に関する実証試験を実施する。

成果・評価

 堆肥の副資材として使用した場合の生竹粉の有機物分解率および乾物分解率はおが粉と同等であり,PSDはもみ殻と同等であった。また,PSDは吸水力が高く,水分含量が高くなると密度が増加し,団塊を形成しやすい。そのため,糞尿の量が多くないカーフハッチでは除糞作業が簡便となりであることが示された。

飼料用米等水田を活用した乳牛の飼養管理技術の開発

期間・区分

平成22~26年度,独法委託

背景・目的

 飼料自給率の向上を図るため,飼料用米や稲WCS等の水田作飼料の給与が離乳子牛や育成牛の発育・生理性状に及ぼす影響を解明し,乳用牛への効率的な給与技術を開発する。

方法

 離乳子牛(8週齢)の目標日増体量を0.90kgとして,必要な飼料の75%を人工乳,残りをチモシー乾草で給与する場合に,人工乳の40%を圧ぺんトウモロコシで給与するK区と,K区のトウモロコシを粉砕(3mmメッシュ)した飼料用玄米で置き換えるG区,圧ぺんした飼料用玄米で置き換えるFG区の3試験区として飼養試験を実施した。調査項目は,日増体量,乾物摂取量,血液性状及び糞便スコアとした。

成果・評価

 日増体量及び糞便スコアでは,3試験区に有意な差はみられなかった。乾物摂取量については,G区で粗飼料の摂取が高まった影響により高くなる傾向を示した。血液性状では,13週齢のG区で他の2区と比べてBUNが高くなったことから,粉砕した飼料用玄米では第一胃内でのデンプン利用性が圧ぺん加工した他の2区と異なる可能性が考えられた。

(6県協定研究,供試頭数30頭分)

乳牛における高機能性添加物の給与による繁殖性改善に関する研究

期間・区分

平成24~26年度,県単

背景・目的

異なる生育ステージの泌乳牛への機能性物質の給与が,繁殖性および卵巣機能へ及ぼす影響を解明し,高泌乳牛の泌乳能力を最大限に発揮させつつ繁殖性を改善する栄養管理技術を開発する。

方法

 初産牛でのアスタキサンチンによる繁殖性改善効果を検討するため,分娩予定日4週前からアスタキサンチンを給与し,分娩前後の血液性状や分娩後の繁殖性および産乳性等への影響を調査した。

 経産牛では分娩前後のサイトカインおよびエンドトキシンの動態の解析および泌乳中後期牛へのアスタキサンチンおよびラクトフェリンの給与がサイトカインおよびエンドトキシン濃度に与える影響を調査した。また,アスタキサンチン給与による採卵成績への影響も検討した。

成果・評価

 初産牛ではアスタキサンチン添加区により初回発情が早まり,受胎まで日数が短縮される傾向がみられた。アスタキサンチン給与による採卵成績への影響はみられなかった。経産牛ではアスタキサンチン,ラクトフェリンを混合したサプリメントを分娩後16週目までの長期間給与した結果,サプリメント給与無しの場合と比べて第一胃内のエンドトキシン濃度上昇を抑制する効果がみられた。

(初産牛7県協定研究,経産牛5県協定研究)

乳用牛におけるグルタチオンを活用した肝機能改善による繁殖成績向上技術のための試験研究

期間・区分

平成24~26年度,国補

 

背景・目的

生体内の主な抗酸化物質であり,肝機能改善効果が示唆されているグルタチオンに着目し,肝機能と卵巣機能の低下要因について,そのメカニズムを解明し,併せて,グルタチオンを活用した肝機能の維持・改善による繁殖成績向上技術を開発する。

方法

ホルスタイン種泌乳牛8頭(初産牛3頭,経産牛5頭)を供試した。分娩前後における一般血液成分および抗酸化能,ホルモン(プロケゲステロン,IGF-1等)濃度の血中動態について解析した。分娩後の発情回帰日数および授精回数,受精率等の繁殖成績を調査した。

成果・評価

飼養条件を同じにしても分娩後の発情回帰の遅延が生じることを確認し,発情回帰早期群(4頭)と遅延群(4頭)に分け,分娩前後の血液性状の調査を行った。発情回帰遅延群では,分娩前から総コレステロール濃度が低く推移した。また,分娩後の卵巣機能の低下には肝臓機能の低下が関連することを明らかにした。

