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ページ番号:74160
更新日:2025年11月21日
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豊かな自然とともに育まれてきた茨城の伝統工芸。
しかしながら、後継者不足や原材料の確保難、ライフスタイルの変化に伴う需要の低迷など、持続可能性の危機に直面する課題を抱えています。
この特集では、古くから続く伝統の技をいまに伝える職人と、新たな形で未来へとつなぐサステナビリティを取り入れた伝統工芸品をご紹介します。
参考サイト「いばらき手しごと帖」
https://craft.pref.ibaraki.jp(外部サイトへリンク)
西ノ内和紙は、常陸大宮市・旧山方町エリアで生産されてきた、350年以上の歴史を持つ手漉き和紙です。
やぶれにくくしなやかな質感が特徴で、江戸時代には商人の帳簿にも使われていました。
久慈川・那珂川流域の清らかな水と、上質な那須楮(なすこうぞ)を原料に、一枚ずつ丁寧に漉き上げられます。
茨城県内に工場を持つ株式会社トーマネ(本社:東京都中央区)では、西ノ内和紙を使用した和紙マネキン「Waltz(ワルツ)」を開発。
2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。
従来品比80%減の軽量化により、レンタル輸送時の燃料削減などに寄与し、温室効果ガス排出量を60%削減。
さらに、役割を終えたマネキンは再び和紙に戻すことができる、環境に配慮したサステナブルな製品です。
また、「紙のさと」では、和紙を原料にした「紙糸」や「紙布」の制作などにも取り組んでおり、和紙の新たな可能性が注目されています。


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西ノ内紙 紙のさと |
かつて桐製品の産地として栄えた石岡市で、親子三代にわたり桐製品を造り続ける「高安桐工芸」。
原木の見定めから製材・製品の仕上げまで、すべてを職人が手がけます。
中に納めるものの寸法にぴたりと合う桐箱は、隣接する笠間市の陶芸作家だけでなく、県外在住の作家からも選ばれています。
オリジナルブランド「LESS is MORE(レスイズモア)」では、日常に溶け込み、長く使い続けられる桐製品を提案しています。
桐特有の軽さ・調湿性・温もりある手触りを活かすものづくりは、伝統的な桐箱だけでなく、まな板やキャニスターなど全ての製品に息づいています。
メンテナンスやリメイクにも対応し、環境配慮のニーズに応えながら、「桐のある暮らし」を次の世代へと繋ぎます。
2025年には、これまでの製品には使用しなかった、木目や節などの木材の個性を生かした製品ライン“Noble”シリーズを発表しました。
素材を無駄にしないものづくりで、よりデザイン性の高いユニークな製品を生み出しています。


| 高安桐工芸/LESS is MORE 【住所】石岡市村上286-1 【電話番号】0299-23-2601 【営業日】火・木・日曜日 【営業時間】10時00分〜17時00分 【Webサイト】https://takakiri.com(外部サイトへリンク) |
四代にわたり“暮らしに合わせた空間づくり”を続けてきた「安達建具」は、釘を使わず木を組み合わせる日本伝統の木工技術「組子」を、現代の生活空間に調和させた作品づくりで注目を集めています。
三代目の安達克敏氏は、その組子技術を評価され、2021年に厚生労働省の「現代の名工」に選出。
建具職人として数多くの住宅や商空間を見てきた経験を活かし、設置場所や光の入り方まで計算したオーダーメイド制作を強みとしています。
克敏氏が考案した二十面体組子フロアランプ「Tri-Ico」は、サッカーボールの形状から着想を得た立体作品です。
2023年のG7茨城水戸内務・安全担当大臣会合で展示され、光と影が織りなす繊細な表情が来場者の注目を集めました。
2025年には、国内最大級のクルーズ船「飛鳥3」の客室に47都道府県の魅力を表現するプロジェクトにおいて、「いばらき組子」が採用され、その魅力を県内外に発信しています。
現在は、四代目・安達将伍氏が3DCADを活用し、立体型組子の新しい表現に挑戦中。
伝統とデジタルを融合させ、次世代へ続くものづくりを形にしています。


