シイタケ,マイタケ,ムラサキシメジ,カラカサタケ,ヒトヨタケなどの腐生性のきのこは,木材や落葉,獣の糞などを腐らせ,そこから養分を吸収して育ちます。これらのきのこやカビなどの菌類によって,有機物(生物の死骸など)は分解されて土へ帰ります。
たとえば,秋の森にはたくさんの落葉が降り積もります。でも,次の年の秋にも,またその次の年の秋にも,落ち葉は積もりますが,積もった落葉の層の厚さに余り大きな変化は見られません。きのこたちがせっせと落葉を腐らせ,土に帰しているからです。
きのこたちが落葉などを分解して作った土には,植物が生育するのに必要な養分(無機物)が豊富に含まれています。その土で植物が育ち,その植物を動物が食べます。腐生性のきのこは,この生命の輪を保つための,たいへん重要な役割を担っているのです。
もし,こうしたきのこたちがいなかったら,どうなるでしょう。
地球上に陸地ができて,海から陸へ植物がはい上がってきてから,およそ5億年の年月がたったといわれています。5億年間,枯れ木も落葉も腐らずに積もり続けたなら,海も山も,すべてが埋もれてしまったことでしょう。いえ,その前に,植物が土の養分を吸い取る一方で,新しい養分(無機物)が土に補充されないわけですから,今,身近に見られるような土に根付く植物は,生まれてこなかったかも知れません。

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