畜産センター本所 飼料研究室

地域特性を活用したイタリアンライグラス新品種の育成・利用法の検討

期間・区分

平成23~25年度,受託

 

背景・目的

温暖地の栽培条件及び利用形態に適応する高糖分・高TDN新品種の育成を行い,自給飼料の生産性向上を図る。

方法

糖分含量およびTDN含量に優れるイタリアンライグラス育成系統「友系31号」について、収量性等の特性を評価する。

成果・評価

 地域適応性検定試験全場所の3カ年平均値において、「友系31号」の出穂始日は4月24日で「はたあおば」と同程度であった。「友系31号」の倒伏程度は2.6であり、「はたあおば」より大きく、「タチワセ」より小さかった。「友系31号」の乾物率は「はたあおば」よりやや高い傾向にあった。「友系31号」の乾物収量は、1番草は「はたあおば」比99、合計では「はたあおば」比103であった。「友系31号」の推定TDN含量は、1、2番草ともに「はたあおば」より1.6ポイント、「タチワセ」より2.7ポイント高かった。2カ年平均の「友系31号」の推定TDN収量は、1番草は「はたあおば」比102、合計では「はたあおば」比106であった。

牧草優良品種選定試験

期間・区分

平成23~26年度,受託

 

背景・目的

温暖地の栽培条件及び利用形態に適応する新品種の比較試験を行い,自給飼料の生産性向上を図る。

方法

トウモロコシ5品種、イタリアンライグラス6品種を供試、収量,熟期,耐病性,耐倒伏性を調査した。

成果・評価

 トウモロコシについては、絹糸抽出期はゆめそだち、ZX7956、P2023が早く(8月4日)、KD777NEWがもっとも遅かった(8月9日)。乾物総重(kg/a)はP2023が最も高く(249.2)、次いでゆめそだち(222.8)、ZX7956(214.5)の順であった。TDN収量に影響を及ぼす乾雌穂重(kg/a)はP2023が最も高く(113.7)、次いでゆめそだち(108.1)、ZX7956(94.6)の順であった。

 イタリアンライグラスについては、1,2番草合計収量(kg/a)は、早生4品種の中ではいなずまが最も高く(134.4)、次いでワセアオバ(133.5)、タチワセ(129.0)の順であった。晩生はタチサカエ(146.9)、ヒタチヒカリ(142.3)であった。

エコフィード利活用試験

期間・区分

平成23~26年度,県単

 

背景・目的

農産物残さの未利用資源について,安全性,栄養特性を考慮しつつ,安価な飼料化及び保存技術の確立を図る。

方法

レンコンサイレージ調整時にビートパルプを添加してサイレージを調製、給与試験に用いた。

成果・評価

給与試験に使用するレンコンサイレージ(レンコンを予乾したものおよび無予乾で水分調整用にビートパルプを添加したもの)を合わせて約340kg作成した。

畜産センター本所 養鶏研究室

地鶏供給事業

期間・区分

平成20年度~,県単

背景・目的

 本県の地鶏である「奥久慈しゃも」,「つくばしゃも」等の原種鶏や種鶏を維持・保存し,地鶏の種鶏を供給する。

方法

原種鶏の維持

  • 「奥久慈しゃも」原種鶏3系統を維持

(しゃもJ系統,名古屋種T系統,ロードアイランドレッド種L系統)

  • 「つくばしゃも」原種鶏1系統を維持

(しゃもZ系統系)

日本鶏13品種を維持

成果・評価

  1. 奥久慈しゃも種鶏ひなの供給
    • しゃもJ系統雄ひな 150羽
    • TL系交雑雌ひな 1,200羽
  2. つくばしゃも
    • しゃもZ系統大ひな  150羽

地鶏の遺伝子ホモ化に伴う不良形質発現抑制技術に関する研究

期間・区分

平成23~27年度,国補

背景・目的

 地鶏生産用として維持している種鶏群のふ化率,DNA多型(多様性)等を調査することで近交退化のメカニズムを解明するとともに,不良形質の発現(生産性の低下)を抑制する最適な維持,交配方法を開発する。