| 安達建具株式会社 【住所】小美玉市羽鳥2738-108 【電話番号】0299-46-0205 【営業時間】8時00分~18時00分 【定休日】日曜日 【Webサイト】https://adachijoinery.com(外部サイトへリンク) |
提灯の日本三大産地の1つ・水戸市で作られる提灯は、「水府提灯」と呼ばれ、江戸時代に水戸藩の下級藩士の手によって始まった提灯づくりを起源として生まれました。
内側の竹ひごを一本一本輪にして糸で繋ぐ「一本掛け」で作られ、形が崩れにくい丈夫な仕上がりが特長です。
「鈴木茂兵衛商店」では、スタンダードな形状の提灯に加え、現代風にアレンジしたモダンな広告灯、一升瓶やワインボトルの形を再現した提灯、アーティスティックなビジュアルのデザイナーとのコラボ提灯「MICシリーズ」など、多彩なラインナップの水府提灯を販売しています。
近年では、無印良品店舗や都内ホテルで採用されたり、海外照明ブランドとの共同開発に挑戦したりと、提灯の可能性を広げています。
また、水戸市内のお祭りにおける提灯行列(参加者が提灯を持って練り歩くイベント)への協力や、地元の子どもたち向けワークショップの開催など、伝統継承の取組も積極的に行っています。

2026年には、創業160周年を記念して、誰でも参加できる記念イベントの開催を予定しています。
通常は立ち入ることのできないエリアの公開や、職人によるものづくりを身近に感じるワークショップの実施など、水府提灯の魅力を存分に体験できる企画を検討しています。(一部予約制。)
開催日時・イベント情報は、公式Webサイトにて随時発表を予定しています。

| 鈴木茂兵衛商店(株式会社鈴木茂兵衛商店) 【住所】水戸市袴塚1丁目7番5号 【電話番号】029-221-3966 【営業時間】9時00分~18時00分 【定休日】土・日曜日 【Webサイト】https://www.suzumo.com(外部サイトへリンク) |
八溝塗は、茨城県北部の大子町で生産される大子漆を活用した漆器です。
大子漆は透明度が高く、上質で美しい艶が魅力。
高級漆器の仕上げに使われるほか、国宝建築の修復にも採用されています。
一方で、漆かき職人の減少や高齢化、安価な外国産の漆の流通により、その継承が重要な課題となっています。
八溝塗を扱う「器而庵」は、大子漆を100年先の未来に伝えるために生まれた漆器ブランドです。
漆の植栽から木地づくり、塗りまで一貫して手がけることがこだわりで、漆かきを終えた漆の木をそのまま使用した花器は、漆の生産をしているからこそ作れる製品です。

クラフテリアートギャラリーにて、「器而庵」主催の漆器作家・辻徹氏の作品展を開催中。
会期は、2025年11月4日(火曜日)~28日(金曜日)。
大子漆の美しさとなじみの良さを実際に手に取ってご覧いただけます。

| 大子漆八溝塗 器而庵(有限会社ウェアウッドワーク) 【住所】久慈郡大子町大子624 【電話番号】090-3177-2775 【営業時間】10時00分~17時00分 【営業日】土・日・月曜日 【Webサイト】https://tsujitohru.jp(外部サイトへリンク) |
城里町(旧・桂村)では、全国でも数少なくなった手作り雛人形の伝統が今も息づいています。
桂雛は、木材や和紙などの土に還る自然素材で作られ、ほどよい湿り気を含むことで、肌の艶や着物のしなやかさが生まれます。
時とともに風合いが増す、美しい経年変化も魅力です。
「小佐畑人形店」は、「子どもが人生で初めて出会うアート」をコンセプトに、地域の文化・風習を伝える雛人形づくりを続けています。
近年では、古い雛人形のリメイクのほか、ウェディングドレスやアンティーク帯の雛人形へのリメイクなど、多様なオーダーにも対応し、柔軟な発想で文化を未来へとつないでいます。
「Kasane Frame」は、桂雛制作の技法に、県内の複数の伝統工芸を組み合わせ、四季の移ろいをグラデーションで表現したインテリアウォールアートです。
クルーズ客船「飛鳥III」の特別プロジェクト「ASUKA3 meets 47都道府県」でも壁面アートとして採用されています。
また、東京・新宿の「リビングデザインセンターOZON」にて、Kasane Frameのプロモーション展示「文化を飾るという新しい選択」が開催されます。
会期は2025年11月20日(木曜日)~12月23日(火曜日)。
入場無料で、桂雛の魅力に触れることができます。


| 桂雛 小佐畑人形店(有限会社桂雛) 【住所】東茨城郡城里町阿波山1186 【電話番号】029-289-3246 【営業時間】10時00分~18時00分 【定休日】不定休(店舗まで直接お問合せください) 【Webサイト】https://www.katsurabina.jp(外部サイトへリンク) |