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更新日:2018年9月26日

物理的防除法とは

物理的防除法とは,病原菌や害虫を生存に不適切な条件にして殺滅させる方法や,各種資材で作物を覆って病害虫との直接的な接触を遮断したり,色彩や光などを活用して行動をコントロールしてやるなど,一般的に機械や器具を利用して病気や害虫を制御する方法です。これらの防除法には,単独で十分な効果を期待できるものもありますが,他の耕種的防除法や生物的防除法,又は薬剤防除と併用することで効果を高めることが必要な技術もあります。

下記の項目からクリックして移動
(1)熱による消毒 (2)種子の温湯処理・乾熱処理
(3)忌避資材の利用 (4)誘引資材の利用
(5)近紫外線フィルム (6)被覆,障壁資材等の利用
(7)袋かけ  

 

(1)熱による消毒

1.焼土消毒

土壌を平らな容器に入れて,直接蒸し焼きする方法です。

2.蒸気土壌消毒

土壌中に蒸気を注入し,加熱する方法です。土壌が少量の時は消毒槽を用い,畑土などを消毒する場合は穴あきパイプ(ホジソンパイプ)やキャンパスホースなどを利用して注入します

3.熱水土壌消毒

熱水を土壌表面から土中に注入する方法です。

4.太陽熱土壌消毒

夏季の休作期に土壌表面をビニル等で被覆し,太陽熱で深さ10~20センチメートル程度の作土層を45~50℃にあげて長期間持続させ,病害虫を死滅させる方法です。なお,冷夏の年は,効果が劣ることがあります。

5.土壌還元消毒(還元型太陽熱土壌消毒)

夏季の休作期に,太陽熱と水,フスマ等の有機物を組み合わせて処理する防除法です。土壌が還元状態になるため,酸素を必要とする多くの土壌病害虫は死滅します。なお,土壌還元消毒後に作物に吸収可能な有機物由来の窒素が存在しますので,過剰施肥にならないよう,事前の土壌診断が必要です。

6.ハウス密閉高温処理

ハウスを密閉して蒸し込み,害虫を高温によって死滅させる防除法です。暖房機を設置している場合は,高温により部品が破損する恐れがあるので,配管の圧力を逃したり制御盤等を取り外すなど事前に対処が必要となります。

(2)種子の温湯処理・乾熱処理

病害虫が付着している種子を,温湯あるいは乾熱処理する防除法で,イネやムギ類で古くから行われている方法です。

(3)忌避資材の利用

1.銀白色資材の利用

アブラムシ類,アザミウマ類,ウリハムシ,キスジノミハムシなどは,銀色や白色の反射光に対して強い忌避反応を示します。この忌避効果を利用した銀白色の農業資材(シルバーマルチ,シルバーテープ)を用いると害虫の作物への飛来,侵入を制御することができます。

2.黄色灯の利用

果樹園などに飛来する吸蛾類(アケビコノハ,アカエグリバ等)に対して,日没後に黄色灯を点灯すると忌避及び加害活動の抑制効果があります。また,野菜や花卉の施設又は露地に飛来するチョウ目害虫(ハスモンヨトウ,オタバコガ,シロイチモジヨトウ等)に対しては,日没前から点灯します。

(4)誘引資材の利用

1.粘着資材の利用

昆虫には,黄~青色系統に強く誘引される色彩反応があります。この性質を利用して,粘着剤を塗布した黄色又は青色資材を圃場に設置すると害虫を誘殺することができます。誘引されやすい色調は,昆虫の種類によって若干異なり,アブラムシ類,コナジラミ類などは黄色系統に,アザミウマ類などは青色系統になります。

2.誘蛾灯の利用

成虫が灯火に飛来する性質を利用して,誘蛾灯を設置して誘殺します。この方法は,多くの害虫を誘殺できますが,誘蛾灯近くにある作物は集中して被害を受けるので,設置場所には注意が必要です。

3.誘引バンドの利用

果樹では,8月中旬~9月中旬の早い時期にクラフト紙を利用した誘引バンドを設置すると,越冬場所となる粗皮下の隙間など,暗くて狭い場所を好んで潜むハダニ類やカイガラムシ類をはじめ多くの種類を誘い込むことが出来ます。設置した誘引バンドは,剪定時(12月以降)に外して焼却します。この方法で,翌年の害虫発生量を低下させることが出来ます。

(5)近紫外線除去フィルム

1.病害の防除

糸状菌の胞子形成は,光の影響をよく受けます。このうち,紫外線(光の波長400nm以下)によって胞子形成を誘起させるものが多いことに着目し,逆に紫外線を除去できるビニルフィルム(UVカットフィルム)を使用して,病害の発生を抑制する方法があります。

2.害虫の防除

UVカットフィルムは,昼行性昆虫の行動に影響を与え,アブラムシ類,コナジラミ類や一部のアザミウマ類など害虫防除にも効果があります。

(6)被覆,障壁資材等の利用

1.被覆資材の利用

作物や施設に防虫ネットなどの被覆資材を使用すると,害虫の侵入を阻止することができます。特に,害虫の加害により被害が大きくなる幼苗期の被覆は効果的です。果樹では,園全体又は樹木を防虫網で覆っておくと,吸蛾類や鳥などの侵入を防止できます。


2.障壁資材,作物の利用

ヨトウムシやネキリムシ類などの地面を移動する害虫に対して,圃場又は作物の周囲に畦畔板などで障壁を作ると,圃場への侵入や作物への加害を阻止することができます。また,アブラムシ類によって媒介されるウイルスに対しては,麦や牧草などを圃場又は作物の周囲に栽培しておくと,アブラムシ類の侵入が減って発生が少なくなります。

(7)袋かけ

ナシ,ブドウ,リンゴ等の果樹では,古くから袋かけが行われてきました。これは,袋かけをすることにより,果実に被害を与える病害虫の侵入加害を物理的に遮断するのが目的です。特に,収穫間際になってから感染する病原菌や害虫には有効です。

このページに関するお問い合わせ

農林水産部農業総合センター病害虫防除部発生予察課

〒319-0292 茨城県笠間市安居3165-1(園芸研究所内)

電話番号:0299-45-8200

FAX番号:0299-45-8255

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