 優良形質をもった種鶏群を長期維持することが可能となり奥久慈しゃもなど本県独自の特徴ある地鶏の安定的な生産につなげる。

方法

  1. 試験計画
    • 供試品種 奥久慈しゃも原種鶏(しゃも,名古屋種,ロードアイランドレッド種L系)
    • 交配試験区分
      1. 試験区A(分割集団交配区)
      2. 試験区B(試験羽数増加+凍結精液活用区)
      3. 対照区 
  2. 調査項目
    • 近交退化パラメーター(受精率,ふ化率,発育体重)
    • マイクロサテライトマーカーによる対立遺伝子数,ヘテロ接合率
    • 1世代当たりの近交係数上昇割合

成果・評価

  • 試験交配 試験区A(雄40,雌86羽)試験区B(雄53羽,雌132羽)対照区C(雄40,雌132羽) 合計483羽
  • 凍結精液による生産(雄37羽、雌42羽)
  • ふ化率,受精率調査
    • 試験区A:72.1%,76.6%,試験区B:69.7%,75.8%,対照区:71.9%,80.7%
  • 遺伝子解析:「国際動物遺伝学会」推奨の28マーカーを解析 解析結果(しゃも)
    • 平均対立遺伝子数 「1.84」多様性低下傾向(参考:他系統しゃも1.53~4.35)
    • 平均へテロ接合率 「26.4%」多様性低下傾向(参考:他系統しゃも19.8~62%)

納豆乾燥粉末のプロバイオティクス効果に関する研究

期間・区分

平成23~25年度,県単

 

背景・目的

 納豆にはプロバイオティクスによる整腸作用があることが知られており,豚においても納豆給与によって腸内細菌叢が安定し,医薬品によらず下痢の発生が減少し生産性が向上することが報告されている。
 こうしたことから採卵鶏において育成期および成鶏期に納豆乾燥粉末給与を行った場合の飼養成績や腸内環境に及ぼす影響について検討し,育成率・飼養成績の向上や未利用資源の有効活用につなげる。

方法

  1. 試験計画
    1. 供試品種 ジュリア
    2. 試験区分
      • 納豆区
      • 微生物製剤区
      • 対照区
  2. 調査内容
    1. 生理的影響:糞便の細菌調査・pH
    2. 生産性:育成率・産卵開始時期・産卵率・増体重・卵質
    3. 飼養環境改善:排せつ物中のアンモニア発生量

成果・評価

  1. 育すう期からの給与で有用腸内細菌が増加傾向
  2. 成鶏期の給与で,特に暑熱期の産卵率低下を抑える傾向あり

養鶏場におけるアニマルウオッチセンシングシステムの確立

期間・区分

平成24年度,独法委託

 

背景・目的

 鶏に装着する小型無線センサにより,体温と運動量の変化を早期に検知し,鳥インフルエンザ等感染症を早期に発見することで,家畜疾病の拡大を未然に防止するシステムの開発を目的としているが,実用化のためには,養鶏現場における端末の長期信頼性とシステム管理への有効性を検証する必要がある。

方法

 無線センサ端末を200羽の採卵鶏に3ヶ月以上装着し,センサシステムにより鶏体温と運動量のデータ収集を行う。また,同時に試験鶏の産卵率,飼料効率及び卵重を記録し,生産性への影響を確認する。

成果・評価

 無線センサ端末を装着した試験鶏200羽は,脱落せずに7ヶ月間の装着が可能であり,センサシステムにより200羽分の鶏の体温と運動量のデータ収集も可能であった。また,産卵率,飼料効率及び卵重から,飼養管理に異常は見られず,生産性に影響は認められなかった。

肉用牛研究所 改良研究室

牛改良事業

期間・区分

昭和27年度~,県単

背景・目的

 優良種雄牛を適正に飼養管理し,優良な凍結精液の生産と譲渡を行う。

方法

 種雄牛及び候補種雄牛を繋養し,精液を採取して凍結した。このうち,検査に合格したものを保存し,希望に応じ県内に譲渡した。

成果・評価

 候補種雄牛を含め17,206本を生産し,9,925本を譲渡した。譲渡した精液は,全て北国関7であった。

肉用牛広域後代検定推進事業(直接検定)

期間・区分

平成11年度~,県単

背景・目的

 肉用牛の改良を図るため,肉用牛広域後代検定推進事業により選定された基礎雌牛へ基幹種雄牛を指定交配し,生産された雄子牛を選定し飼育検定する。

方法

(社)全国和牛登録協会で定める産肉能力検定直接法に基づいた。

成果・評価

  1. 検定を行った3頭の1日平均増体量の平均は,1.18 kg/日であった。
  2. (社)全国和牛登録協会が定めた体高値による3頭の発育判定は3であった。
  3. 茨城県肉用牛育種改良推進協議会専門部会で審査した結果,「相川6」「平勝」「塙桜2012」を選抜した。

