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更新日:2017年5月15日

野生きのこ相談室(平成16年度)

 各林業指導所やきのこ博士館、林業技術センターで対応した野生きのこの名前を調べる相談と県内で発生した毒きのこによる中毒の概要を紹介します。野生のきのこは、種類を調べ名前を知るのが難しい上、猛毒を持つものもあるので、食用にする場合は、慎重に選別して下さい。
 なお、名前を調べる相談の「種数」は、相談ごとの重複や名前のわからなかったものも積算しています。

 

1.名前を調べる相談


 (1)対応件数と種数
 件数:1,881件 延べ種数:5,464種(うち毒きのこ736種)

 (2)相談の多い種別相談件数(食用,有毒種上位各5種)
 食用: ハタケシメジ  (150件)
 ムラサキシメジ (146件)
 ウラベニホテイシメジ (106件)
 ヒラタケ (105件)
 クリタケ (94件)

 有毒:クサウラベニタケ  (162件)
 ハイイロシメジ (70件)
 ニガクリタケ(57件)
 カキシメジ (55件)
 クサハツ (31件)

 今回の野生きのこ相談において,最も多かったものはナラタケ(広義,近年数種に分類されている)で174件である。本種は図鑑では食用とされているが,消化が悪く食べ過ぎ等で中毒することが多いため,昨年度より食用から除外した。食用きのこでは,ハタケシメジが4年連続で1位となった。昨年,不作だったウラベニホテイシメジは豊作で,相談が急増した。昨年同様に,秋の期間が長かったせいか,晩秋のきのこであるムラサキシメジの相談件数が伸びた。
 急性脳症で死亡した人々が共通に食していたとして話題になったスギヒラタケの相談件数は,これまで1年に0~2件と非常に少ない。しかし,食用とする場合には,特別に注意していただきたい。

 毒きのこでは,クサウラベニタケが162件で,相談件数が最も多く,死亡例のあるニガクリタケも例年をはるかに上回っていた。晩秋にみられるハイイロシメジも相談件数が多かった。このきのこは,「しめじ」に良く似ているがやや不快臭があり,胃腸系の中毒をおこすことがあるので注意したい。今年は,きのこが豊作で,毒きのこの相談も多く,県内の中毒者数は20名と例年になく多かった。山菜・野草類では,昨年度中に中毒が多発したバイケイソウは,中毒事故も相談もなかった。一方,ハリギリなど食用となる山菜の相談が増え,毒成分をもつ野草の相談もあった。

2.食中毒発生状況


(1) 9月16日に,男性A氏が高萩市花貫地区で採取したきのこを知人のB氏にわけ,B氏は18日の午前7時にきのこご飯に調理して,その日の正午頃に友人8名(5家族)に分け,9名で食べた。午後1時30分頃から体調不良となり,6名が治療を受けた。きのこを同定したところ,ツキヨタケによる中毒と判明。病院で受診しなかったA氏ら4名を含め,中毒者は6家族10名に及んだ。
解説:
 ツキヨタケは,主にブナ林に発生するためブナの少ない茨城県内での中毒は多くはないが,日本国内での中毒例は多い。茶色でヒラタケ型をしており,枯れたブナなどに多数群生するため,シイタケやムキタケなどと間違える場合が多い。しかも,収穫量が多いために人に分けたり,多くの親類や知人と共に食するケースも多く,中毒の規模が大きくなる傾向がある。ツキヨタケはその名のとおり,暗闇ではヒダからのほの白い発光が観察できる。傘を中心から裂くと柄の中心に黒いシミがあり,シイタケなどと区別できる。きのこを人に分ける場合は,正確な同定が必要である。

(2)10月17日,つくば市の自宅で採取したきのこを正午に調理してたべた家族4名(男女各2名)が,食後,1~3時間のうちに全員が嘔吐,下痢等の症状を呈し,病院で手当を受けた。きのこを調べたところ,胞子の形状などから,クサウラベニタケと同定された。
 これとは別に公式発表はされなかったが,9月9日に栃木県烏山付近で夫が採集したきのこをナスと炒めて食べた,68才の女性が嘔吐などの中毒症状を呈し,病院に入院した。食用きのこを選り分ける際,クサウラベニタケが混入してしまったとのことである。
解説:
 クサウラベニタケは,茨城県人が好んで食するウラベニホテイシメジと似ているために誤って採集される。また,雑木林に比較的多く発生し,「地味なきのこ,縦にさけるきのこは食べられる」という昔からの迷信に合致するために中毒例が多いと考えられる。このきのこは,胃腸系に障害があらわれる毒きのこで,死には至らないが,後々まで不快感が残る。典型的なクサウラベニタケならよく形態を頭に入れておく限り,食用のウラベニホテイシメジと間違えることはない。しかし,ウラベニホテイシメジに大きさや形が酷似するイッポンシメジ属の毒きのこがあり注意する必要がある。傘表面の斑紋や絣模様,傘の色など,ウラベニホテイシメジの典型的な特徴が揃ったものを1本,1本確かめて採取することが重要である。また,不明種を含む複数のきのこを採取する際,種類別に袋にいれ,食用きのこに毒きのこが混入しないように注意する。

(3)10月24日に福島県田島町から昭和町にかけて採取したきのこをナスと炒めて25日の昼に食べた男性(61才)と女性(84才)が,約1時間後に嘔吐,下痢等の症状を呈し,病院に入院した。調査の結果,毒きのこのカキシメジとハナホウキタケが確認された。サンプルの量から,カキシメジが中毒の主因と判断した。  
11月2日に,同日に知人が筑波山で採取したきのこをもらい,夕食にきのこ汁を作って家族4名で食した。約1時間後,全員が嘔吐,下痢,腹痛の症状を訴え,病院に入院した。病院では,きのこ中毒と判断し,きのこ採取者をはじめ,きのこの配布先1家族に連絡して,廃棄させた。汁の中身を調べたところ,キシメジなどの食用きのこに混じって,傘のぬめりや肉のシミのあるカキシメジと思われるきのこの断片を確認し,このきのこによる中毒と推定した。採取者はきのこ狩りのベテランといわれており,勉強のため他のきのこの採取も行っていたことから,調理の際に食用きのこにカキシメジが数本混入した可能性が高い。
解説:
 カキシメジは,胃腸系の障害をおこす毒きのこで,食べられそうな外見をしているため,中毒が多い。また,近縁のものを「ちゃしめじ」と称して食べている人もおり,混乱が生じている。特徴は,傘は褐色でぬめりがあり,ヒダは白色で古くなると赤褐色のしみができる。「地味なきのこは食べられる。」などの誤った判断法に頼る人々がまだまだ多いため,注意が必要である。さらに,お裾分けによって中毒の被害が拡大する例が多いため,安易な分配は慎みたい。

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