高次脳機能障害支援ツール
高次脳機能障害支援ツールは、高次脳機能障害を抱える当事者の生活をサポートするために、また当事者を支える家族や支援者にも役立ててもらうために作成しました。
高次脳機能障害の症状は、受傷前の生活や性格、現在置かれている環境などにも影響を受けるため、個別性が高く、オーダーメイドな支援方法が求められます。本ツールが全ての高次脳機能障害者に当てはまる方法とは限りませんが、高次脳機能障害当事者や家族、支援者等の支援のヒントにしていただければと思います。
当事者及び家族は情報記録ツールとして、支援者は高次脳機能障害の支援ツールとしてご活用下さい。当事者・家族・支援者で共有しながら使用していただき、各自が必要なツールのみを印刷しご活用いただくことを推奨します。なお、支援ツールの使用例は下記のとおりに作成しておりますので、当事者の方の障害状況に合わせて内容を適宜、修正しながらご活用下さい。
ツール様式集
ツール名称
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症状
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様式
記入例
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使用
説明
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メモリーノート
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- スケジュール通りに行動できない。
- 日常生活の管理ができない。
- 物事の優先順位がつけられない。
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様式1
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資料1
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週間スケジュール
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- 予定を忘れてしまう。
- 予定を確認しないと行動できない。
- 予定を間違えて行動してしまう。
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様式2
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資料2
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やることリスト
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- 何をしようとしていたか忘れる。
- 何をするように言われたか忘れる。
- いつまでにやるか忘れる。
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様式3
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資料3
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対策リスト
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- 大切な約束を忘れてしまった。
- うまくコミュニケーションがとれない。
- 仕事でミスが続いている。
- 同じ失敗を繰り返してしまう。
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様式4
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資料4
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生活の覚書
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- 生活の困りごとを誰かに聞いてほしい。
- 生活するのが大変だと感じている。
- 悩みごとや様々な出来事を忘れてしまう。
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様式5
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資料5
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体調管理表
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- 体調管理ができない。
- 体調変化の自覚があまりない。
- 血圧が高いと言われている。
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様式6
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資料6
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内服薬管理表
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- 薬を飲み忘れてしまう。
- 毎回薬が多く、管理ができない。
- 薬の種類や内容が分からない。
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様式7
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資料7
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食事水分管理表
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- 食事をしたか分からなくなることが多い。
- 何を食べたか忘れてしまう。
- 食事や間食を多く取り過ぎてしまう。
- 水分をあまり摂らない。
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様式8
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資料8
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受診内容記録報告書
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- 病院受診日が分からない。
- 病院受診の仕方が分からない。
- 病院で何を言われたか忘れてしまう。
- 検査の結果や処方された薬が分からない。
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様式9
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資料9
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受診時症状報告書
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- 病院受診の時に何を報告するか忘れてしまう。
- 気になる症状があるが、改善しない。
- 体のことで不安があるが相談できない。
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様式10
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資料10
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お薬情報
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- 薬を飲み忘れてしまう。
- 何の薬を飲んでいるか知らない。
- 残薬があるのに薬を多くもらってしまう。
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様式11
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資料11
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外出準備リスト
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- 外出の準備が十分に行えない。
- 外出時に道に迷ってしまう。
- 何を買いに来たのか忘れてしまう。
- 時間通りに行動できない。
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様式12
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資料12
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調理確認シート
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- 料理を作れなくなった。
- 料理の準備ができない。
- 料理の手順がわからない。
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様式13
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資料13
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身だしなみチェック表
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- 外見に関心がなくなった。
- 寝ぐせが付いたまま外出してしまう。
- 外出時に適切な服装が選べない。
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様式14
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資料14
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目標設定シート
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- 将来について漠然としている。
- 自分のことをうまく話すことができない。
- 今後について不安がある。
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様式15
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資料15
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緊急連絡先
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- 外出先で道に迷ってしまう。
- 連絡先を忘れてしまう。
- 電話をかけることができない。
- 困った時に周囲にうまく伝えられない。
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様式16
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資料16
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活用の仕方
- 当事者自身が記入し、家族または支援者が確認しましょう。
- 支援ツールを活用する目的や手順を関係者間で共有しましょう。
- 支援ツールを書き忘れたり、間違っていても否定することのないようにしましょう。
- 毎日続けることが重要です。定期的に振り返りを行い、継続できていることや成功体験は承認し、以前との違いを確認できるようにしましょう
- 当事者の経過記録等については、「高次脳機能障害友の会・いばらき」が作成した「わたしのことファイル」をご活用ください。
- 支援ツールの紹介動画を作成しました。こちらからご覧ください。支援ツール紹介動画(Youtube)
活用時及び支援に関するお願い
- 高次脳機能障害により、以前できていたことができなくなったということを理解し、共感的な態度を心がけ、安心安全な生活を送る中で自信を取り戻せるような周囲のサポートが必要です。
- 本人が今の状況をどう受け止め、今後どうしていきたいか等についても詳しく聞く必要があります。どのような目標があるのか、どう生きていきたいのかを確認し、目標実現までの計画を一緒に考えていきましょう。
- 医療機関等で実施した検査結果やリハビリテーションの内容は、とても重要ですので受傷前と比較してどう変わったかを具体的に確認しましょう。
- 本人だけでなく、家族や関係者から周辺情報を聞き取ることも大切です。また、受傷前の生活や趣味、学校や職場での様子なども確認し、本人が好きなこと、得意なこと、苦手なことなども支援のヒントにしましょう。
- 本人を中心に支援の方向性を確認するようにしましょう。実践した支援内容が適切であっても、結果が出るのには時間がかかりますので、ゆっくりと穏やかな気持ちで本人を支え、長期的に見守っていくことが大切です。
- より良い高次脳機能障害者支援には、支援者が協力し、連携することが重要です。家族や支援者も一人で抱え込むことがないように、また関係者間で話し合いの場を持ちましょう。