肉用牛広域後代検定推進事業(後代検定)

期間・区分

平成4年度~,県単

 

背景・目的

直接検定により選抜された候補種雄牛の現場後代検定を実施し,優秀な種雄牛を選抜する。

方法

(社)全国和牛登録協会で定める産肉能力検定(現場後代検定法)に基づいた。

 

  1. 検定場所数:2場
    • 茨城県畜産センター肉用牛研究所
    • 全国農業協同組合連合会茨城県本部肉用牛哺育育成センター
  2. 供試牛頭数
    • 概ね15頭/1種雄牛
  3. 出荷月齢
    • 雄去勢 29か月齢未満
    • 雌 32か月齢未満

成果・評価

 候補種雄牛「福茂光」,「塙平茂」の産子について検定を終了した。枝肉成績を検討した結果,枝肉重量及
び脂肪交雑の推定育種価(BMS)が県能力評価基準値に対して「福茂光」が+97.254,-0.047,「塙平茂」が
+61.706,-0.146となり,茨城県肉用牛育種改良推進協議会で選抜について決定する。

デルタ6デサチュラーゼ遺伝子多型と黒毛和種のおいしさに関する研究

期間・区分

平成23~27年度,国補

背景・目的

 本県和牛において,不飽和脂肪酸であるアラキドン酸がおいしさに大きく影響しているとされるが,このアラキドン酸の生成酵素であるデルタ6デサチュラーゼ,エロンガーゼ,及びデルタ5デサチュラーゼを発現する遺伝子座は未解明なため,この遺伝子多型を解析し,アラキドン酸に関する成績との比較から,遺伝子に基づく能力評価法を確立し,本県和牛集団の改良を促進する。

方法

  1. デルタ6デサチュラーゼ遺伝子(肉のうま味成分であるアラキドン酸の生成に関する遺伝子)の遺伝子座の解明のため,これについてダイレクトシークエンス法(増幅したDNAを直接解析し塩基配列を決定する方法)により塩基配列を解析し,変異部である一塩基多型(SNP)を同定した。
  2. デルタ6デサチュラーゼ遺伝子では新規に塩基多型部位解析用プライマーを設計し,検出条件を検討した。
  3. エロンガーゼ遺伝子については塩基配列解読のため遺伝子の14の領域についてプライマーを設計した。

成果・評価

 デルタ6デサチュラーゼ遺伝子では塩基配列を解読し,翻訳領域にあるエキソン2,エキソン7の変異部である遺伝子多型領域SNPを黒毛和種における多型領域と同定した。この2カ所についてPCRを行うためのプライマーを設計した。またPCRによる遺伝子断片の増幅に最適な反応条件,プログラムを検討した。PCR試薬をTAKARABIOのエメラルダとし,エキソン2では98℃10秒,(98℃10秒,65℃30秒,72℃30秒)×35サイクル,4℃維持とし,エキソン7では98℃10秒,(98℃10秒,63℃30秒,72℃30秒)×30サイクル,4℃維持をPCR増幅の最適条件とした。エロンガーゼ遺伝子については翻訳されるタンパク質との比較によりエキソン8からエキソン1へ翻訳されることが判明した。

肉用牛研究所 飼養技術研究室

茨城県における黒毛和種繁殖牛の周年放牧実証試験

期間・区分

平成23~27年度

背景・目的

 近年,低コストで省エネルギーな飼養管理方法として放牧が見直されている。しかし,草地の放牧利用は,春から秋にかけてにとどまり,秋から春にかけては牛舎で飼養する飼養形態が一般的である。
 そこで,一層の省力化・低コスト化を図るため,簡易に放牧期間を延長できる方法を複数検討し,その最適な組み合わせによる周年放牧技術を開発する。

方法

  1. 放牧利用後の耕作放棄地等へ牧草(ライムギ)を追播導入する効果の検討
    1. 試験区:播種時期(9月13日,10月10日及び10月25日)と鎮圧の有無を組み合わせた区を設定した。
    2. 播種量及び施肥量:8kg/10a散播  播種時オール14化成(N:6kg/10a)を散布した。
  2. 水田の冬季放牧地としての利用性の検討。
    • 常陸太田市の水田5カ所でひこばえ(うるち米,もち米及び飼料用米)の収量を調査した。
  3. 秋期備蓄草地(ASP)を利用した冬季放牧の検討
    1. 放牧牛:黒毛和種繁殖牛(経産牛)3頭(1群)
    2. 備蓄期間:8月中旬から11月中旬
    3. 放牧期間:11月中旬の草地の乾物収量および日本飼養標準肉用牛(2008年版)から試算した。

成果・評価

  1. ライムギは10月中旬(10月10日)に追播すると鎮圧の有無に関わらず被度及び収量ともに良好であった。
  2. ひこばえの収量は圃場,収穫期及び品種による差が大きく,乾物収量は20kg~112kg/10aであった。
  3. 収量は備蓄期間中に乾物で3割程度増加した。草地の利用率は8日間で63.1%(乾物換算)となった。

牛肉のフレーバーリリースプロファイリングと香気マッピングに関する研究

期間・区分

平成23~27年度

 

背景・目的

 肉を食べた時の口中の香り(フレーバーリリース)は肉のおいしさを左右すると言われているが,これまでほとんど研究されていなかった。そこで,機器分析によりフレーバーリリースの成分を検出する手法を開発し,官能検査の結果とあわせて肉のおいしさを科学的に評価する手法を確立する。

方法

 常陸牛と常陸牛でない黒毛和牛及び輸入牛(オーストラリア産)を用い,機械による成分分析と官能評価を行う。

  1. 肉の香り成分の測定 高感度ガス分析装置(ブレスマスR)及びGCMSにより測定した。
  2. 官能評価 去年抽出した肉の匂いの表現をもとに,3種の牛肉の香りを官能審査により評価した。
  3. 肉質(脂肪酸)分析 GCによる

成果・評価

  1. ブレスマス,GCMSともに香気成分を検出し,3種の牛肉の間で差のある部分が認められた。
  2. 主成分分析を行い3種の肉の香りのマッピングを行った。
  3. 脂肪酸については,牛肉の風味に関与するといわれるオレイン酸を中心とした一価不飽和脂肪酸の割合は常陸牛が最も多かった。

シンバイオティクスを利用した哺乳期の黒毛和種子牛の管理技術の確立

期間・区分

平成24~26年度,県単

 

背景・目的

 制限哺乳を利用し,シンバイオティクスをスムーズに黒毛和種子牛に飲ませ,下痢の発生を抑え発育向上を図る技術を確立する。

方法

  1. 供試牛:黒毛和種子牛10頭
  2. 試験内容
    1. 試験期間:生後7日齢 ~ 生後90日齢(離乳時期 生後90日齢)
    2. 試験区分
      • 試験区 シンバイオティクス給与
      • 対照区 シンバイオティクス無給与
    3. 哺乳方法
      • 朝夕各15分の制限哺乳(他の時間は親子分離)
      • シンバイオティクスの給与方法:温湯等に溶かしほ乳ビンで給与。*給与量 10g/日 1日1回給与。
      • その他の給与飼料 スタータ:漸増給与,乾草:飽食
  3. 調査項目
    • 発育成績,離乳時・市場出荷時体重,飼料摂取量,下痢発生状況,糞便スコア,糞便中の菌数

成果・評価

  1. 試験区6頭(雄4頭,雌2頭),対照区2頭(雄2頭)の試験が終了した。シンバイオティクスの馴致は7頭実施し,6頭が自ら飲むようになった。
  2. 下痢の発生回数の平均は,試験区では9回,対照区で19回であった。
  3. 1日平均増体重(D.G)は,試験区の雄が0.84kg/日,雌が0.68 kg/日であり,対照区の雄が,0.94 kg/日であった。
  4. 糞便中の細菌検査は,試験区で大腸菌が少なくなった。
  5. 初回発情回帰日数は,44.4日±25.2日であった。

養豚研究所 育種研究室

デュロック種系統造成試験

期間・区分

平成23~28年度,県単

背景・目的

 養豚農家において肉豚を肥育する際は三元交配豚を肉豚として生産するため,雄系,雌系の品種の総合的な育種改良が必要となっている。

 雌系であるランドレース種,大ヨークシャー種について,本県は全国に先駆け昭和45年にランドレース種の系統造成を開始し,昭和54年には我が国第一号の系統豚として「ローズ」が認定された。さらにその後ランドレース種2系統,大ヨークシャー種2系統を造成してきた。

 これら系統豚は本県の銘柄豚肉であるローズポークをはじめとする高品質豚肉生産の基礎豚として県内で広く利用され高く評価されているところである。

 しかし,本県のデュロック種生産者は高齢化等によって激減しこれらの優良な雌系の系統豚に適合する雄系のデュロック種の安定供給が難しくなっている。

 そこでローズポークをはじめとする優良な三元交配豚を安定的に生産し県内の高品質豚肉の生産性向上を図るため,養豚農家から要望の高い肉質向上や肢蹄の強健性を改良目標に加えたデュロック種系統造成を開始した。

方法

 平成23年度より第一世代の生産・選抜を開始し,以後一年一世代の選抜を繰返して平成28年度に5世代で造成を完了する。集団の規模は雄8頭雌40頭の閉鎖群で選抜形質および改良目標値は一日平均増体重(DG)1000g,飼料要求率(FCR)2.9,筋肉内脂肪含量(IMF)5%と設定した。肢蹄の強健性について第一世代では独立淘汰法により実施する。

 今年度は平成23年度に生産した第一世代候補豚について,体重約30kg時に第一次選抜を実施し一腹あたり雄1頭雌2頭と肉質調査豚2頭(雌,去勢)を選抜した。第二次選抜は体重105Kg時に実施し,雄10頭雌48頭を選抜して交配し,第二世代豚の分娩を開始した。また105kgに達した調査豚より選抜形質である筋肉内脂肪含量を順次測定した。

成果・評価

 平成23年度中に生産された第一世代候補豚364頭について体重約30kg時に第一次選抜を実施し,雄38頭,雌74頭,調査豚79頭を選抜した。このうち検定を終了した雄37頭,雌73頭の一日平均増体重,飼料要求率,筋肉内脂肪含量(調査豚での値)平均値はそれぞれ雄DG 907.3g,FCR 2.74,IMF 4.04%,雌DG 795.8g,FCR 3.16,IMF 3.61%であった。また第二次選抜豚となる雄10頭,雌48頭でのそれぞれの平均値は雄DG 991.5g,FCR 2.73,IMF 4.61%,雌DG 826.2g,FCR 3.14,IMF 3.8%であった。

ローズ改良普及試験

期間・区分

昭和45年度~,県単

背景・目的

 大ヨークシャー種系統豚「ローズW-2」を本県の銘柄豚肉である「ローズポーク」の基礎豚として,平成15年度より農家に供給してきた。長期間にわたり維持,増殖を進めてきた結果,血縁係数が上昇してきているので,種豚の更新を抑えながら斉一性のとれた肉豚生産と高品質豚肉生産を目指す。

方法

 常時種雄豚9頭,種雌豚30頭で維持する。維持施設内において通年自然分娩を行う。交配はできるだけ血縁の遠い種雄豚を用いる。集団の遺伝的構成,繁殖・育成成績,産肉成績などを調査する。維持群の更新に用いない育成豚を養豚農家に譲渡する。

成果・評価

 平成23年度まで血縁の上昇抑制のため,種豚の更新を極力抑えたため,老齢の種豚が増加し,受胎率,分娩頭数などの繁殖成績が低下してきた。平成24年度は雄1頭,雌5頭を育成した。これにより,平均血縁係数は33.92%,平均近交係数は12.60%となった。
 育成豚を養豚農家等15頭(雄12頭,雌3頭)払い下げた。また,人工授精用精液を29本払い下げた。

デュロック種の生産性向上のための肢蹄評価確立試験

期間・区分

平成22~25年度,県単

背景・目的

デュロック種はランドレース種や大ヨークシャー種等と体型がやや異なるため,これまでの肢蹄評価スコアがあてはめられない部分もある。
そこで,デュロック種肢蹄のデータを集積して肢蹄評価方法を確立し,デュロック種系統造成に反映させる。
また,農家自らが肢蹄評価を用いた種豚の選抜を行うことが出来るような簡易型スコアシートを作成することで,生産性向上を目指す。

方法

 当所のデュロック種系統造成試験(G1)の能力検定豚(♂38頭,♀74頭)及び調査豚(去46頭,♀33頭)を用いて,発育調査開始時(35kg時)及び終了時(105kg時)にカナダ豚改良センター方式に準じ,肢蹄の形状及び歩様の状況を調査した。

成果・評価

  1. 前肢の形状
    • 手首は開始時に「標準」が72%で「やや前屈」が13%,「やや鎌状」が15%であったが,終了時は「標準」及び「やや鎌状」が減少し,「やや前屈」が約10%増加した。
    • つなぎは開始時に「やや弱い」61%で「標準」30%,「弱い」6%であったが,終了時は「やや弱い」が15%減少し,「弱い」が10%増加した。
    • 前貌は開始時に「標準」が87%でそれ以外のものは少なかった。終了時は「肢間狭い」,「O型」が若干増加した。
    • ひずめは開始時,終了時とも「標準」が95%前後でそれ以外のものは少なかった。
    • 前肢の着地位置は開始時,終了時とも「標準」が約70%で「やや前」が30%前後であった。
  2. 後肢の形状
    • 飛節は開始時に「やや鎌状」52%,「標準」20%,「やや急勾配」15%であったが,終了時は「やや鎌状」が13%,「鎌状」が4%増加し,「やや急勾配」,「標準」は減少した。
    • つなぎは開始時に「標準」49%,「やや弱い」35%,「やや直立」15%であったが,終了時は「標準」が9%減少し,「やや弱い」,「やや直立」,「弱い」が若干増加した。
    • ひずめは開始時に「標準」が90%,「小さい」が8%であったが。終了時は「標準」が12%減少し,「小さい」,「不揃い」が若干増加した。
    • 後肢の着地位置は開始時に「標準」が64%,「やや前」31%,「前」5%であったが,終了時は「標準」が19%減少し,「やや前」が12%,「前」が6%減少した。
  3. 歩様の状況
    • 歩様が正常なものは開始時が13%,終了時4%でこれ以外のものは何らかの難点があった。
    • 難点は開始時,終了時とも「飛節ひねる」,「後肢堅い」,「尻引く」,「尻やや引く」の順に多くかった。「飛節ひねる」は終了時36%増加し85%のものに見られた,「後肢堅い」は終了時8%減少し34%であった,「尻引く」「尻やや引く」はそれぞれ11%,9%増加し,33%,27%のものに見られた。「後肢回す」も終了時15%のものに見られた。

体細胞クローン技術の高度化及び遺伝子組換え豚の維持・保存に関する開発研究

期間・区分

平成19年度~,独法委託

背景・目的

 独立行政法人農業生物資源研究所で作出された補体反応を抑制するhDAF(human decay accelerating factor)を高発現するブタ(以下hDAF発現ブタ),高コレステロール血症/動脈硬化症を発症するブタ(以下LDLRブタ)の2種類の医療用モデル遺伝子組換えブタ(以下,TGブタ)について,遺伝子のホモ化を行うとともに,小規模集団での遺伝子組換えブタの系統維持法の開発,およびLDLRブタのミニブタ化目指す。

方法

 hDAF発現ブタについては,遺伝子検査によりホモ型またはヘテロ型と判定された後代豚について,育成後,当所飼養の当該遺伝子が組み込まれていないブタと交配し産子の遺伝子発現状況を調査することにより遺伝子検査結果を確認する。ホモ型が確認された種雄豚及び種雌豚を選抜し,維持群としてTGブタ(ホモ)生産体制を構築する。

 LDLRブタについては,独立行政法人農業生物資源研究所から新たに導入し,後代豚作出のために交配をおこなった。

成果・評価

 hDAF発現ブタ同士の交配により,5腹の分娩があった。平均ほ乳開始頭数は6.4頭,子豚の出生時体重は0.84kgであった。hDAF遺伝子型の検査の結果,8頭がホモ型と診断された。出生時体重と遺伝子型を比較するとホモ型の個体が小さい傾向にある。ホモ型と診断されたhDAF発現ブタから,雄1頭,雌4頭を選抜した。

 雄1頭,雌3頭のLDLRブタを独立行政法人農業生物資源研究所から導入した。2腹の分娩があり組換え遺伝子の保有が確認された雄1頭,雌1頭を育成中である。

養豚研究所 飼養技術研究室

系統豚維持試験

期間・区分

昭和62年度~,県単

背景・目的

 ランドレース種系統豚「ローズL-3」(2011年度認定)を,本県の銘柄豚肉「ローズポーク」や高品質豚肉の基礎豚として長期間に渡り,安定して利用することを目的に,認定時の能力を保持しながら近交係数・血縁係数の上昇を最小限に抑える維持・増殖を行っている。

方法

「ローズL-3」を維持施設内で分娩させ,繁殖・育成成績,産肉成績および育成豚の主要形質の成績,集団の遺伝構成などを調査し,系統豚「ローズL-3」を維持する。

成果・評価

  • 維持頭数:雄7頭,雌36頭。
  • 払い下げ:維持育成候補豚から除外した豚を養豚農家21戸に121頭(雄2頭,雌119頭)払い下げた。
  • 繁殖成績:のべ71腹分娩,生産頭数693頭,一腹平均ほ乳開始頭数9.8頭となった。
  • 育成成績:1腹平均離乳頭数8.2頭,3週齢平均体重5.94kg。
  • 産肉成績:30kgから105kgまでの一日平均増体重は,雄で828.1±78.3g,雌で824.4±24.4gとなった。背脂肪厚は雄で2.5±0.3cm,雌で2.3±0.1cm。ロース断面積は雄で31.6±2.2㎠,雌30.9±1.6㎠であった。
  • 集団の遺伝構成:平均血縁係数は21.3%,平均近交係数は6.16%,遺伝的寄与率変動係数は0.53であった。

エコフィード(農産物残さ飼料)利活用試験

期間・区分

平成23~27年度,県単

背景・目的

 茨城県で生産されるレンコンは,国内生産量第1位であるが,年間約1,200t廃棄されている。これまでに,レンコン残さはエコフィードとして利活用できるという知見が得られているが,その一方で,通年利用のためにレンコン残さのサイレージ化を望む声が生産現場から上がっている。そこで,レンコンサイレージの給与が肥育成績に及ぼす影響を検討した。

方法

 供試験豚はWLDとし,体重70~110kgを試験期間とした。試験区は,牧草用乳酸菌「畜草1号」を添加して調製したC区,漬け物用乳酸菌「HS-1」を添加して調製したH区とした。C区とH区は,配合飼料4kg/頭/日にそれぞれ対応するレンコンサイレージを450g給与した。対照区は,配合飼料4kgのみを給与した。

成果・評価

 DGと飼料要求率については,各区間に差が認められなかった。レンコンサイレージの実測飼料中摂取割合はC区が14.3%,H区が13.0%であった。現物摂取量はレンコンサイレージ給与区が対照区に比べ高く推移したものの,配合飼料摂取量に差は認められなかった。と体形質および肉質は,各区間に差は認められなかった。肥育豚に飼料中13~14%のレンコンサイレージを給与しても,配合飼料のみの給与と同等の肥育成績と肉質が得られることが明らかになった。また,2種類の乳酸菌による肥育成績と肉質に違いは認められなかった。

豚肉のフレーバーリリースプロファイリングと香気マッピングに関する研究

期間・区分

平成23~27年度,国補

背景・目的

 豚肉は,特有のにおい・くさみにより一部の消費者から敬遠されているが,オフフレーバー(異臭・悪質臭)とおいしさの関係については明らかにされていない。そこで,豚肉のフレーバー成分及びフレーバーリリース(咀嚼時に鼻から抜ける香り)成分が豚肉の評価に与える影響を検討した。今年度は,性別の違いと熟成期間がフレーバーに及ぼす影響検討した。

方法

 ガス成分は,(独)日本原子力研究開発機構所有のブレスマスで分析した。豚肉のサンプル量は50gとし,生肉を室温(24℃)に戻した後,ポリエチレン袋内に密封し,10分間放置後の袋内ガスを採取した(生肉ガス)。ガス採取後の生肉を,精製水200mlを入れたビーカーで湯煎により80℃以上,5分間茹で,生肉と同様にポリエチレン袋内に密封し,10分間放置後の袋内ガスを採取した(茹で肉ガス)。性別の違いによるフレーバー成分の検討は,去勢・雄の肥育豚および種雄豚(2歳)の背最長筋を試料とし,熟成期間による違いは,去勢肥育豚の背最長筋を3~9日間,4℃の冷蔵庫内で熟成したものを試料とした。

成果・評価

 性別の違いについては,去勢肥育豚,雄肥育豚,種雄豚の分析値に明確な違いは認められなかった。熟成期間の違いについては,生肉ガスと茹で肉ガスのCO2濃度が5日目から6に日目かけて上昇したことから,6日目頃から腐敗が始まった可能性が考えられた。

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農林水産部畜産センター企画情報室

〒315-0132 茨城県石岡市根小屋1234

電話番号:0299-43-3333

FAX番号:0299-36-4433

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